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召喚のみでやってきます!  作者: オスめこ
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新人研修③



講義と加筆が終了して暫く。先ほど使った備品をゴブリンと協力して片付けていると、ふと疑問が沸き上がる。そういえば初日の悪臭が全くない。人間慣れというものがあり、臭い場所や部屋に長時間いると鼻がマヒしてしまうが、慣れにしては早すぎるだろう。


「あの、ゴブリンさん。この酒場、最初滅茶苦茶臭かったんですけど、匂い消えてません?もしかして一過性の物だったんですかね?」


「ほ、訪問者どの。鍋はこちらに置いて、そちらのリベの葉を撒いてください…そう、そうです。匂いですか?申し訳ありませんが、我ら元より匂いには鈍感なもので、あ、悪臭とは感じませんな。カスミナ様に聞いて見て下され。後は私がやりますので、ご心配なく」


「ありがとうございます。そういえばお名前は何と言うのでしょう。私は、たぶんソーニャって名前です。はい」


「おや、おや、ご自分の名前に自信がないとは。不思議な方ですな。申し遅れを。我らは『ゴブリンズ』。個体個体の名前は存在しない、カスミナ様の契約使い魔でございますよ」


使い魔!ということはこの人達は召喚で生まれた存在という訳なのだろうか。こうして対面で話し合えるとなると、益々今後の召喚が楽しみになってくるが、契約という部分が引っかかる。


「おおー!ということは召喚呪文で出現した存在ってことでしょうか?契約という部分はなんですか?」


「はい、使い魔というのは、生前を模した、あ、或いは英雄譚などに出てくる魔性を呼びだし、行使するもので、本来であれば今現在を生きている生物ではございません。ですが、我らのように今生きる生物でも、魔術師が対価を支払い、み、見返りに労働に準ずると契約することで、何処に居ても魔法で呼び出す事が出来るのです。本来であれば我らは遥か遠方におりますが、契約期間中はこちらで働かせてもらっているのですよ」


「なるほど…つまり魔物たちとも契約できれば召喚できるということですね。いやぁー夢広がるなー!」


やばい。めちゃめちゃテンション上がる。こうなるとなぜ彼らがここで働いているのかも知りたいし、何ならまるで分っていないこの世界の事と色々聞きたいところだが、会話を続けようとするとまったを掛けられてしまった。


「ああ、訪問者どの!私も会話を楽しみたいところですが、カスミナ様がお待ちです!そ、そんな興味そうに見つめてもおしゃべりはダメなのです!」


振り返ると受付さんが笑顔でこちらを見ている。笑顔なのだが、ありゃ完全に注意する一歩手前の上司の表情だ。ここで俺と引き続き雑談を楽しみ、笑いあうような事をゴブリンがしたら、理不尽な全体責任を押し付けるに違いない。ここまで良くしてくれたこの人にも可哀そうなので、一礼し受付さんのところに戻る。


「えーっと…片付けはやってくれるそうなので、準備完了しました!何時でもテストできます!」


「はい。お疲れさまでした。私共も準備がございますので、暫くお待ちくださいね」


…表情は変わらないが、なぜかこちらをじっと見つめてくる。余程会話をしていたのが気に食わなかったのだろうか。次第にはなぜか物悲しい顔になり、とても罪悪感が湧き出てきたぞ。


「……聞いてくれないのでしょうか…」


「え?…あっ!」


そうだ匂いだよ。さっきの召喚云々で頭からポンと飛んでしまった。慌てて聞いて見ると、表情が蘇り楽しそうに話しだした。


「こちらの支店なのですが、普通、魔力が体内に備わっている方以外には認識することが出来ません。ですが、酒精がいたずらをしてしまい、迷い込んでしまう方が時折来てしまうのです。そちらの目を覚ますためにあのような匂いが発生するのです!」


「はい先生!私は認識できて入ったのに、なぜ匂いがしたのでしょうか?」


「それはですね―」


曰く、この世界には2種類の魔法使いがいる。一つ目は神や精霊などから祝福や寵愛を賜って生まれてきた生命。こういった生命は正しく≪お気に入り≫の為、神託などで宣言され、周囲の人々に知らしめるそうな。そうした生物の魔法の会得や理解の速度は凄まじく、また魔石が体内にあり、自然と魔法を使っているため、匂いを出す判断をする魔術具は発動しないらしい。

だが2つ目の外からやって来た訪問者―即ちプレイヤーは魔法を発動するまで魔石が出来ないらしく、施設の認識は出来るのに、魔法は使えないと判断、つまり先の酔っ払いと同様の扱いを受け、悪臭を鼻に突っ込まれるのだとか。ということは、この世界にきて初っ端から魔法を発動するような阿呆者以外はチュートリアルで悪臭を嗅がされるのかよ。制作陣中々頭いかれてやがる。


そうして再度講義を受けていると、皮鎧を身に着け、帯槍したゴブリンがやって来た。黒いフードを被り、如何にも前衛といった風貌だ。小柄ながらも所々から覗かせる素肌にはがっしりとした筋肉が覗かせている。顔は違いがあるのだろうか。正直見分けがつかない。何となく先ほどの方とは違って見えた。


「お待たせして申し訳ありません。準備の方終えましたので、何時でも出立可能です。カスミナ様。ソーニャ様」


「あら、頭を下げる必要はないわよ。時間通りに来ているのだもの。全くゴルにも爪を煎じて飲ませたいくらいだわ…さて、では【ソーニャ】さん。これよりこちらのゴブリンと訓練を行ってもらいます」


―まあ凡そ予測は付いていたが、この人が今回戦う方らしい。2人で再度、村はずれまで行くことになった。




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