表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

2話

昼前の授業は、どうしてこんなに眠いんだろう。

 神代は机に頬をつけながら、ぼんやり黒板を眺めていた。

 先生の声は聞こえている。

 でも、頭の中にゆっくり入ってくる感じだ。

 チョークの音が、静かな教室に響く。

 カリ、カリ、カリ。

 その横で、ノートを取る音も聞こえる。

 さらさら、と静かな音。

 隣を見ると、柊がきれいな字でノートを書いていた。

 背筋がまっすぐで、動きも落ち着いている。

 神代はその様子を、ぼんやり眺める。

 しばらくして、柊が小さく言った。

「神代」

「んー?」

「見てる」

「うん」

「ノートは?」

「……今から」

 柊は少しだけ笑う。

「もう半分終わったよ」

「早い」

「神代が遅い」

 神代はゆっくり体を起こした。

 ノートを開く。

 ペンを持つ。

 でも、まだ少し眠い。

 先生が黒板に式を書く。

 クラスの何人かがノートをめくる。

 教室の空気は、穏やかで、ゆっくりしている。

 神代は少し書いて、また止まった。

 柊がちらっと横を見る。

「神代」

「うん」

「眠い?」

「ちょっと」

「顔に書いてある」

 神代は小さく笑う。

「昨日、よく寝たんだけど」

「それでも眠いんだ」

「うん」

 柊は少しだけ考えてから、ノートを神代の方に寄せた。

「ここ」

「ん?」

「今のところ」

 きれいにまとまったページが見える。

 神代はそれを見て、さらさらと書き始めた。

「助かる」

「どういたしまして」

 小さな声で会話していると、先生が振り向いた。

「……神代」

 二人はぴたっと止まる。

「今の式、分かるか」

 教室の視線が集まる。

 神代は少しだけ黒板を見て、それから答えた。

「はい」

「じゃあ説明してみろ」

 神代は立ち上がる。

 眠そうな顔のまま、黒板を見て、少し考える。

 そして、ゆっくり話し始めた。

 説明は短くて、分かりやすかった。

 先生がうなずく。

「……正解だ。座っていい」

「はい」

 神代は席に戻る。

 柊が小さく拍手するふりをした。

「すごい」

「眠かったけど」

「それでできるの、ずるい」

「柊も分かってたでしょ」

「まあね」

 二人は顔を見合わせて、少し笑う。

 授業はまた続いていく。

 チョークの音。

 ノートの音。

 静かな教室。

 神代はまた、少しだけ机に寄りかかる。

「神代」

「ん?」

「寝ないで」

「努力する」

「たぶんしないでしょ」

「……ばれてる」

 柊は小さく笑う。

 そしてまた、ノートを書き始める。

 隣の席は、なんだか落ち着く。

 特別なことは何もない。

 ただ同じ授業を受けて、同じ時間を過ごしているだけ。

 それなのに、ふとしたときに思う。

 この席が、もし違ったら。

 隣が柊じゃなかったら。

 たぶん、今より少しだけ、退屈な時間になるんだろう。

 神代はそんなことをぼんやり考えながら、またノートを開いた。

 隣から、さらさらとペンの音が聞こえてくる。

 安心する音。そして眠くなる音。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ