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召喚のみでやってきます!  作者: オスめこ
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魔術師の戦い方②



 窮地から一転。何とかゴブリンの彼と共に生き残ることができた戦闘後、散々頭を撫でていたルーナも、ようやく飽きたのか俺から離れ、彼が起きるまで暫く休憩となった。焚火場は戦闘の余波で荒れているので、適当に草原に尻をひくと、いい加減に限界が来たのか、徹夜明けの、何とも言い難い気分の悪さが湧き出てくる。


「ふうぅぅ~……」


「だいぶ眠たそうね。このゲーム、眠っちゃったら強制的に現実(あっち)に戻っちゃうから、寝る場所は安全な場所じゃないと危ないわよ」


「それは知ってます。前も一度、戦闘後に寝ちゃいましたので。その時はゴルさんがいたから、気づいたら次に起きた時には個室にいましたけど」


眠るとゲーム終了。少しレトロゲームのような仕様だ。自身の疲労具合では、遠征した際の野外のキャンプ等には相当に注意しないといけないだろう。眠ってしまいたいが、流石にこれ以上彼女に迷惑をかけるわけにもいかないので、息を整え、反吐が出そうな不快感を何とか抑え込む。


「ぬうう……これは……」


「ゴブリンさん!」


切実に目薬を欲していると、横になっていた彼がむくりと体を起こした。キョロキョロと辺りを見回したのち、目が合うと驚きと喜びがない交ぜになった表情で破顔した。その後ルーナを見つけると、何処か納得した様子で顔を再度綻ばせる。


「なるほど、貴方様が救援に来たのですね…感謝を。この御恩、如何様にも報いる所存ですが、先ずは状況の確認から。ルーナ様。戦端が開かれたのでしょうか?」


「現状はまだ不明。私も起きたばっかりだしね。ただ、ゴル爺とカスミナは山脈から来た偽竜と戦っているらしいわ。丁度こっちと反対だから、私もあなた達を支店に送ったら向かうつもりよ」


「なんと偽竜が!あのお二方が戦っているとなると、相当な規模のようですなぁ……此度の彼奴らの侵攻と関連性が有るのか、急ぎ確かめねばなりませぬな」



……2人が大真面目で会話をする中。彼が目を覚ました安心感のせいか、マジで眠気がヤバいことになってきた。まるで大人の会話が理解できず眠りこける子供のようで、酷く情けない気持ちでいっぱいになる。が、このコンディションでこれ以上無理などできない。幸い2人も此方の様子を汲み取ってくれたようで、会話を中断し、急いで村に戻ることとなった。



 村まで戻ったその後。ルーナは一息つく暇もなく外に飛び出していった。どうにもまだまだ暴れ足りないらしい。その表情は悲壮感などはなく、ただ戦闘を行えるという喜びに満ちていた。

怪我をしたはずのゴブリンさんも、浮袋を呷りその場にいたほかのゴブリンズに激を飛ばしている。どうやら気付けの酒のようで、甘さとアルコールが混じった匂いがこちらにも漂ってくる。


「と、訪問者どの。ご無事でございましたか。なんでも混沌に襲われたとか、無事に戻ることが出来て、わ、私も喜ばしいです。大変疲弊しているご様子ですので、今は休まれて下され」


「ええ、大変な時期に申し訳ないんですが、一足お先に休ませてもらいますね」


最初に出会ったと思わしきゴブリンさんがこちらの手を引いて居室に向かう。正直一人で行くと、通路で寝落ちしそうで助かった。今の俺が戦闘に向かったところで、足手まとい以外の何物でもないし、さっさと居室に移動する。偽竜とか呼ばれている、強そうな敵が現れているとのことで、背中を引かれる思いではあるも、ベッドに倒れ込むと、即座に意識が途切れていった―




ソーニャが眠りにつく少し前の事、受付嬢であるカスミナは、召喚した馬獣に騎乗し、山脈の麓に向かっていた。武装など美麗な杖一つのみだが、それを考慮しても通常の馬とはかけ離れた速度で疾走し、道なき道を止まることなく進んでゆく。


「あら」


カスミナが向かう途中、前方から眩い雷光と共に、大気を震わせる轟音が鳴り響く。轟音には生物らしき悲鳴もか細く混じっているあたり、どうにも何かが相当暴れているようだ。


「ちょっと……ここまできて無駄足だったなんて、勘弁してちょうだい」


一つぼやいたのち、再度馬獣を走らせる。風を切りいよいよ麓に近づくと、雷鳴と共に竜が墜落する光景が目の前に広がった。残った偽竜の数は3体。いずれもこの雷を生み出す戦士に恐怖しているのか、迂闊に飛び込むことなどせず、宙から隙を伺うように漂っている。


「ゴル。調子はどうかしら?手助けしようと思っていたけれど、必要ないみたいね」


「あん…?なんでい、お前さんこっちに来たのか。見りゃわかるだろ。こっちはもうカラ欠だよ。後はお前さんに任せるわ」


ゴル・ロック―ドワーフと人間の亜人(デミ・ヒューマン)である彼は、全身を蒼い鎧で武装しており、手には小さな、だが力強い装飾が施されている金槌を握りしめていた。蒼い電が威嚇するように小手に迸しり、彼女が到着した途端、乾きを癒すようにぐびりぐびりと酒で喉を潤してゆく。


「んぐっ……ぷはぁー!やはり戦闘後は酒に限る!」


「まだ戦闘中でしょうが。ホント、毎日飲んで飽きないものね」


「お前さんが来た時点で終わっとるわ。ほれ、久しぶりに見せてくれよ。≪焦熱≫の戦いぶり」


この異名が気に食わないのか、彼女は不満げにため息をつくと、杖を天に向け詠唱を始める。途端、彼女を中心とした、巨大な魔法陣が浮かび上がった。その色はマグマのように緋色に染まっており、地の底から湧き出たようだ。

当然偽竜達の目にも付くが、この魔法生物達は、野生化したとはいえかつては戦場における強力な駒の一つであり、どの敵が危険かなどは瞬時に判断が付く。先は数が勝っていたため、ゴル・ロックにも襲い掛かったが、それは数といずれ来るであろう疲労を算段にいれて仕掛けたのだ。多くの竜が殺され、新たな魔術師―それも同等の存在がやって来たのだ。もはや命をかけ戦闘を行う意味もないのだろう。


「ギャァァ!」


一匹が背を向け逃げると、後を追って他2体も翼を翻す。だが、もはや遅かった。天空という人ではたどり着けぬ境地であっても、魔術師であれば関係はない。特にこの魔女であれば―


「イグニション・ヘルロケート」


淡々と無機質に呪文を唱える。それは彼女にとって造作もないことなのだろう。だがここにソーニャがいれば先の比ではない光景に度肝を抜かれていたに違いない。

それは現代でいう機関砲のような兵器を、巨大な亀の甲羅に乗せていた。その亀もまた、地獄の悪鬼の如し風貌であり、竜を睨みつける。


―堕とせ―


魔女の呟きと共に、亀が叫ぶ。まるで呪詛を叫ぶような咆哮と共に、燃え盛る槍が放たれ―




「はあ。ほんっと、無駄骨だったわね…」


「どんだけ着たくなかったんだお前…」


悲鳴をあげることすらできず、灰となって黄昏に消えた




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