第44話 スカウト③ カミングアウト
あれから午後の授業にギリギリ間に合い、俺はこれからの事をどうするか考えた。
あの選択肢では、一番マトモなのが警察だろう。
軍隊なんていざという時、国同士威信を懸けての命の削り合いしかしないだろうし、もし一般人として生きていくにしても、警察からの一生の監視付きで、しかも犯罪組織からも狙われるなんて御免だ。
警察も逮捕する等の実力行使の際は危険だろうが、軍隊まではヤバく無いだろう、多分…。
あー、良い方に考えよう、佐藤の言う様に総てが動き出してしまったのなら、警察官になるのが運命だったんだ、これで将来の仕事に悩む事もなくなった!
って、ハァ……そんなにお気楽に行くかよ…。
……しかもこの話の前提は、澪の了承が得られたらの話なんだよな……
そして澪がどの選択肢を選ぼうとも、色々と危険に晒される訳だし……
これは澪の進路でもあるのだから、先ずは本人の意思で決めてもらって、澪がイヤじゃ無ければ俺が澪に合わせるとか…。
これで澪の将来が決まってしまうのも、俺と出会ってしまったのが原因だと思うと、本当に申し訳無い気持ちでいっぱいだ……。
……って、そうか…!!
俺は馬鹿か!!
俺は能力者!
今後生きていく中で、澪や七瀬が生死の境を彷徨う様な、最悪な問題に直面した場合は、怖くて1度もやった事は無いが、タイムリープで歴史の改竄をすればいいじゃないか…!
俺は彼女達の命が関わってくるならば、タイムリープをする事は吝かではない。
そう考えるとスゴく気持ちが楽になった。
ようし、先ずは早速澪から話をしよう、俺とこの先仕事中、ずっと行動を共にするかもしれない澪に、最初に話を聞いて欲しい。
その澪との話し合いの結果次第で、明日七瀬と話をしよう。
俺はまだ授業中なのに机の中でコッソリとスマホを操作して澪にメッセージを送り、放課後1人で屋上に来てくれる様に頼んだ。
七瀬には申し訳無いが、俺と澪が先生に呼び出しを食らったという嘘をつき、先に帰ってくれる様にメッセージを送った。
放課後屋上に俺と澪2人で向かったところ、最初に話を切り出して来たのは澪だった。
「変質者…じゃなくて、佐藤君との話はどうだったの?
態々《わざわざ》私独りをここに呼んだのはその話よね?」
「………あぁ、そうだ、その件で澪に重大な話をしなければならない……
少し長くなるかもしれないが、俺の話を聞いてもらえるだろうか……。」
「佐藤く…いえ、あの変質者はそんなにド変態だったの!?
凪君、何かされなかった?大丈夫?」
澪は慌てふためいて、心配そうに俺を上から下へと観察している。
「あ、あぁ、大丈夫だ、そういう話では無い。
…何というか…俺の身の上話というか、秘密というか、今後の話というか…
澪にとっても将来に関わる重要な話なんだ、今から話してもいいかな…。」
澪は俺の真剣な表情を見て真顔となり、キチンと正対して真正面から俺を見た。
「……どうぞ。」
俺はその言葉を合図に、言葉を選びながらもゆっくりと話し始めた。
昔事故に遭い、頭を手術した事から始まり、超能力を使える様になった事、それと同時に不幸体質になった事、そのせいで両親から虐待(育児放棄)を受けた事、自分から両親の元を離れて高校から独り暮らしを始めた事、他人を巻き込むのが怖くてマトモに外出も出来ない事、澪と出逢った事、澪のイジメを知った事、超能力を使って裏で手を回した事、図らずも澪と友達になった事、澪が不幸を打ち消す力があった事、皇居に行った時に変質者に初見で超能力者と見抜かれた事、初めて自分以外の超能力者と邂逅して驚き、澪を眠らせて逃げてしまった事、その際に変質者から、澪が超能力を打ち消す能力を持った超能力者であると聞いた事、変質者が超能力犯罪捜査専門の警察官であり、防犯カメラを調べて自分達の所まで来た事、変質者…佐藤が超能力犯罪捜査専門の警察官として俺と澪をスカウトしに来た事、既に自分達が超能力者であるという情報が外部に漏れている可能性がある事、そのため警察官になるか、自衛官になるか、身の危険を承知で一般人を続けるかと選択肢が幾つも無い事、それぞれのデメリットを説明した。
タイムリープ(時間移動)
その名の通り時間を移動し、過去や未来に行く事が出来る超能力。




