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レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


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世界の外へ

――《第七世界――生成開始》


その文字が空に浮かんだ瞬間。


世界が、止まった。


風が止まる。


雲が止まる。


鳥も、人も。


すべてが動きを失った。


直人だけが動けた。


「……また、世界が……」


天音が周囲を見る。


「違う」


直人は首を振った。


「今回は……世界が止まったんじゃない」


「え?」


「時間そのものが、止まってる」


その瞬間。


謎の少年が歩き出した。


止まった世界の中を。


まるで時間など存在していないかのように。


少年は直人たちの前まで来ると、静かに頭を下げた。


「初めまして」


「……お前は誰だ?」


「僕?」


少年は笑った。


「名前はないよ」


「名前がない?」


「世界の中で生まれた存在じゃないから」


直人は警戒した。


「じゃあ、どこから来た?」


少年は空を指差した。


「向こう」


「……向こう?」


「世界の外」


その言葉に。


観測者の少年が顔を強張らせた。


「ありえない」


「何が?」


「世界の外には、何もない」


謎の少年は首を横に振る。


「違うよ」


「……」


「何もないんじゃない」


少年の目が、黒く光った。


「――まだ、世界になっていないだけだ」


直人の背後で。


原初の子が震えた。


「……世界の外側」


小さな声だった。


「そこには……『始まる前』がある」


謎の少年が微笑む。


「そう」


そして。


少年は直人に手を伸ばした。


「だから僕は、そこへ帰りたい」


直人はその手を見つめる。


「帰る?」


「うん」


「お前は、世界の外で生まれたのか?」


「正確には――」


少年は少し考えてから言った。


「世界が生まれる直前に、取り残された」


その瞬間。


直人の頭の中に。


一つの記憶が流れ込んできた。


何もない場所。


時間もない。


空間もない。


ただ一人。


そこに――


幼い直人がいた。


「……俺?」


直人は息を呑んだ。


少年も同じ映像を見ている。


「そう」


「じゃあ……お前は……」


少年が答える。


「君が最初に見たもの」


「……何を?」


「世界」


直人の目が見開かれる。


少年は笑った。


「君が最初に『誰かと一緒にいたい』と思ったとき」


「……」


「その願いが世界になった」


「うん」


「でも」


少年の表情が変わる。


「世界になることができなかった願いもあった」


――ズン。


世界全体が揺れた。


止まっていた時間が、わずかに動く。


少年は続ける。


「僕は、その願い」


「……」


「『世界を作る前に、世界を見ていたい』という願いから生まれた」


観測者の少年が呟く。


「……観測者」


謎の少年は彼を見る。


「君とは違う」


「何が違う?」


「君は世界の中から生まれた観測者」


少年は自分の胸を指す。


「僕は、世界が生まれる前から見ていた観測者」


直人は言葉を失った。


二人の「観測者」。


一人は世界の中。


もう一人は世界の外。


そして――


その二人が、今初めて向き合っていた。


「じゃあ……」


観測者が尋ねる。


「お前は、ずっと世界を見ていたのか?」


「うん」


「全部?」


「全部」


「第一世界も?」


「見ていた」


「第二世界も?」


「見ていた」


「第五世界も?」


「もちろん」


観測者の少年は拳を握った。


「なら……なぜ助けなかった?」


謎の少年は答えなかった。


長い沈黙のあと。


「僕には、触れられなかったから」


「……」


「世界の中へ入ることができなかった」


少年は自分の手を見る。


「僕は、見ることしかできなかった」


直人は、その言葉に引っかかった。


「だから……」


少年を見る。


「第七世界を作るのか?」


「そう」


「何のために?」


少年は笑った。


「僕が、初めて世界に触れるため」


――その瞬間。


空が割れた。


しかし。


今までとは違う。


空が割れたのではない。


空の「向こう側」が見えた。


そこには――


何もなかった。


ただ、無限に続く白。


そして。


その白い空間の中央に。


一つの巨大な扉があった。


扉には文字が刻まれている。


《世界の外》


天音が呟いた。


「……あれを開けるの?」


少年は頷いた。


「そう」


「開けたらどうなる?」


少年は少しだけ笑った。


「分からない」


「分からない?」


「だって」


少年は直人を見る。


「誰も、開けたことがないから」


直人は扉を見る。


不思議だった。


恐怖はある。


だが。


それ以上に――


懐かしさを感じていた。


初めて見るはずなのに。


ずっと前から知っている。


そんな感覚。


天音が直人の手を握った。


「直人」


「ん?」


「行くんでしょ?」


直人は天音を見る。


「……怖くないのか?」


「怖いよ」


天音は笑った。


「でも、一人じゃないから」


その言葉に。


直人も笑った。


「そうだな」


ミオがため息をつく。


「二人とも、行く前提なのね」


「ミオは?」


「当然行く」


未来ミオも続く。


「私も」


観測者も頷いた。


「僕も行く」


原初の子が手を上げる。


「ぼくも!」


最後に。


謎の少年が扉の前に立った。


そして。


ゆっくりと手を伸ばす。


――カチッ。


鍵が外れる音がした。


直人たちは息を止める。


扉が――


開く。


その向こうには。


世界がなかった。


星も。


空も。


地面も。


時間も。


ただ。


一つだけ存在していた。


巨大な「本」。


空間の中央に浮かぶ。


無数のページを持つ本。


その表紙には――


《世界の書き換え方》


と書かれていた。


直人の顔が凍る。


「……あれは」


見覚えがある。


白髪の直人が持っていた本と同じ。


だが。


こちらの本には――


《完全版》


の文字がない。


代わりに。


一つだけ、別の文字があった。


《原本》


直人の背後で。


白髪の直人の声が響いた。


「……やはり、ここだったか」


直人が振り返る。


そこには。


白髪の直人が立っていた。


「どうしてここに?」


白髪の直人は答える。


「私は第六世界から出られないと思っていた」


「じゃあ……」


「違う」


白髪の直人は首を横に振る。


「私もまた――」


原本を見る。


「世界の外へ捨てられた存在だった」


直人の胸がざわつく。


「捨てられた?」


「そうだ」


白髪の直人は静かに言った。


「お前が世界を作ったとき」


「……」


「お前は一つだけ、自分から切り離した」


直人は息を呑む。


「何を?」


白髪の直人は答えた。


「『終わり』だ」


――ズン。


世界の外が震えた。


原本のページが勝手にめくれていく。


一ページ。


二ページ。


三ページ。


そこに書かれていたのは――


すべての世界の誕生。


そして。


すべての世界の終わり。


第一世界。


第二世界。


第三世界。


第四世界。


第五世界。


第六世界。


そして――


第七世界。


しかし。


第七世界のページだけは。


真っ白だった。


直人が呟く。


「……何も書かれてない」


白髪の直人が言う。


「当たり前だ」


「なぜ?」


「第七世界は――」


原本のページに。


一文字だけ浮かび上がった。


《終》


直人の表情が変わる。


「……終?」


白髪の直人は目を閉じた。


「第七世界は、世界の終わりを決めるための世界だ」


天音が叫ぶ。


「じゃあ……」


「そう」


白髪の直人が答える。


「ここで初めて――」


原本が大きく開く。


「世界は、自分自身に『終わるか、生き続けるか』を問いかける」


その瞬間。


原本の中から。


巨大な黒い手が伸びた。


直人たちへ向かって――


ゆっくりと迫ってくる。


謎の少年が叫ぶ。


「逃げて!」


だが。


遅かった。


黒い手が直人の身体を掴む。


「うっ……!」


天音が直人の腕を掴む。


「直人!」


ミオも。


未来ミオも。


観測者も。


全員が直人を掴む。


しかし。


黒い手は、さらに強く引っ張る。


直人の身体が。


世界の外へ引きずり込まれていく。


「離せ!」


天音が叫ぶ。


「絶対に離さない!」


「天音!」


「嫌!」


天音は涙を浮かべながら叫んだ。


「もう……何度も失ったから!」


直人はその言葉を聞いた。


そして。


笑った。


「……だったら」


直人は天音の手を強く握る。


「今度は、俺が離さない」


――その瞬間。


原本のページに。


新しい文字が刻まれた。


《主人公――佐伯直人》


続いて。


《同行者――天音》


《同行者――ミオ》


《同行者――未来ミオ》


《同行者――観測者》


《同行者――原初の子》


そして最後に。


誰も知らない名前が刻まれた。


《終焉――???》


直人は、その文字を見た。


「……終焉?」


その瞬間。


黒い手の向こうから。


声が聞こえた。


低く。


静かで。


どこか悲しい声。


『やっと来た』


直人は息を止めた。


『ずっと待っていた』


『私を――』


『終わらせる者を』


黒い手の奥。


そこに。


誰かが立っていた。


白い髪。


黒い瞳。


そして――


直人と同じ顔。


直人は、呆然と呟いた。


「……俺?」


その存在が笑った。


『違う』


そして。


世界の外側から。


最後の言葉が響いた。


『私は――』


『お前が最後まで認めなかった、お前自身だ』


――第七世界。


世界の終わりを決める世界。


そこで。


直人はついに――


自分自身の「終わり」と向き合うことになる。

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