第30斤
「雪ちゃん……どうしてあんなこと言ったの……」
「だって他に適任っぽい方いなかったですしー」
「だからってあんなこと言わなくても……」
「じゃーうちと舞原さんで出ますんでいいです」
「うえええっ!?」
「冗談っすよーちはるんも可愛いっすねー」
「もう……」
横並びで繰り広げられるクラスメイトの女子2人のやり取りを僕はオレンジジュースをストローで吸いながら眼前で眺めていた。4人掛けのテーブル席なので僕の隣には誰もいない。
放課後、僕と白野さんは委員長に連れられ学校近所のファミレスで少し、というか相当早めな夕食を摂っているところだ。ちなみに僕はオムライス、白野さんはミートスパゲッティ、委員長はデミグラスハンバーグを注文して食べている。ドリンクバー付きで。
「一度こうやってじっくり話して確かめたかったんすよねー。お2人が一体どーゆー関係なのかって」
「ただの友達……だから……まだ」
「まだ?」
「うべらあえはおほめほはの!」
「そーゆー反応されるとやっぱりなんか引っかかるんすよねー。つーか舞原さんも黙って食ってないで何か言ったらどーすかー。聞けばどーやらちはるんに告ったらしいじゃないっすかー」
白野さんと目線で対話を試みる。どうする? わかんないよ。なんかいいアイデアとかない? あるわけない! 意外と話せたけど解決策が出てこないので無意味だった。どうしよう。
『わたしに嘘ついたら、ダメだからね!』
嘘をつくのは、××にじゃないんだけどね。
一目惚れとか馬が合ったからとか、嘘をつくことはいくらでもできる。しかしそれで果たしていい感じに言い逃れすることができるだろうか。委員長は眠たそうな垂れ目をきらきらと輝かせているし、明らかに追及してくる気満々だ。そもそも僕はそんなに舌が回る人間じゃない。自信は無かった。
「そーやって黙って見つめあってるあたりが怪しいんすよねー」
「へへべれあじゃれと!」
「なんて?」
「まいはあろろとらとらろと!」
白野さんがパニックになって壊れかけている。僕が何とかしなければ――と思ってふと左隣を見ると、誰もいないはずなのに誰かがいた。はっとして確認すると、僕の隣には、制服らしき服を着たおかっぱボブの小学生くらいの女の子が座っていた。
僕が呆気にとられている間に、女の子は委員長に向けて少し微笑みながら、外見不相応にも程がある尊大な口調でこう言った。
「久しぶりだな、偬鳴架よ」
「わおー、エビ子ちゃんじゃないすかー。おひさっすー」
え?
今、なんて?
エビ子? いやそっちはどうでもいい。
偬鳴架?
つまり、それって。
委員長が、わっちんの――。
「ままままままままままままままままままままままままままままままままままままま!?!?」
白野さんは、防犯ブザーになった。




