第24斤
すごろくが進んでいき、やがてまたミニゲームが始まった。今度は転がってくる巨岩から目の前に現れる障害物を避け続けて最後まで逃げ切れれば勝ちというゲームだった。
『頼むよちょうろー!』
リムリムが祈るように言うと、ミニゲームはスタートした。ちょうろうは逃げ遅れて悲鳴を上げる間もなく呆気なく巨岩に潰された。
『キェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! ちょーろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
リムリムが超音波で絶叫する中、わっちん操るロスは悠々と上空を飛び続け、ディエゴやシスコが障害物に阻まれたりバテたりして潰されてもお構いなしに最後まで巨岩から逃げ延びた。
『よーし……! よし! よおおおおし!』
『ちょっと待てよ! ひこうがいわに弱いのは常識だろ! なのになんで逃げ切れてんだよ!』
『残念だったわね! 私はペラップとは違うのよ!』
『ずっと思っていましたけど空を飛ぶのは反則ではなくて!?』
『そうじゃそうじゃ』
『いいのよ! 勝ちは勝ちなのよ!』
わっちんが喜びを噛み締めている中で、プッチンと岩に潰されたはずの3匹がいつのまにか復活していてロスに文句を言いまくっていた。
『ペラップって思いっきり言っちゃってるよw 大丈夫なの?w』
『私にもわかんないw』
『つくづくヤバいゲームだねこれw』
リムリムが笑いながらツッコむ。そういうゲームだと理解してからはちょうろうが勝とうが負けようが笑いながらツッコみ続けている。が、明らかに僕と白野さんが一緒にやったときのCPUちょうろうよりも戦績が良くなっている。しかしディエゴは僕が操作したときとあまり変わっていない。なんか悲しい。
『あっ……! これって……!』
『あちゃー! 追いつかれたー!』
わっちん操るロスが、先を進んでいたちょうろうに追いつき、同じマスに立った。するとロスが翼を大きくはためかせてながら喋り始めた。
『2人が同じマスに並んだっていうことは……当然あれよね!』
『お互いのものを賭けての決闘、じゃな』
ロスの発言にちょうろうも静かに頷く。
『決闘!? なにするのこれ? ミニゲーム?』
『えっと……これはね……うーん……結構まちまちで……』
わっちんは言葉選びに迷っているみたいだった。普通こういうのは1対1でのミニゲームとかじゃないのか。そういや僕がやったときは誰も同じマスには最後まで並ばなかったな。
『私が勝ったら、あんたのアイテム――スーパーサイコロ、ウルトラサイコロ、メオーシサイコロ、全部もらうわ! それでいいわよね?』
『では、わしが勝ったらお前の■■をもらおう』
『うれれあじゃあなじゅぶら!? ピーってなななに言ってんのちょよおとろおあ!?』
今ツッコんだのはリムリムではない。わっちんである。奇声でわかると思うけど。ちょうろうはピー音がかかる程の爆弾発言をロスに向かってした。
『!?』『ピー音w』『もうアレしかないじゃんw』『ヤバすぎるw』『卵かもしれない』
『わわわわわたし清楚でいたいのになんでだふぁあふぁじゃえ』
『わっちん慌てすぎw てかなんであたしよりわっちんが慌ててんのw』
パニックになっていたわっちんというか白野さんはリムリムに苦笑されていた。多分、いや絶対、今までこんな発言聞いたことなかったんだろうな。それよりわっちんが清楚でいたいなんて初めて聞いたぞ。
『じゃふぁらるらじゃじぇふぇふぇふぁふぁいおえあ!』
『あーw 大変だこれはw 切り抜き確定だーw』
『おがっ』
パニックになっているわっちんとこの状況も楽しんでいるリムリムをよそに、ロスとちょうろうはしばらく無言で向かい合っていたが、しばらくしてロスが何も言わぬままちょうろうの腹を勢いよく蹴り飛ばした。ちょうろうはビニール袋の切れ端のように情けなく宙を舞い、釘のように頭から地面に突き刺さった。
『このエロネズミが』
ロスが今まで聞いたことのないドスの効いた声で倒れたちょうろうに吐き捨てると、画面に「ロス、勝利!」と大きく表示された。
『えつあえあえあえあじぇえれえええええええ!?』
『これはある意味納得だよもうw』
まさかのミニゲーム無しで勝敗が決してしまったが、リムリムは納得して笑い、わっちんは奇声で驚愕した。その後、遥か後方を行くディエゴとシスコのターンがあっさりと終わり、リムリム操るちょうろうのターンとなった。
『0ってないの? このサイコロ』
『そんなものないわい』
『あら残念』
『残念じゃったな』
ちょうろうが平然とツッコんでやり取りは終わった。ロスは少々辛辣になっていた。
『い、いけー!』
リムリムが不穏な空気をかき消すかのように叫ぶと、ちょうろうがサイコロをプルプル震えている腕で投げ飛ばした。9が出た。
『未来で待っておるぞ』
『あんたに未来なんてないでしょ』
『今の発言は老鼠虐待じゃぞ。それにわしらは不死身じゃろが』
『そういやあんたもそうだったわね。がっかりだわ』
ちょうろうが映画の名台詞みたいなことを言ったが、ロスは明らかに辛辣になっていた。ブラックジョークにも程がある。ていうかしれっと今とんでもない設定が明らかにされたような気がする。不死身ってなんだ。確かにそうでもなければあんな理不尽なミニゲームを何度もできないだろうけども。
『ちょっとーw 仲良くしてw わっちんが困ってるからw』
『えあかあえあ……』
パニックで発言が意味不明になっているわっちんをフォローするかのようにリムリムがツッコんだ。するとちょうろうが止まったマスはトラブルマスとなるものとなっており、最下位だったディエゴが瞬間移動で同じマスまでワープしてきた。
『うわw ディエゴ来ちゃったw』
『ロス、俺とつきあえば?』
『嫌よ気持ち悪い。尻にひまわりの種でも詰まらせたの?』
『あっそ。俺も嫌だよ。それと、俺のケツは清潔だ。嘘だと思うなら舐めてみろ』
『そうか。ならわしが――』
『おい! てめえが舐めんじゃねえよ!』
『あの……わたくしを置き去りにしないでくださいまし……それと下品な話はもうこの辺りでやめていただけると……』
『シスコぢゃあああああああん。絶対優勝させてあげるからああああ』
唯一終始暴走せず、理不尽なミニゲームにも参加し続け、ひたむきに頑張っているシスコにわっちんは史上最高に汚い声で泣きついた。
しかし結局優勝したのはロスであった。おめでとうと言うべきなのかこれは。それとも優勝残念だったねと言うべきなのだろうか。
『やっぱりあんた達じゃ、私の引き立て役にしかならないわね! ご苦労様!』
『なんでおまえあふぁじあかつつああふぁあだささだださっんだよあああ!?』
『ひゃひゃっやはははw 自分だよそれっへっへふひへひひひふへひゃはっはw』
最早ゲームというよりも、奇声を発しながら怒り狂うわっちんもとい白野さんにリムリムは超音波で爆笑していた。
『わっちんの新たな顔が見れた気がするw』『最高すぎたw』『MVPはちょうろう』『実質焼きバターの勝利』『超音波VS奇声』
チャット欄もまさかの展開続きに大賑わいであった。これはこれで、結果オーライ、でいいんだろうか。いいのかこれで。




