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召喚のみでやってきます!  作者: オスめこ
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初めての冒険②




 村の入口を出てはや数十分。以前と変わらずテクテクと歩き、左を見れば辺り一面の草原地帯が、右に目をやればうっそうと生え茂る森が代り映えすることなく続いてゆく。道など当然石畳で出来ているわけもなく、人間が踏みしめてできた自然由来の物。中央に沿って2本の線が残っているあたり、恐らく馬車のような物が定期的に通っているのだろう。それ以外に人工物らしき物が見受けられない辺り、やはりこの周辺は相当な田舎らしい。

先ほどの支店で出ていた王都という会話。どれほどの規模かは分からないが、少なくとも今まで見てきた木造建築一辺倒ではないだろう。ファンタジー感満載の、テーマ―パークみたいなやつだろうか。案外魔法という規格外のエネルギーがあるのだから、俺の中にある常識とは違う都があるのかもしれない。


「にしても遠いなこりゃ…この調子だとまだまだかかるかぁ」


あれこれ妄想しながら歩いているが、景色は先ほどと全く変わらない。まあまだ一時間も歩いていないのだが、変わらない景色が続くというのは中々につらい。

昨年健康診断にギリ引っかかり、会社からの命令で強制的にジムにぶち込まれた記憶が蘇ってきた。マシンの順番待ちだったり、運動前の柔軟はまだいい。だが運動後のエアロバイク。あれはきつかった。最初についてくれたトレーナーの方が、数十分ないし1時間程度は行えと話し実行したが、如何に工夫しローテしまくった音楽や動画を流したとても、只々時間が流れていくあの瞬間が精神的に苦痛すぎたのだ。


「ま、匂いとかある分、こっちは完全にジョギングだからまだマシか。さて、残りは…」


手頃な大きさの石に座り、一息つくため休憩をとる。革製の水筒をがぶりと煽り、雑嚢をまさぐって小さな水晶を取り出した。いや、それは正確に言えばコンパスだろう。中央部分に羅針盤のように磁針が浮かび上がり、動かす事で方向をくるくると動かしている。そして水晶内はもう一つ、翡翠色の針が一定の方向を指し示しており、村から出発する前と違い先端の色が変色していた。


「赤い警告色…確かこのぐらいだと対象から500m前後って言ってたな。そろそろ警戒して移動する頃合いか」


この水晶、方位磁石が埋め込まれているほか、遠見と呼ばれる魔術でタグ付けした依頼対象の距離を測定するものらしい。なんでも昔同じ魔物から回収した部位を依頼完了として渡し、後日それが嘘偽りとばれて粛清の対象になったとか。それ以来、腕のいい魔術師が遠方の対象を発見、タグを付け狩ることで正当性を保つようにしたそうだ。何かしら他とは違う身体的特徴や、物見の魔術が使えないならともかく、今回のような下位の依頼に関しては大半がこのような形で依頼されるとか。


周囲を警戒しながら道を歩いてゆく。村道ではなく森を中を指す辺り、森に生息する魔物のようだ。ことさら近く、針が真っ赤に染まったのを見計い、杖を振るいスケさんを召喚した。


「―召喚(サモン)―!」


黒い魔法陣が地面に浮かび上がり、いつもと同様、真白い腕が突き出てきたと思うと、のそりと大柄な骸骨が姿を現した。わずかに燃える剣を持ち、少し省エネモード。以前なんとなく強化した際、剣の炎の勢いも増したので、ここぞという場面で出力を上げる予定だ。


「よろしくなスケさん。最近お互い良い所無かったから、今回はバッチリ決めようぜ」


『…』


コクリとスケさんが頷いた所で、索敵開始。まあ羅針盤を睨みながら、ゆっくりその場に向かうだけだが、場所が分かるとしても中々緊張するものだ。前回のような混沌の兵士がこんにちわする可能性も無いわけで。改めてデンジャラスだなと痛感するこの世界。まあ相当運が悪いとか言われているし、立て続けて当たるものでもないだろう。


ゆっくりと歩み指し示す方向に向かっていくと、スケさんが手で進行を止めてくれた。どうやらご対面のようだ。


「グルルルル……」

 

「おわぁ、でっけ」


想像していた虎とある程度は似通っているし、大きさも現実の方の虎と大差ないだろう。問題は昔図鑑などで見たサーベルタイガーの如く生えている、オレンジ色の巨大な牙が2対。簡単に切り裂けるであろう爪に、尻尾にまで先端に槌のような器官がついており、完全に戦闘特化の魔物なのだ。

これ勝てんのかと不安に思わんでもないが、これが混沌の兵士に勝てるともまた思えない。そう考えると、幾分か気が楽になる。急いで距離を置いて、後方に待機した―




虎と骸骨が互いににらみ合い、じりじりと間合いを狭めてゆく。


一方はその剣を以て首を断ち切る為に。


一方はその牙を以て首をへし折る為に。


のどかな風景とは対照的に、揺らめく殺意が辺りに広がってゆく。活気だっていた虫や鳥達の喧騒は鳴りを潜めた。その瞬間。合図を出したはずもないのに、双方は同時に飛び出し、己の武器を振るう。


「ガァオッ!」


『…!』


虎は恐るべき速度で前腕を振るい、骸骨を捉えんと真っすぐに突撃する。対して骸骨はそれよりも速く前に出た。後方から見ていたソーニャからすれば、自ら虎に抱かれるように見えただろう。だがそれは殺す為の最善の手段。大きく屈んだ姿勢で頭骨を掠めるように爪が通り過ぎると同時に、低く下げた刀身を、体を起こすと同時に突きあげる。狙うは頸動の中心。脊椎動物なら絶対の急所となる首元に燃え盛る剣を突き刺した―!


「ギャン!」


一瞬の幕切れと思われたが、虎は首を貫かれる瞬間。全身を回転させた。それは一歩間違えば自ら頭部を貫く事になる危険な物だ。だがこの回避が功を奏し、切り裂かれ出血するも、即座に戦闘不能になることはなかった。間近で見た為焼け付いた目を覚ます為にも、大きく横に飛び、回復に専念する。いや、或いは矛先を転じたのかもしれない。そこにはスケルトンの急所となる存在、ソーニャを虎は視界に捉えることが出来た。


「ガルルルルル…」


直接この魔術師がスケルトンに関係あるかなど虎は分かりえない。だが、本能的に悟ったのか、目の前の脅威から背を向ける形でソーニャに襲い掛かった!




ヒュージタイガーがスケさんを無視し、直接こちらに突っ込んできた。いや、魔物ってそういうの分かるもんなのか!?割と動物の見た目してるから、そういう判断できないと思っていたが、全くの誤算だ!


「あ~ちくしょう!やっぱこうなるよな!よえー奴から狙うはどの世界でも常套手段だよなぁ!」


「ガァオッ!」


ヒュージタイガーの右首は焼け焦げた体毛と切り裂かれた切り傷で痛々しいが、そんな素振りを全く見せずこちらに突撃してくる。まさか前回ゴブリンさんから指摘された問題点を速攻で突かれるとは、何ともまあ、実戦とは厳しいもんだ。


自身の臀部に収めていた小刀を取り出す。いや、刀などと高尚な物ではない。この身丈では()()()()()()()を構え、深呼吸と共に念じ、唱えた―


「―起動(アウェイクン)―!」





ナイフの文様が怪しく光ると同時に、ヒュージタイガーの周囲を煙幕で覆う。虚を突かれたタイガーは委縮した。なにせ視界が死んでいる。いや、それだけではない。匂いや音も同時に掻き消えており、五感すべてを塞がれたのだ。立ち止まるのも無理はないだろう。無論長居などするはずもなく、脱出するべく体を動かす。だがこの時虎は忘れていた。自身が何に背を向けていたかを…


「スケさんっ!」


『…!』


ヒュージタイガーを捕らえた瞬間。スケさんに全力でバフを飛ばすと同時に、己では分かるヒュージタイガーの位置をスケさんに指示。全身から黒いオーラを纏わせながら、無骨な片手剣も勢いを増して燃えてゆく。全力で振るった剣は、煙幕を一瞬で払い、目を見開くヒュージタイガーの首を跳ね飛ばした―!


「おっしゃぁぁ!!ナイスー!」


『……』


身長差があるので、ぴょんと飛んでスケさんとハイタッチをする。なんというか、ようやく一人で勝利できたと実感し、戦闘を無事に終えることが出来たのである。



仕事が忙しかったり、体調崩して遅れました。申し訳ありません。次回はなるべく早めに投稿しますー

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