↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/61

「世界戦争」

 ――ここからが、本当の世界戦争だ。


 天音の父がそう告げた瞬間。


 無数の世界が、同時に開いた。


 空。


 大地。


 海。


 すべての境界が消えていく。


 直人たちが立っている世界に、別の世界の景色が重なった。


 炎に包まれた街。


 雪に覆われた街。


 誰も死なない世界。


 誰も生まれない世界。


 時間が逆向きに流れる世界。


 そして――


 何も存在しない、完全な無の世界。


「……これ全部」


 天音が息を呑む。


「世界なの?」


「ああ」


 父親が答える。


「私が作った世界だ」


 直人が睨みつける。


「一体、いくつある?」


「数えたことはない」


「……」


「お前たちが失敗するたびに、新しい世界を作った」


 直人の拳が震える。


「じゃあ、今まで俺たちがいた世界も……」


「その一つにすぎない」


「ふざけるな!」


 直人が叫ぶ。


「人の人生を何だと思ってる!」


「実験だ」


 父親は即答した。


「世界は実験だ」


「人間も」


「時間も」


「命も」


 その言葉を聞いた瞬間。


 天音が前へ出た。


「……お父さん」


「何だ?」


「私のことも?」


「もちろんだ」


 天音は拳を握る。


「私の人生も、全部実験だったの?」


「違う」


 父親は首を振る。


「君だけは違う」


「じゃあ、何なの?」


「理由だ」


 天音が目を見開く。


「世界を作った理由も」


「世界を壊した理由も」


「すべて君だ」


 天音は唇を噛んだ。


「……そんなの、嫌」


 その瞬間。


 直人が天音の前に立った。


「もういい」


 父親を見る。


「天音を理由にするな」


「……」


「天音は、世界を作る理由でも、壊す理由でもない」


 直人は言った。


「一人の人間だ」


 父親の表情が変わった。


「人間……」


「ああ」


「それだけで?」


「それだけでいい」


 直人の背後に、白い光が集まる。


 だが。


 以前のような世界書き換えの力ではない。


 もっと小さい。


 もっと弱い。


 それでも確かな光だった。


「俺はもう、世界を書き換えない」


 直人が拳を握る。


「世界を変えるんじゃない」


「人間が、自分で選ぶ」


 父親が笑う。


「それで世界戦争に勝てると思うのか?」


「勝つ必要なんてない」


「何?」


「終わらせる」


 直人が答えた。


「誰も勝たない」


「誰も負けない」


「ただ、誰も他人の世界を奪わない」


 ミオが静かに頷く。


「……それが境界世界の本当の意味」


 黒い月の欠片を持つ少年も、前へ出た。


「俺も協力する」


 父親が少年を見る。


「お前は旧世界の残骸だ」


「だから何だ」


「お前に未来はない」


「ある」


 少年は答えた。


「今から作る」


 父親の目が鋭くなる。


「ならば――」


 無数の世界が、一斉に動き出した。


 空間そのものが押し寄せてくる。


「お前たちの未来ごと消してやろう」


 ――轟音。


 世界が衝突した。


 直人は天音を抱き寄せる。


「走れ!」


「どこへ?」


「境界の中心!」


「ミオは?」


「俺たちを先に行かせる!」


「待って!」


 ミオが叫ぶ。


「私が残る!」


 直人が振り返る。


「何?」


「境界を開くには、誰かが中心に残らなきゃいけない」


「じゃあ俺が――」


「ダメ!」


 ミオは首を振った。


「直人は行って」


「でも!」


「あなたはもう、一人で世界を背負わなくていい」


 ミオは笑った。


「天音と一緒に行って」


 天音が首を振る。


「ミオ……」


「大丈夫」


「本当に?」


「うん」


 ミオは笑った。


「だって私は、あなたたちの記憶だから」


 その言葉と同時に。


 ミオの身体が光へ変わり始めた。


「ミオ!」


 直人が手を伸ばす。


「大丈夫だよ」


 ミオは最後に二人を見る。


「忘れてもいい」


「え?」


「今度は、忘れたっていい」


 そして。


「大切なものは、また見つけられるから」


 光が弾けた。


 境界の中心に、巨大な扉が開いた。


「行って!」


 直人と天音は走った。


 少年も続く。


 その背後で。


 無数の世界が崩壊していく。


 父親が叫んだ。


「止まれ!」


 直人は振り返らない。


「もう、お前の世界じゃない!」


 扉へ飛び込む。


 ――瞬間。


 世界が静かになった。


 直人たちが立っていたのは。


 何もない空間だった。


 上下もない。


 前も後ろもない。


 ただ。


 遠くに一つの小さな光がある。


「……あれは?」


 天音が呟く。


 少年が答える。


「世界の核だ」


「世界の……核?」


「あれを守れば、境界世界は完成する」


 直人が光へ近づく。


 しかし。


 光の前に立った瞬間。


 一つの映像が浮かんだ。


 そこに映っていたのは――


 ミオだった。


 幼いミオ。


 天音。


 そして若い直人。


 三人で笑っている。


 直人の目から涙が落ちた。


「……俺たち、本当に三人でいたんだな」


 天音も涙を流す。


「うん」


 しかし。


 映像の最後。


 ミオが何かを言っていた。


 声は聞こえない。


 直人は目を凝らす。


 そして。


 ようやく口の動きが読めた。


 ――「二人とも、ごめんね」


「……?」


 映像が消える。


 直人の胸に、不安が広がる。


「何を謝ってるんだ?」


 その瞬間。


 少年の左目が黒く光った。


「……まずい」


「どうした?」


「ミオは、何かを隠してる」


「何を?」


 少年は答えなかった。


 代わりに。


 世界の核から、声が響いた。


『――境界世界、起動条件を確認』


 直人が息を呑む。


『管理者不在』


『記憶管理者――消失』


『旧世界残存者――一名』


 少年の顔が強張る。


『新世界管理者――二名』


 直人と天音が顔を見合わせる。


 そして最後に。


『世界統合を開始します』


 世界の核が、大きく脈打った。


 ――ドクン。


 ――ドクン。


 直人の足元に、黒い亀裂が走る。


「……何だ、これ」


 天音が叫ぶ。


「直人!」


 亀裂の向こうから。


 誰かの声が聞こえた。


「――助けて」


 直人は凍りつく。


 聞き覚えのある声。


 絶対に忘れない声。


「……ミオ?」


 返事がない。


 もう一度。


「――助けて、直人」


 直人は亀裂を見つめた。


 そして。


 天音の手を握る。


「……行こう」


「うん」


 二人は亀裂の中へ足を踏み入れた。


 その先にあったのは――


 世界が生まれる前の、完全な暗闇だった。


 そして暗闇の中央に。


 ミオが立っていた。


 しかし。


 その身体には、無数の黒い亀裂が走っていた。


「……ミオ!」


 ミオは顔を上げる。


 涙を流しながら。


 小さく笑った。


「遅かったね」


 直人が駆け寄る。


「何があった!」


「私ね……」


 ミオは震える声で言った。


「この世界を作ったのは――」


 一瞬、言葉を止める。


「お父さんじゃない」


 直人と天音が凍りつく。


 ミオは二人を見つめる。


「本当にこの世界を作ったのは――」


 そして。


 その名前を口にした。


「――直人、あなたなんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。