第75斤
真っ暗な空間に無数の記号が広がる。それは円周率のようでも、プログラム言語のようでもあった。夢はいつしか無謬を信じなくなり残骸の塔になる。憧れはいつしかカマキリになり視界に映る者を引き裂く。希望はいつしかヒマワリの種になり蝉に羽化する。夏の騒音は冬になると雑音になる。フランスパンで打たれた尻はやがて豚になり、僕は目覚めた。
「あ、起きた!」
「ブヒヒッヒーン!」
僕の目の前には、猫耳が生えた白金色の髪をした美少女と、全身タイツのピンクの豚とそれに跨る富良らんすがいた。3人の顔の隙間から覗く空は嘘みたいに青すぎて、青色を超越した究極の色と化していた。
「おはよう。と言っていいのかはわからないけど、少なくとも照乃よりは早いわ」
「ひどくないですっ!?」
「だって事実じゃない」
「ブヒヒヒヒ」
「あんたは黙ってなさい!」
「ブッヒーン!」
富良らんすに尻を競馬か何かに使ってそうな鞭で叩かれて豚が恍惚とした声を上げた。一体何なんだこれは。どうしてこんなことになっているんだ。
「成功したんだよ! 俺たちは!」
訳もわからず僕が目をキョロキョロさせていると、うごたが満面の笑みで僕の肩を叩いていった。その瞬間、僕は理解した。
「ここは……異次元世界……?」
「そうだ! 俺たちはやったんだ!」
「ブヒヒヒヒ」
「あたしたちは望んでここに来てはないけどね。お陰でここは軽い地獄よ」
「そうなんですよぉ……」
……ちょっと疲れたな。一度起こした身体を、再び倒した。地面は固くも柔らかくも冷たくも温かくもない、まるで高級なベッドのような感触だった。気持ちいい。これなら……ふぁぁぁ……。
「あ、また倒れました!」
「ブヒヒヒ」
「とりあえずアジトまで運ぶわよ!」
「ブッヒヒヒー」
誰かに担ぎ上げられて上下に激しく揺らされる感覚を感じながら、僕の意識は再び途切れた。




