↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/86

第84斤

「なんで……こんなこと……」


 黒和わわが足元で倒れている黒和陽咲に小さいながらも、怒りが混じった声で問いただした。付近には舞原麦也も倒れていたが自ら立ち上がった後、手近な教会椅子に身を預け、何も言わずに2人の黒和を見つめ始めた。


「いたた……油断しちゃった。でも驚いたよ。まさかここに私の許可なく入ってこれる人がいるなんて……え……?」


 陽咲が頭を抑えながら立ち上がり、独り言のように呟いた。しかしそこから何かをしようとした瞬間、苦笑いだった表情が恐怖のような、驚愕のような、動揺した表情へと豹変した。


「なんで……消えないの……?」

「消えない……? やっぱりあなたが……!?」

「なんで! なんで! なんで!」


 陽咲が狂乱したように手を何度もはためかせた。しかし何も起こらない。当たり前だ。普通は手をはためかせただけでは人間は消えない。それが常識で、必然だ。


「みんなを――」

「うるさいっ!」


 それに気づいた陽咲は右手に拳銃を生成し、そのまま躊躇いもなくわわに向けて発砲した。銃で撃たれれば人間は死ぬ。しかし。


「7号リバーの心――勇象邁進」


 わわはそう呟き陽咲の真正面を歩いた。当然銃弾が飛んでくるが、恐れを知らない象の如き皮膚は拳銃の弾丸程度では傷ひとつつかない。そしてわわは、そのまま陽咲の目の前まで辿りつき、スライドストップした銃を舌打ちして投げ捨てた陽咲の胸倉を掴んだ。


「答えて」

「そうだよ私が全部やった! YouTuberを消したのも、ムギをこんな風にしたのも全部全部全部私がやったの!」


 陽咲は開き直ったように口角を上げながら、言葉を続けた。


「だって私は世界を自由に書き換えられるんだよ!? だったら私がやりたいように、望むように書き換えるのが当たり前でしょ!?」


 疲労からかいつの間にか眠ってしまっていた舞原麦也を陽咲は指さした。


「舞原くんをこんな風にしたのも……あなたの望みなの?」

「だったら?」


 わわは陽咲の答えを聞き、決意を固めたように深呼吸をした後に呟いた。


「1号サクラの心――心犬滅却」

「は……?」


 そして。


「3号マリブの心――牛蹴」


 そう言って陽咲の顎を下から蹴り飛ばし、そのまま天井付近まで浮き上がらせた。わわも陽咲のいる位置までロスの飛行能力を用いて高く舞い上がり、そのまま陽咲の首に噛みついた。


「11号ベーカーの心――金蘭之鮫」


 この技は本来であれば激しく噛みつき相手の肉を齧り取るものであるが、今のわわは『シスコの毒』も持っている。そしてその毒は即効性も致死性も兼ね備えている。


「がはっ……」


 わわの歯から、その注入される。その瞬間陽咲が苦しみに満ちた声を上げ、瞬く間に顔色を青紫色に変えながら防御姿勢も取れずに床に墜落した。


「私は……ただ……この世界を自分のものに……変えたかった……だけなのに……」


 陽咲は光を失いかけた瞳を天井に向けながら、呟いた。


「……」


 同情の声も、否定の声も返ってこないまま、陽咲の命の炎は燃え尽きた。


 それを空中で確かめたわわは着地すると、一目散に舞原麦也の元へと駆け寄った。


「舞原くん! 舞原くん!」


 いつのまにか椅子から転げ落ち、地面に力なく倒れていた彼に向かってわわは必死に呼び掛けた。


 しかし。


 陽咲と同様に、舞原麦也の意識も、燃え尽きていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。