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レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


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56/61

「第五世界の創造者」

 ――「今度は、私が世界を作る番だ」


 空から響いた声。


 その瞬間。


 第四世界の空が、ゆっくりと暗くなっていった。


 太陽が消える。


 雲が消える。


 青空そのものが――


 まるで誰かに塗り潰されるように、黒へ変わっていく。


「……来る」


 ミオが呟いた。


 直人は赤ん坊を抱き上げる。


「誰が?」


「分からない」


「でも……」


 ミオは空を見つめる。


「この世界の外から来る」


 天音が直人の隣に立った。


「世界の外?」


「うん」


「そんな場所があるの?」


「今まではなかった」


 ミオが答える。


「でも、第五世界が生まれた瞬間に――」


 空に亀裂が入る。


「外側ができた」


 ――ズズズズズ……。


 亀裂が広がる。


 そして。


 一人の男が姿を現した。


 白い服。


 黒い髪。


 穏やかな表情。


 しかし。


 直人はその顔を見た瞬間。


 息を止めた。


「……お前」


 天音も驚いている。


「知ってるの?」


「……いや」


 直人は首を振る。


「知らない」


 なのに。


 なぜか知っている。


 ずっと昔から。


 この男を知っている気がする。


 男は地上へ降りる。


 そして。


 赤ん坊を見る。


「やっと見つけた」


 赤ん坊が男を見る。


 笑う。


「……おとうさん」


 男の表情が崩れた。


「そう」


「私が君の父親だ」


 直人が前へ出る。


「待て」


「何だ?」


「この子に何をした?」


「何もしていない」


「じゃあ、なぜ父親なんだ?」


 男は直人を見る。


「君には分からない」


「分からないなら説明しろ」


 男は微笑んだ。


「私は――」


 胸に手を当てる。


「この世界の未来だ」


「……未来?」


「正確には、第五世界が完成した先に存在する人間」


 ミオが青ざめる。


「未来から来た……?」


「違う」


 男は首を振る。


「未来から来たのではない」


 空を指差す。


「未来そのものが、人の形になった」


 直人は言葉を失う。


「第五世界は、まだ存在していない」


「そう」


「なのに、お前がいる?」


「だからこそ」


 男は答える。


「私は第五世界が生まれるために必要な存在だ」


 天音が叫ぶ。


「じゃあ、第五世界を作ればあなたが生まれるの?」


「逆だ」


 男が笑う。


「私が存在するから――」


 空に巨大な文字が浮かぶ。


《第五世界――生成開始》


「第五世界が生まれる」


 直人は赤ん坊を見る。


「……この子は?」


「鍵だ」


「何の?」


「世界を始めるための」


 男が手を伸ばす。


 すると。


 赤ん坊の身体が光り始めた。


「やめろ!」


 直人が走る。


 だが。


 見えない壁に弾き飛ばされた。


「直人!」


 天音が駆け寄る。


「大丈夫?」


「ああ……」


 直人は立ち上がる。


 男は赤ん坊を見つめたまま言った。


「この子には、すべての世界の記憶がある」


「だから、第五世界を作れる」


「でも――」


 ミオが言う。


「この子は、まだ赤ちゃんだよ」


「だからいい」


 男は答えた。


「何も知らない」


「何にも染まっていない」


「だからこそ――」


 赤ん坊の瞳が黒く光る。


「新しい世界を選べる」


 直人は拳を握る。


「……その世界で、何をするつもりだ?」


「平和にする」


「何?」


「争いもない」


「死もない」


「病気もない」


「悲しみもない」


 天音が眉を寄せる。


「……それは」


 直人が言葉を続ける。


「第一世界と同じだ」


 男は笑う。


「そう」


「だから失敗する」


「しない」


「なぜ?」


「今回は――」


 男が直人を見る。


「私がすべてを管理するからだ。」


 その言葉を聞いた瞬間。


 直人の中に、嫌な記憶が蘇った。


 世界を管理する。


 命を管理する。


 選択を管理する。


 そして。


 自由を奪う。


「……そんな世界」


 直人が立ち上がる。


「絶対に作らせない」


 男の笑顔が消える。


「君には止められない」


「やってみろ」


「君はすでに創造主ではない」


「知ってる」


「なら、なぜ戦う?」


 直人は天音を見る。


 ミオを見る。


 そして。


 赤ん坊を見る。


「創造主じゃなくても――」


 一歩。


「父親じゃなくても――」


 もう一歩。


「神じゃなくても――」


 男の前へ進む。


「守ることはできる」


 男の目が細くなる。


「……君は、また同じことをする」


「違う」


 直人は首を振る。


「昔の俺は、世界を守ろうとした」


「今の俺は――」


 天音の手を握る。


「この子が自分で生きられる未来を守る」


 天音が頷く。


「私も一緒に戦う」


 ミオも立つ。


「私も」


 少年も拳を握る。


「俺もだ」


 男は四人を見る。


 そして。


 小さく笑った。


「……ならば、見せてみろ」


 男が手を上げる。


 空が裂けた。


 その向こうから――


 無数の黒い扉が現れる。


「第五世界を作るためには、四つの世界をもう一度繋ぐ必要がある」


 第一世界。


 第二世界。


 第三世界。


 境界世界。


 すべての扉が開く。


「そして――」


 男の背後に。


 巨大な黒い門が現れた。


「その中心にあるのが――」


 門の表面に。


 一つの名前が浮かぶ。


 《直人》


 直人の顔が凍る。


「……俺?」


「そう」


 男が言う。


「第五世界を作る最後の材料は――」


 直人の胸が突然光り始める。


「君自身だ」


 ――ドクン。


 心臓が大きく鳴った。


 直人の身体から。


 無数の光が抜けていく。


 第一世界の記憶。


 第二世界の記憶。


 第三世界の記憶。


 境界世界の記憶。


 そして。


 まだ知らない記憶。


「やめろ!」


 天音が直人を抱きしめる。


 しかし。


 光は止まらない。


「直人!」


「天音……」


「離さない!」


「……ありがとう」


 直人は笑った。


「でも――」


 直人の身体が光に包まれる。


「俺を材料にするなら……」


 光の中で。


 直人の目が開く。


「俺が自分で選ぶ」


 その瞬間。


 第五世界の生成率が急上昇する。


《0.01%》


《1%》


《10%》


《50%》


 そして。


《99%》


 男の顔から笑みが消える。


「……何?」


 最後の一%だけが。


 どうしても進まない。


《第五世界――生成停止》


《原因――》


《創造主の意思が不一致》


 直人は光の中から現れた。


 そして。


 男を見つめる。


「俺は――」


 ゆっくり拳を握る。


「お前の世界にはならない」


 男の表情が初めて崩れた。


「ならば――」


 男の身体から黒い光が噴き出す。


「君を消すしかない」


 直人の前に。


 一つの黒い刃が現れる。


 天音が叫ぶ。


「直人!」


 刃が振り下ろされる。


 しかし。


 その刃を――


 赤ん坊が小さな手で掴んだ。


 ――パキン。


 黒い刃が砕けた。


 男が目を見開く。


「……なぜ」


 赤ん坊は笑った。


 そして。


 今までとは違う言葉を口にする。


「おとうさん」


 男が震える。


「……何だ?」


 赤ん坊は男ではなく。


 直人を指差した。


「このひと」


 小さな声。


「……おとうさん」


 直人が凍りつく。


「……俺?」


 天音も。


 ミオも。


 少年も。


 誰も言葉を発せない。


 赤ん坊は直人へ手を伸ばした。


「おとうさん……」


 そして。


 世界中に。


 新しい文字が浮かび上がる。


《第五世界》


《生成率――99%》


《創造主――直人》


《親――直人》


《世界意思――未確定》


 最後の一行だけが。


 何度も点滅していた。


《この世界は、誰のために生まれる?》


 直人は赤ん坊を見つめる。


 そして。


 静かに答えた。


「……この子のためじゃない」


 天音が振り返る。


「じゃあ、誰のため?」


 直人は空を見る。


「――ここにいる、全員のためだ」


 その瞬間。


 99%だった数字が――


 100%になった。


 世界が、産声を上げる。


 だが。


 その瞬間。


 空の向こうから。


 もう一つの声が響いた。


「――それは、私の世界でもある」


 直人が振り返る。


 そこに立っていたのは――


 もう一人の天音だった。


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