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召喚のみでやってきます!  作者: オスめこ
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呪われた墓所



 洞窟の中、暗闇を弱弱しく、しかし暖かい光がランプから漏れ出て、足元を仄かに映し出す。むき出しの地面は、先の遺跡然とした様式からガラリと変わり、そこには何ら人工的な手が付けられた様子はない。先行させているスケさんの剣も灼けてはいるが、薪が燃えるように明るくはない。うっすらと、鉄が赤く光る程度で、光源としては役立たずだ。何かしら脅威がでたとき用に抑えているため仕方がないが、もう一つランプがあればと少々歯がゆい。次回冒険に出る際は、予備用として保管しておこう。


「なにもいないな。動物らしき痕跡とかもないし」


『…』


地面を見ても、何かしら動植物があった様子はなく、ひたすらに土くれのみだ。物音ひとつ立たないため、独り言もよく響き、暗闇に溶けていく。もし一人でここに、突然放り込まれたら、即座に発狂しかねん状況である。改めて首元の妖精―シルフィーヌを撫で、心を紛らわす。俺自身は最悪、くたばったとして、現実世界に戻るか、リスポーン地点のあの居室で起きるくらいだろうが、こいつはそうはいかないのだ。


「大丈夫。ちゃんと元の場所に、一緒に戻るからな」


「ううう~……ホントに?約束だぞ?」


「約束するよ。だから頑張ろうぜ。あんま気を落とし続けていると、心が持たんからな」


「……そうだな!おいら、まださっきの約束、ちゃんと果たして貰ってなんだもん。こんなところで死んでられねぇぜ!」


「ああ、美味いもん好きなだけ食うってやつか。そうだな!2つも約束したし、ちゃんと守らなきゃ―」




先も見えぬ暗闇の奥底から、()()()が唸りを上げて魔術師に襲い掛かってきた。それは銃弾のように真っすぐと、明確な殺意を持って向かい、そして―


『……!!』


斥候として前を歩んでいた骸骨が打ち払った!無骨な片手剣は炎が勢いを増し、敵対生物を真っ二つに両断する。槍のような見た目のそれは、切断部位がぼうぼうと燃え上がり、奇妙な金切声を上げてのたうち回わった。よく見るとそれは虫のような姿をしているが、舌を思わせる質感もあり、いずれにしろそれは直ぐにこと切れた。


「スケさん!」


『…!』


こくりと頷き、骸骨は油断なく前方を見据えた。この程度の襲撃で済むほど、この場所は甘ったるくないだろう。ソーニャを守るべく、じっと待っていると、カサカサと寒気が走る音が聞こえてくる。それは聞くものに嫌悪感を与えるもので、音の大きさからそれが中々の体積を誇るものだと想像できた。そしてそれが対向した瞬間。ソーニャは即断した。


「―召喚(サモン)― ヒュージタイガー!」


それは異形極まる存在で、形容するのなら蜘蛛が近いのだろうか。一般的な人間よりもはるかに大きく、巨大なものだ。細く、枯れ枝のような足は先端が鋭利に尖り、複眼たる眼は規則性なく付けられており、白く濁っている。何よりも目を引くのは、蜘蛛が少し姿勢を持ち上げただけで姿を現す口腔だ。ばっくりと、胴体を割くように巨大な口が、無数の牙と共にぐにぐにと蠢いていた。それこそ、人など簡単に飲み込めるだろう。


『…!』


骸骨は思い切り前に踏み込んだ。ただ食す為だけにできたようなそれは、ひたすらに魔術師のみを狙っており、遮るように剣を振るう。意に介さないような素振りで突っ込む蜘蛛だが、瞬間的に出力を上げた炎が間近に迫ると、俊敏な動きで後ろに回避した。炎による恐れかは不明だが、骸を脅威と認めたのだろう。牙を打ち鳴らし、汚らわしい唾液を周囲にまき散らした。威嚇しているようだ。


両者が対面している間、召喚されたヒュージタイガーが姿を現す。白い毛並みを持った虎は、暗闇に溶け込む事なく存在を示しており、ソーニャに甘える事なく直ぐに骸骨の傍に走り寄った。


「スケさんは陽動を!タイガーは回り込んで後方から仕掛けろ!」


「ウォウ!」


『…!』


2体は連携し、包囲するように陣を変える。無論蜘蛛もされまいと位置取りを変えるが、思考させるべからずと、再度、骸骨は思い切り踏み込んだ。剣を突き刺すように構え、真正面から突撃する。蜘蛛は前脚を動かし、突き殺さんと足を突くも、新調した鎧がギャリギャリと嫌な音を立てながら槍を反らした。鉄で出来た、なんら面白味もない造形の鎧だが、防御するというしっかりとした実用性を示したようだ。止まることなく蜘蛛に突撃する!


「geeeee!!!」


大きな口に、燃え盛る剣を深く突き刺す。がむしゃらに足をばたつかせ、骸骨に恐ろしい速度で足が降り注ぐも、あえて胴体の下に潜り回避する。口の中から更に、触手のような物も湧き出してきた。最初の攻撃はどうやらこいつらしい。そのまま押しつぶされれば食われそうなものだが、痛みに耐えかねているのか、興奮した様子で蜘蛛は暴れまわる。


「ガァオッ!!」


そんな隙を見過ごすはずもないと、大虎は乗りかかるように蜘蛛に襲い掛かった!複眼が付いた部位を、思い切り嚙み千切ると同時、骸骨も剣を引き抜きながら、胴体を切り裂きつつ後ろに下がった。大虎が全体重を乗せ、思い切りに爪を食い込ませる。たまらず蜘蛛は地べたに叩きつけられ、濁った瞳に最後に映ったのは、振り下ろされる炎の一閃であった―




「…一応、ナイフを使わんでも倒せるか。やれやれ、気持ち悪い」


何とか討伐し終え、一応スケさんに回収させてみたが、魔石以外に価値があるものがあるかは分からない。シルフィーヌに聞いても、こいつを見た事も聞いたこともないらしいので、取り合えず魔石だけ抜きとり再度前に進む。


「うえぇ。こんなんが住んでいるのかよここ~…」


「まあ、倒せるのが分かったから、まだマシじゃないか?ほら。もう行こうぜ」


「おわわっ待って待って!」


こいつ、本格的に怖いようだ。もう襟元から離れようとしないぞ。

その後も暫く、タイガーは帰還させ、ゆっくりと前に進んでいく。先ほどの化け物が出ないように祈りながら進んでいたが、ふと後ろから何かが音がするのが分かった。最初は小さな物音が、次第に騒音となりつつこちらに近づいてきているようだ!


「ヒュージタイガー!こい!」


慌てて杖を振り、タイガーを召喚する。恐らくさっきの化け物の集団だろう。逆にスケさんを帰還。スッと地面に描かれた魔法陣に潜り込むのを見る暇もなく、タイガーに乗り込む。ちくしょうどんどん近づいて来てやがる!


[[[[[[ggggeeeeeeeeeee!!!!!]]]]]]


「タイガー頼む!頑張ってくれよ!」


「グォウ!」


鞍にまたがり、全速力で走らせた。出口探しから一転。地獄の追いかけっこが始まってしまったのである。



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