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第74斤
雪でもなく、雲でもなく、塩でもない。ただただ何も無い、真っ白な世界に僕はいた。
上が下になり、右が左になり、足が口になり、耳が肝臓になる。指の爪が目玉になり僕の顔を貫き、顔が円錐形になる。五感が入り乱れ、人参を耳で聞き取り、捲り損ねたカレンダーを鼻で嗅いだ。遠くで響くクラクションの味はどこか切なく、食べ残したサラダが目に入る。
どうしてこんな状況になったのか、僕には理解できない。
否、理解が完了したと思った瞬間、そういうものなんだと受け入れた。
右上か、あるいは真下か。僕にはまるでわからない。
しかし方向の問題は、些事に過ぎない。
だけど僕も、君も、あなたも、いずれはそこに行かなければならない。
終わりはいつも、そうして訪れる。
元気なポテトチップスの残りかすが、情け容赦なく割り込んでくる。
僕は手を巻き上げる。釣りあがった手が辞典になるか、奮闘記になるかは誰も知らない。
答えは、僕自身が決めるものだ。
それはきっと、料理に似ている。
そうして足が注意事項になり、脳が鞭になる。
その瞬間、僕は消えた。




