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もふもふ聖獣はサーシャがだいすき!  作者: 早乙女姫織


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第十九話  春の祭り

夜明けとともに、村はざわめきに包まれた。春の祭り当日――一年で最も華やかな日が訪れたのだ。


冬を越えた喜びと、豊かな収穫を願う祈りを込めて、人々は朝から広場に集まり、準備の仕上げに取りかかっていた。


サーシャは小屋の戸を開け、澄んだ空気を吸い込んだ。


森から吹き抜ける風は柔らかく、花の香りを運んでくる。


もふもふは彼女の足元に寄り添い、尻尾を揺らして鳴いた。


「今日は祭りの日ね。みんなが笑顔になれるように、祈りを捧げましょう」


サーシャは微笑み、もふもふの頭を撫でた。


広場の中央には大きな祭壇が設けられていた。


花輪が飾られ、布が揺れ、焚き火の煙が空へと昇っていく。


村人たちは列をなし、サーシャの祈りを待っていた。


彼女は祭壇の前に立ち、両手を組んだ。


もふもふは足元に座り、静かに目を閉じた。


「神よ……この村に豊かな春を。人々の心に安らぎを」


掌から淡い光が広がり、祭壇を包んだ。


光は柔らかく、人々の心を静めるように揺らめいた。


村人たちは息を呑み、やがて微笑んだ。


「……暖かい」


「心が軽くなる」


その声は広場に広がり、祭りの始まりを告げた。


昼になると、広場には大鍋が並び、料理の香りが漂った。


肉と野菜の煮込み、焼きたてのパン、果物の盛り合わせ――人々は食卓を囲み、笑い声を上げた。


サーシャも招かれ、子どもたちと一緒にパンを分け合った。


もふもふはその傍で尻尾を揺らし、子どもたちに撫でられていた。


「もふもふ、パンを食べる?」


「ふわふわだ!」


子どもたちの声に広場は笑いで満ち、サーシャは胸の奥が温かくなるのを感じた。


王国で嘲笑され、孤独に沈んでいた日々とは違う。


ここでは、人々と共に春を祝っている。


午後になると、若者たちが踊りを披露した。


色鮮やかな布を纏い、輪になって歌いながら踊る。


太鼓の音が響き、足音が広場を揺らした。


サーシャも誘われ、子どもたちと一緒に輪に加わった。


最初はぎこちなかったが、もふもふが輪の中に飛び込むと、笑い声が広がり、緊張が解けた。


「もふもふも踊ってる!」


「尻尾が楽器みたい!」


子どもたちは声を上げ、もふもふは尻尾を揺らしてリズムを刻んだ。


サーシャはその姿に笑い、心が軽くなるのを感じた。


夕暮れが近づくと、突然空が曇り、風が強く吹き始めた。


人々は不安そうに空を見上げた。祭りの日に嵐が来れば、畑も広場も荒れてしまう。


サーシャは祭壇に立ち、祈りを捧げた。


「どうか、この村を守ってください」


光が広がり、風の勢いが和らいだ。


雲は薄くなり、夕陽が広場を照らした。人々は驚き、涙を流した。


「……奇跡だ」


「神は彼女を見捨てていない」


その声は村全体に広がり、サーシャは胸に手を当てて涙を拭った。


夜になると、広場に焚き火が焚かれた。


炎の揺らめきが村を照らし、歌と踊りが続いた。


子どもたちはもふもふと走り回り、老人たちは祈りを捧げ、若者たちは笑い声を上げた。


サーシャは焚き火の前に座り、もふもふを抱きしめた。


炎の光が彼女の顔を照らし、獣は静かに鳴いた。


「偽物だと言われても……私は祈りを続ける。あなたたちがいてくれる限り」


その言葉は夜風に溶け、星々に届いた。


村人たちの心に小さな光が灯り、祭りは夜更けまで続いた。

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― 新着の感想 ―
 時に尻尾を楽器の様に揺らしながら祭りの躍りを人々と楽しみ、時にサーシャさんに抱かれたりパンを口にしたりしつつ、平穏と交流を満喫するもふもふちゃん。  嵐の予兆到来に対し、人々の不安ごと和らげるサー…
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