第21斤
『ブホヒブホヒヒビヒブホブヒヒヒ(人の足引っ張ることしか出来ない人間のふりした豚は他でもない私自身でした)』
『いくらなんでもこれは正気の沙汰とは思えない』『何を考えてこんな動画出したんだ?』『火に油を注ぐとはまさにこのこと』『だからうごたは何やってんだよ』『他のメンバーは誰もこれを止めなかったの? 止めなかったら同罪でしょ』
今日――もう昨日か、に上げた動画に書かれたコメントに俺はあくびをしながら目を通す。
「なぁ、マジでこんなことして良かったのか?」
スマホで俺と同じようにコメントを見ているらしいうぇんが俺の横に来て尋ねてきた。こいつが今着用している豚鼻と豚耳とピンクの全身タイツが少しでも視界に入ると今日――じゃなくて昨日の晩飯ごと口からから噴き出してしまいそうになるので、俺はこいつと目を合わせることはせず、わざとらしく顔をしかめた。
「今考えうる方法としてはこれが一番の有力候補なんだ。やってみる価値は十分あるさ」
「でもなぁ、こんな簡単に上手くいくはずが――」
ない、だろうな。今まで何度も立案して実行しては失敗するのを繰り返してきた。人間それが何度も続けば続くほど無力感を感じて、何もしたくなくなるというものだ。しかしだからこそ、新たな方法を考え続け、実行し続ける必要があるのだ。
「おい、どうなってるんだよこれ」
「あ?」
うぇんが素っ頓狂な声を上げたので思わずそいつの方に顔を向けてしまった。まずい噴き出す――と俺は思ったが、そうはならなかった。なぜなら。
「俺の身体が、なんなんだよこれ、消えてんじゃねえか!」
「これだ! これでいいんだ! やった! やったぞ!」
うぇんの身体が、ドライアイスが気化するみたいに、白い煙を出してみるみるうちに消滅している。とうとう辿りついたぞ。これが、これが正解だったんだ。全身が喜びで震える。
「ブヒ!? ブヒヒヒヒ!? ブヒヒヒヒヒ!!」
「どうした、ついに中身まで豚になったか」
豚みたいな姿のうぇんが豚みたいな情けない声を身体の末端から絶えず煙を出しながら上げた。残念だが、あいにく俺に豚語の教養は無いためこいつが一体何を喋っているのか全く理解できない。だが、煙だけじゃなくて恐怖心に包まれているというのは全身の震えと青ざめた表情で理解できた。
「ブヒ! ブヒヒヒ! ブッヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!」
やがて全身が煙に包まれ、うぇんは悲鳴のようだが面白い声で叫びながら着用していた豚鼻と豚耳とピンクの全身タイツごと消滅した。あいつから出ていた煙が部屋の空気と混じって透明になっていく。それを見て俺は笑いを堪えられなくなり、口を大きく開けて爆笑した。
「まさかこんなのが正解とはなぁ。笑えねぇなぁ。あいつの顔は笑えたけど」
さてと。後は俺がどうするか、だな。
「なんかいいネタ、見つかんねぇかなぁ」
俺は意気揚々と、動画の海へと再度飛び込んだ。




