表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして、アドレーヌは眠る。  作者: 緋島礼桜
第四篇  蘇芳に染まらない情熱の空

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

381/385

131項




「ソラ……!!」


 ソラに迫る凶刃。

 彼女を助けようと、ロゼは即座に手を翳した。

 だが力が発動する寸前、灰燼の怪物(グリート)の横槍が入る。


 鋭い刃が閃いた。


 危うく切り裂かれそうになるが、ロゼは咄嗟に身を翻してそれを避けた。


「さっき『任せた』ゆーたばっかやん」


 意地の悪い笑みを浮かべる灰燼の怪物(グリート)

 ロゼはそんな彼を眼光鋭く睨む。


「貴方こそ妨害なんて無粋なことするのね」

「えらい早い加勢やな~思うて手出しただけやろ。仲間やったらもうちょい見守ったらどうやねん?」


 灰燼の怪物(グリート)は休むことなく投擲を繰り返す。

 その間にもソラへグリートの仲間(てき)の魔の手が迫る。


「あたしは大丈夫だから!」

 

 ロゼに心配かけまいとソラは声を張り上げる。

 だが、彼女の気丈さに反し、刃が今まさに振り下されようとしていた。


 ――そのときだった。


「――ソラッ!!」


 勢いよくソラへと駆けつけた人影。

 ()は彼女を急いで引っ張り上げる。

 お蔭で、寸でのところで一撃は免れた。


「まったく……暴走に付き添う側の尻拭いする気持ち、一回考えてほしいわよっ!」


「あ……みんなッ……!」


 ソラたちの前に現れたのは、呆れ顔で――けれどどこか安堵を滲ませたカムフだった。


「よかった。やっぱ王城まで追いかけてきてくれたんだね!」


 喜びに思わず顔がほころぶソラ。

 と、そんな彼女の前に、レイラが大きな足音を立てて近付く。


「え?」


 レイラは道すがら拾った槍を握っているが――かと思えば、次の瞬間。

 それを投げ捨て、勢いよくソラの頬を叩いた。


「いったぁ――!!」


 ソラの頬がみるみる赤く腫れ上がる。

 怒鳴り返すより早く、レイラはソラの胸倉を掴んだ。


「ちゃんと話は聞きなさいよ!」


 彼女の双眸に宿るのは怒りだけじゃない。


「言っとくけど、これはセイランさんとダスク(おじさん)に頼まれた一発! でもって、わたしが言いたいのはね――いっつも一人で勝手に飛び込んで、結局ピンチになって! 少しは冷静に考えてから動きなさいってこと! ……アンタが怪我してからじゃ遅いのよ!?」


 ソラを心から案ずるからこその、明確な不安。

 心配させた自覚が胸を刺し、ソラはレイラの手をそっと払う。


「ごめん。でも勝手な行動は……多分またする」

「それ謝罪になってないわよ」


「じゃあ、突っ込みそうになったらビンタで止めていいよ」

「それはそれで……私が暴力女みたいじゃない」


「あ、じゃああたしもビンタし返す。それでおあいこ」

「アンタのバカ力がおあいこなわけないでしょ! 奥歯持ってかれるわ!」


 気づけばいつもの調子で言い合いを始める二人。

 頭を抱えながらカムフが慌てて割って入る。


「ストップ! それより今は早く戦ってくれ! まともに戦えるのソラだけなんだから!」

「えーっ!? カムフだって兄さんから剣の稽古受けてたじゃん!」


「何年も前の話だろ。剣の構え方ももう覚えてないって! まあモップの磨き方なら勝てるけどな!」

「それ今自慢するとこじゃないし!」


 すると、ソラの側へとキースが駆け付ける。

 彼の手にはソラの剣が握られていた。


「ありがとうキース」


 満面の笑みを浮かべるソラに、キースは静かに頷いた。


 体力が回復したわけじゃない。

 だが――。


 さっきよりも、身体が軽い。

 ソラは迫るグリートの仲間(てき)へ剣を向けた。




 彼女たちの騒がしいやり取りは、当然ロゼたちの目にも入っていた。


 まるで緊張感のない会話。

 子供じみた言い争い。

 だが、紛れもない本気のやり取り。


 その光景に、灰燼の怪物(グリート)でさえ思わず手を止めてしまっている。

 呆気に取られている彼へ、ロゼは、自然といつものような苦笑を浮かべて言った。


「フフフ。本当……ムカつくくらい調子狂うでしょ、彼女たち……」


 その表情を見た灰燼の怪物(グリート)は、ニット帽を目深に被り直し、低く呟いた。


「ホンマやな……そんな幸せそうな同士(アンタ)の顔、見せつけられんのは……めちゃくちゃムカついたわ……」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ