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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
739/740

739 人物相関

「今日はハッキリさせますよぉ~!」

「張り切ってるね」

 

 仕事終わりの4姉妹が住み家に遊びに来て、夕食後にお茶をすすっていたらアニカが仕切りだした。

 ウォルトはなんのことやらわからず、自分に関係ありそうだということだけ薄ら気付いている。


「なんとっ!今日はぁ~……ウォルトさんの人物相関図を完成させます!!」

「面白くないよ?」


 あっという間に完成する。


「ちっちっ!甘いです!ウォルトさんは、昔と違って交友関係が広がってます!この辺で1回整理しておかないと、私達も油断できないので!」

「広がってはいるけど、皆ほどじゃないと思うなぁ」

「ウォルトさん…。消極的な発言は浮気とみなしますからね…?」


 付き合ってもいないのに…?浮気の概念とは…?

 

「まず~、私達が知っている関係図は書いてきました!」


 ドーン!とテーブルに置かれる。目を通して間違っている箇所はない。


「合ってるよ」


 家族関係から4姉妹を筆頭にした友人関係まで網羅されていて、ほぼ完璧だと思う。


「4人で情報を共有してますから!」

「もう終わりだね」

「そんなワケないでしょう!今からこの図に枝葉を付けていくんです!消極的な態度には、注意1つを与えます!」


 注意が累積されると…なにが起こるか怖いな。


「まず~、家族から広がる関係はありますか?!この図に載ってないような!」


 両親と祖父母、アルクスさんは載ってる。


「ないよ」

「ちなみに、ストレイさんの家族の話はあまり聞かないんですが!」

「父さんの両親は、亡くなってるんだ。兄弟もいないはずだよ」


 母さんからそう聞いてる。だから会ったことはない。いるとしたら、遠い血縁だけ。


「獣人は、兄弟いないこと多いよね。直ぐ別れるからなんだけどさ」


 サマラの言葉通り、片方の親が違う兄弟は沢山いる。後腐れがない獣人の夫婦は、死ぬまで二度と会わないことも多い。


「じゃあ~、家族はこのくらいですね!次に…トゥミエ関連はどうですか?」

「サマラの家族とヨーキー、ハルケ先生達やガレオさんも入ってるから…終わりかな?トゥミエじゃないけど、ガレオさんの元恋人も知り合いだね」

「シャルロッテさんですね!忘れてました!」


 アニカが書き込んで、ちょっと図が広がった。シャルロッテさんのことは、人妻と遊んでいるという疑いをかけられたときに説明済み。


「次は~、フクーベいきましょうか!」


 ラットやビスコさん、ランパードさん、キャロル姉さんやメリルさん、衛兵のボリスさんやアニマーレの店員まで載ってる。花街関係も何人か。


「…ちょっとだけ足りないかな」

「なんですとっ?!教えて下さい!」

「薬師のバロウズさんやアラガネさん、あと大工のゲンゾウさん、記者のツァイトさんとか…」


 あまり話題に上ることがない人達のことは載ってない。アニカが書き足していく。


「新聞記者と知り合いなのは意外です!天敵っぽいのに!」

「事件を追っていて、ボクがサバトだって気付いたらしいよ」


 最近はシガネさんとも交流してる。でも、暗部のことは言えないな。

 

「ふむふむ…。やっぱりフクーベは多い…。冒険者もいますよね」

「スザクさんやハルトさん、マルソーさんくらいだけどね。あと、マルコとメリッサさんか」

「メリッサさんて、ゆるふわ美人で治癒師のっ?!要注意!マークしないとっ!」


 言ってもいいのかな?


「マルコの恋人だよ」

「だとしても、人は心変わりするのが常ですから!」

「全然会ってないのに。孤児院のシスターマリアなんかと同じで」

「忘れてたぁ~!!シスターマリアもいたぁ~!抜けあるぅ~!」


 忘れてたなら書き足さなくていいような…。孤児院だけの交流だし。

 

「掘ればまだ出そうです!…が、このくらいにしておきましょう。嘘は吐いてませんね?」

「吐く必要がない」

「では、次に王都で交流してる人達を教えて下さい!」


 相関図を見ると、リスティアを始め、テラさんやアイリスさん、ボバンさん、ダナンさん達先人のことは書かれてる。宮廷魔導師のクウジさんもだ。


「王都での交流は、正直知りません!だから詳しく教えて下さい!」

「抜けてるのは…役者のアンジェさん、飛脚のボルトさん、貴族のボクフォレスさん達かな」

「貴族と交流してるんですか?!」

「ひょんなことからね。元々は孫のアーツと友達になったんだけど、後から当主と友人になった。あと、宮廷魔導師のロベルトさんと面識だけあるよ」

「ロベルトさん…。確か、王都の冒険者ギルド魔導師部門にいた人じゃ…」

「そう言ってたね」

「ありがとうございまっす!面白すぎ!」


 アニカは楽しそうに書き足していく。


「ウォルトって、やっぱり言ってないこと多いね~」

「自分からは言いませんよね」

「兄ちゃんに「最近なにかあった?」って訊いても、出来事が多すぎて抜けてるんですよ」

「ボクの話をするより、皆の話を聞いたほうが楽しいから」


 平凡な日常の話をしてもつまらないはず。


「ん~~、よし!王都はまだまだ交友関係が広がる可能性ありですね!」

「滅多に行かないから、ないんじゃないかな」

「…あっ!そういえば、S級冒険者のアルビニさんも知ってますよね!」

「そうだね。忘れてた」

「ホントですかぁ~?怪しいなぁ~?」

「ボクが嘘を吐いたらわかるよね?」

「でっす!」


 会うこともないからすっかり忘れてた。元気だろうか。


「王都の次は…その他の町とか村の人です!」


 作家のブライトさんや、大魔導師アニェーゼさん達、スケさん達やリリサイドの名前も書かれてる。


「クローセの皆はいいの?」

「私達の方がよく知ってる人達は、書かなくてオッケーです!」

「タマノーラの人達とか、キャミィやドワーフの師匠達がいるね」

「なるほどぉ~!詳しくお願いします!」

 

 フォルランさん、フレイさんの兄弟とコンゴウさん達ドワーフについて簡単に説明する。キャミィとは交流してるからいいらしい。


「キャミィに会いたいですね~!」

「この間、久しぶりに来たよ。次は連絡しようか」 

「お願いします!キャミィは私達の妹なので!」


 人生では大先輩だけど。


「キャミィは滅多に大人にならないみたいですし、年齢からするとウォルトさんは孫みたいな感覚でしょうね!」

「そうかもしれない」

「反応がおかしいですね…?そうかも…?」

「別におかしくないと思う」


「子供を授けてくれ」って言われたことは黙っておこう。変に疑われそうだ。


「はぁ~っ?!なんですかそれっ?!求愛されてるじゃないですかっ!!」

「違っ…!」


 表情から心を読み切られたのか?!


「怪しい…。なにか困るような、でも嫌ではないことを言われましたね…?」

「まぁ…そうだね」

「…追求するのはやめておきます!愛の告白ではないようなので!」


 読みが鋭すぎる…。内容は言わないでおこう。キャミィに悪気はない。


 あと、ボクが何度か会ったことがある人のことを教える。外国では、グレゴリーさんやステファニアさんか。相関図に書くほどではない気もするけど。


「ステファニアって、噂の大聖女ですよね!?びっくりするくらい凄い治癒師って噂だけ知ってます!」

「ウォルトさんと縁があるなら会ってみたいね」

「今度会うことがあったら、確認して2人に連絡するよ」


 アニカとウイカは学ぶことがあるかもしれない。操るのが魔法じゃなくても、知識を学べる。


「聖女って「うふふふっ」「おほほほっ」って高貴な感じで笑うイメージです!」 

「ステファニアさんは全然違うよ。「ですわ~!」って元気一杯なんだ。アニカやサマラみたいに」


 そういえば、聖女ってどんな人を指す言葉なんだろう?教会所属なら誰でも聖女なのか?


「ウォルトさんの好きなタイプですね!よ~しよし!」


 よし?


「他にはぁ~、ネネさんと知り合いだから、きっと暗部とも交流してますよね!その辺はあえて訊きません!」

「………」


 バレてた。そして助かる。


「王女から英霊、元始末屋まで本当に幅広く交流してますねぇ~」

「ウォルトは普通って思ってるんだろうけど違うから!」

「まず出会えない人達です」

「サバトが目立ってなければ違ったんですかね?でも、兄ちゃんなら時間の問題だった気がする」

「ボクならってどういう意味?」

「兄ちゃんは、獣人の魔法使いでしょ。珍しいモノって、噂が広まるのが早くて、情報が集まる気がする。人も沢山絡んでくるよね」

「そうかな?」


 人でもモノでも、珍しいと興味を惹かれる気がしなくはない。


「…できましたぁ!完成でっす!」

「お疲れさま」

「とりあえず、現時点での相関図ができました!協力してくれてありがとうございます!」

「役に立たない情報だけど」

「そんなことないですよ!知り合いってわかってると、対応が違います!たとえば、怪我や病気してるって伝えられたり!」

「なるほど。教えてもらえると助かるよ」


 気遣いが嬉しいなぁ。


「アニカ、やっぱ結構いたって…」

「老若女いました…」

「ある意味予想通りだったね…」

「まだまだ増えるよ、きっと…」

「私が勝ちますけどね…」

「モンチャには関係なし…と」

「アニカさん…?」


 ヒソヒソ話も丸聞こえだけど、『男』が抜けてるよ、なんてツッコむような話でもなさそう。


「自分の交友関係なんて気にされたことなかったから、結構楽しかった」

「でも、私達が最も交流してますから!間違いなく!」

「そうだね」

「…忘れてたぁ~!まだありました!」

「他にあるの?」

「ペニーやシーダみたいに、人族以外との交流もあったりします?」

「あぁ~…」


 蟲人や精霊達と交流してるけど、言っていいのかな…。


「困ってますね!女性だけでいいですよ!」

「女性……はいないね…」


 世界樹さんとかに性別はなさそうだし、蟲人には口止めされてる。


「人族以外では、リリサイドとカリーだけ…と」


 きっと他にいることもバレてる。察して訊かないでくれてるんだろうな。


「では、ウォルトさんから私達に訊きたいことはありませんか!?なんでも答えますよ!」

「なんでも…。じゃあ、皆の交友関係を訊いてもいいかい?」

「もちろんです!」


 普段どんな人達と交流しているのか気になる。


 4人の話は新鮮で、知らないことばかりだと実感したけど、聴きながら1つ気になったことが…。


「今、初めて知ったよ~」

「ダウトって人、皆に絡んでたんだね」

「怪しすぎ!」

「ダイホウにも来たってことは、無関係じゃないですね」


 最近、1人の男が4姉妹に接触を図ってることが判明した。自然を装っている風で、かなり不自然だったらしいから、名前や風貌も偽っている可能性がある。バレる前提で行動してるんだろう。

 男はやんわりサバトの話題を持ち出したらしい。皆は興味ないような返答で適当にあしらったみたいだ。


「店だったけど、殴っとけばよかった」

「ありそうですね。今思えば私には興味ないって感じでした」

「また来たら、捕まえて吐かせる!」

「ちょっと気味悪い奴でしたよね」

「ボクのことを探ってるとしたら、おかしな奴かもしれない。なにかあったら直ぐにコレを…」


 作り置いていた魔道具を皆に渡す。使い方は簡単。


「心配性だね~」

「お願いだから持っててくれ」


 あまり詳しく言いたくないけど、ちゃんと伝えよう。


「ボクはあちこちで恨みを買ってるんだ。プリシオンに呪いをばら撒いたり、ハーグランドで脱獄したり、アヴェステノウルでショボい権力者を狂わせたりしてる」


 4姉妹に血生臭い話を聞かせたくなかった。でも、報復に来た奴が数人いて、皆が標的にされる可能性もあり得る。だから、ボクがやったことを伝えよう。


 皆は静かに聞いてくれた。


「あははっ!結構やらかしてるじゃん!」

「隣国の組織を返り討ちですか」

「脱獄は痛快でしたか!見たかったなぁ!」

「自分からはちょっかい出してないんでしょ?」


 至って冷静な返答で緊張感がない。ドン引かれる覚悟で言ったから拍子抜け。


「とにかく持っててくれないか?小さいから邪魔にならない」

「わかった。私はもらったネックレスに付けようかな」

「いいですね」

「そうしましょう!」

「合いそうです」


 全員が胸元から取り出したネックレスの鎖に通してくれた。身に着けてくれて嬉しいな。


「ありがとう」

「お礼を言うのはこっちだって。いつも気にしてくれてありがとね!」

「いや…」


 こうやって気を揉ませるくらいなら、いっそ誰とも交流しないほうがいいのかな…。


「あのさぁ、いい加減にしてよ!」

「私達は理解したうえで付き合ってます」

「ウォルトさんは守ってくれようと努力してるじゃないですか!」

「兄ちゃんの好きにやればいいよ。恨まれるのがいいとは言わないけど」


 理解がありすぎる。


「大体さぁ、誰だって危険なことに巻き込まれる可能性はあるじゃん。言い出したらキリないって」

「まぁ、そうなんだけど」

「やり返してるだけでしょ?自分から仕掛けたなら反省する必要あるけどさ、向こうが勝手に来るからやり返さなきゃしょうがないじゃん」

「脱獄はこっちから仕掛けてる」

「はいはい。気にするなら根切りしてきなさいよ!中途半端が1番よくない!」


 サマラの言う通りだな。獣人らしく、やるなら徹底的に。


「普通に生きてるだけで恨まれることもあるんだから、いちいち気にしないの!困ったら直ぐに言うから助けて!」

「わかったよ」


 とりあえず、その男が本当にサバトを嗅ぎ回っているのかを確認してみよう。場合によってはこちらから接触する。


 キャロル姉さんを頼ろう。

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