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第70斤

 窓に打ち付けられる無数の雨粒の音を、私はカーテンを閉め切ったベッドの上で何もしないで聞いていた。カーテンの隙間から漏れる光は仄暗いけど、多分もう夜が明けたんだろうなと感じさせるくらいの量があった。パジャマが汗で身体に張り付いているけど、脱ぐ気も起こらない。効きが弱いエアコンの駆動音だけが狭い寝室に轟いている。


 結論から言うと、舞原くんは行方不明になった。


 家にも、学校にも、戻って来なかった。


 そして。


 かつてマイクロレートというグループでうごたの妹と動画投稿をしていたこと、舞原麦也という本名、私たちと同じ学校に通っていること、などが瞬く間にどこかの誰かに特定されて、ネット上に公開されていった。


 舞原くんが一体何をしたの?


 うごたは一体どうして、舞原くんを一緒に消したの?


 思考が脳内で巡るかと思ったら、全く巡らなかった。まるで長距離走の途中で力尽きて、歩きながらゴールに向かっているかのように。もっとも、歩いている道がゴールに繋がっているかもわからないけど。


 頭は回らないし、身体は重い。けれどもお腹はぎゅるると空腹を告げる。


 何か食べよう。


 そういえばいつからこうして寝てたんだっけ……結局やる予定だった配信もできなかったし、学校に行く必要は無いと身体に染みついた感覚が告げているから土曜日か日曜日かと思うけど……私は枕元に適当に置かれていたスマホを見た。曜日と時刻は日曜日の午前5時だった。


 もう7月になったんだ……と思ったところで、私は思い出した。


「ムリムちゃん……!」


 私は慌ててベッドから起き上がろうとしたけど身体が上手く動かなくて、ベッドから転がり落ちた。そして後頭部を勢いよく床にぶつける。痛い。

 

 とにかく……行かないと……。


 私は気を取り直して、寝室を後にした。

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