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レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


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37/61

第二世界――燃える都市と「消された未来」

 ――扉を抜けた瞬間。


 熱風が直人たちを襲った。


「熱っ……!」


 美月が腕で顔を覆う。


 空は真っ赤だった。


 巨大な建物が燃えている。


 道路には無数の車。


 しかし――


 そのすべてが、


 空中で停止していた。


 まるで世界全体が、


 一枚の写真になったように。


「……また時間?」


 天音が空を見る。


「違う」


「これは……」


 天音の表情が変わる。


「時間じゃない」


「未来が止まってる」


⸻


■未来のない世界


 直人が周囲を見る。


 人々は動いている。


 炎も燃えている。


 車も走っている。


 しかし。


 その先がない。


 一台の車が交差点へ進む。


 ところが、


 交差点を通過した瞬間――


 突然、


 同じ場所へ戻ってしまった。


「……?」


 もう一度。


 同じ動き。


 同じ速度。


 同じ場所。


 何度繰り返しても、


 結果は変わらない。


 恒一が呟く。


「未来が決まってる……?」


 直人は首を振る。


「違います」


「この世界には――」


 直人が空を見上げる。


「未来そのものがない」


⸻


■救済対象


 直人の視界に、


 文字が浮かぶ。


【世界番号:0002】


【世界崩壊まで:26分41秒】


【救済条件:未来の再生成】


【難易度:EX】


 美月が驚く。


「未来を……作る?」


 直人が頷く。


「はい」


「でも」


 天音が周囲を見る。


「未来を作るには――」


 その瞬間。


 空から、


 一人の少女が落ちてきた。


「きゃあっ!」


 直人が駆け出す。


 少女を受け止める。


「大丈夫?」


「……」


 少女は、


 直人の顔を見る。


 そして。


 震える声で言った。


「……あなた」


「はい?」


「未来から来た人?」


⸻


■未来人


 少女は、


 自分の服についた灰を払う。


 年齢は十六歳ほど。


 黒い髪。


 左目だけ、


 青く光っている。


「私はカナ」


「この世界の――」


 少女は空を見る。


「最後の未来人」


 零が首をかしげる。


「未来人?」


「うん」


 カナは直人を見る。


「あなたたちは」


「まだ未来を持ってる」


 直人が聞く。


「どういう意味ですか?」


 カナは答える。


「この世界の人間は」


「明日の記憶を持ってない」


「明日の予定も」


「未来の夢も」


「未来への可能性も」


 そして。


「全部――」


 自分の胸を指す。


「誰かに消された」


⸻


■未来を消した存在


 天音が聞く。


「誰が?」


 カナは、


 しばらく黙っていた。


 そして。


「未来管理者」


 恒一が苦笑する。


「また管理者か」


「違う」


 カナが首を振る。


「この世界の管理者は」


「もう死んでる」


「じゃあ、誰が未来を消したの?」


 カナは、


 直人を見る。


「……佐伯直人」


 全員が凍る。


「え?」


 直人自身も、


 言葉を失う。


⸻


■もう一人の犯人


「俺が?」


 カナは頷く。


「この世界の記録では」


「そうなってる」


 彼女が手を上げる。


 空中に、


 一つの映像が現れる。


 そこに映っていたのは――


 直人。


 しかし。


 今の直人ではない。


 黒い服。


 冷たい目。


 片腕に、


 無数の文字が刻まれている。


 その直人が、


 巨大な装置の前に立っている。


『未来は』


『人間を不幸にする』


『だから』


『未来を消す』


⸻


■消された未来


 美月が息を呑む。


「……本当に直人さん?」


 直人は、


 映像から目を逸らさない。


「俺……なのかな」


 天音が言う。


「違う」


「どうして分かるんです?」


「目が違う」


 直人が見る。


「……」


 確かに。


 その直人の目には、


 今の自分にはないものがあった。


 ――諦め。


 そして。


 絶望。


⸻


■カナの願い


 カナが言う。


「私は」


「この未来を取り戻したい」


 直人が聞く。


「未来を取り戻したら」


「この世界は助かる?」


「うん」


「じゃあ」


 直人は笑う。


「やりましょう」


 カナが驚く。


「簡単に言うんだね」


「困ってるんですよね?」


「……うん」


「なら」


 直人は拳を握る。


「助けます」


⸻


■未来を奪った塔


 カナが、


 燃える街の中心を指差す。


「あそこ」


 巨大な黒い塔。


 その頂上に、


 一本の光が伸びている。


「未来消去装置」


「そこを止めれば」


「未来が戻る」


 直人が頷く。


「行きましょう」


⸻


■未来の罠


 塔へ向かう途中。


 直人たちは、


 突然立ち止まった。


「……?」


 目の前に、


 一人の老人が立っている。


「ここから先へ行ってはいけない」


 恒一が警戒する。


「何者だ?」


 老人は答えない。


 ただ、


 直人を見る。


「お前は」


「また同じことをする」


 直人が眉をひそめる。


「何を?」


「未来を変える」


「それの何が悪いんです?」


 老人は、


 悲しそうに笑った。


「未来を変えるということは」


「別の未来を殺すことだ」


⸻


■可能性の犠牲


 老人が手を上げる。


 空に、


 無数の未来が現れる。


 ある未来では、


 子供が笑っている。


 別の未来では、


 戦争が起きている。


 さらに別の未来では、


 誰も生まれていない。


 老人が言う。


「一つを選べば」


「他の可能性は消える」


 直人は、


 無数の未来を見る。


「……」


「お前は」


「どの未来を選ぶ?」


 直人は答えない。


⸻


■選ばない


 やがて。


 直人が口を開く。


「選びません」


 老人が目を見開く。


「何?」


「全部残します」


「そんなことは不可能だ」


「でも」


 直人は笑う。


「前にも言いましたよね」


「第三の答えを作るって」


 老人の顔が、


 初めて歪んだ。


「……また、それか」


⸻


■未来の守護者


 老人の身体が、


 巨大な光へ変わる。


【未来管理権限】


【最終守護者】


【起動】


 街全体が揺れる。


 空から、


 無数の光の剣が降ってくる。


「全員、避けて!」


 ――ズドドドドッ!!


 地面が爆発する。


 直人は、


 カナを抱えて走る。


「大丈夫ですか?」


「うん!」


 天音が叫ぶ。


「直人!」


「はい!」


「この敵――」


 天音が未来を見る。


「未来そのものを攻撃してくる!」


⸻


■未来を読む敵


 守護者が、


 直人を見る。


「お前が右へ避ける未来」


 右へ攻撃。


「左へ避ける未来」


 左へ攻撃。


「跳ぶ未来」


 上へ攻撃。


 直人の行動が、


 すべて読まれている。


「……」


 直人は立ち止まる。


 守護者が笑う。


「終わりだ」


「お前に未来はない」


⸻


■直人の答え


 直人は、


 拳を下ろした。


「そうですね」


「何?」


「俺にも」


「あなたにも」


「未来は分かりません」


 守護者が、


 一瞬だけ黙る。


 直人は笑う。


「だって」


 拳を握る。


「まだ決めてないから」


⸻


■未来を消す拳


 直人が、


 一歩踏み出す。


【未来予測】


【解析不能】


【未来確定】


【拒否】


【新規未来生成】


 直人の前に、


 無数の未来が生まれる。


 右。


 左。


 上。


 下。


 攻撃。


 防御。


 逃走。


 そして――


 そのどれでもない未来。


「これで」


 直人が笑う。


「読めないですよね」


 拳を振るう。


 ――ドン!!


 守護者の胸を、


 拳が貫いた。


⸻


■未来管理者の正体


 守護者の身体が、


 崩れていく。


「……なぜ」


「未来を見ていた」


「だが」


 直人は答える。


「未来を見ることと」


「未来を作ることは」


「違います」


 守護者の身体から、


 黒い装置が落ちる。


 カナが叫ぶ。


「それ!」


「未来消去装置!」


 直人が拾う。


 すると。


【未来消去装置】


【管理者権限:解除】


【新規未来生成:可能】


 直人は、


 装置を見る。


「これを止めれば――」


 カナが頷く。


「未来が戻る」


⸻


■しかし、未来が戻ると


 直人が装置を停止しようとした瞬間。


 ――警告。


【未来復元開始】


【予測不能】


【世界崩壊確率:78%】


 美月が驚く。


「未来を戻したら」


「世界が壊れる!?」


 カナが、


 青ざめる。


「そんな……」


 天音が言う。


「この世界は」


「未来が消された状態でしか」


「今まで維持できなかったんだ」


 直人は、


 装置を見つめる。


「……」


⸻


■二つの選択


 画面に表示される。


【未来を復元する】


【世界を維持する】


 どちらか一つ。


 カナが震える。


「……直人」


「はい」


「私は」


 涙を流す。


「未来が欲しい」


「でも」


「この世界がなくなるのは嫌」


 直人は、


 ゆっくり目を閉じる。


 また二択。


 また犠牲。


 また――


 選択。


⸻


■直人が笑う


「カナさん」


「……何?」


「大丈夫です」


 直人は、


 装置を握る。


「今回は」


「もう答えがあります」


「え?」


 直人の目が、


 静かに光る。


「未来を戻して、世界も残します」


 天音が驚く。


「直人……」


 直人は笑う。


「だって」


 装置へ拳を当てる。


「世界を救う試験なんですよね?」


 そして――


「だったら」


 拳を振り下ろす。


「世界が一つしか残らないなんて、誰が決めたんですか?」


 ――ドォォォン!!


 未来消去装置が、


 真っ二つに割れた。


⸻


■最後の一文


 ――瞬間。


 空が、


 真っ白になった。


 そして。


 世界中の人々が、


 一斉に空を見上げる。


 誰も知らなかった未来。


 失われた可能性。


 存在しなかったはずの明日。


 それらが――


 一気に戻ってくる。


 しかし。


 直人の視界には、


 別の文字が浮かんでいた。


【第二世界:救済条件達成】


【未来復元:成功】


【世界維持:成功】


【想定外】


【試験管理者:接続を確認】


 そして。


 最後に一行。


【佐伯直人が、試験の構造を理解し始めています】


 直人は、


 その文字を見つめる。


「……試験管理者?」


 誰も答えない。


 ただ。


 遥か世界の外側で、


 誰かが静かに笑った。


『――そうだ』


『次は』


『お前自身の未来を試そう』


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