↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/61

最初の救済――滅びる世界の少女

 ――無限世界救済試験。


 無数に存在する世界への扉が、


 一斉に開いていた。


 その中から、


 直人たちが選んだのは――


 一番小さな光だった。


「ここです」


 直人が一歩踏み出す。


 ――瞬間。


 世界が反転した。


⸻


■灰色の世界


 そこは、


 空も大地も灰色の世界だった。


 建物は崩れ、


 道路には誰もいない。


 風すら吹いていない。


 美月が辺りを見回す。


「……誰もいません」


 恒一が剣を構える。


「嫌な感じだな」


 天音が空を見る。


「時間が止まりかけてる」


 直人が聞く。


「止まる?」


「うん」


 天音が指を差す。


 空から落ちてきた灰が、


 途中で止まっていた。


 そして――


 ゆっくり上へ戻っていく。


「この世界」


 天音が呟く。


「時間そのものが壊れてる」


⸻


■助けを求める声


「……誰か」


 小さな声。


 全員が振り返る。


「助けて……」


 崩れた建物の陰。


 一人の少女が立っていた。


 年齢は十歳くらい。


 白い服。


 銀色の髪。


 そして――


 胸元に、


 小さな時計が埋め込まれている。


 直人が近づく。


「大丈夫?」


 少女は、


 怯えた顔で頷く。


「……あなたたち」


「はい」


「外から来たの?」


「そうです」


 少女の目に、


 涙が浮かぶ。


「じゃあ……」


「この世界を」


「助けてくれる?」


 直人は、


 迷わず頷いた。


「はい」


⸻


■世界が死ぬ理由


 少女は、


 自分の胸の時計を見る。


「この世界には」


「時間を動かす人がいないの」


 零が聞く。


「時間を動かす人?」


「うん」


「昔はいた」


「でも――」


 少女が空を見る。


「死んじゃった」


 天音が気づく。


「だから時間が止まってる」


「うん」


 少女は頷く。


「あと少しで」


「この世界は完全に止まる」


⸻


■残り時間


 直人の視界に、


 突然文字が浮かんだ。


【世界崩壊まで】


【00:59:59】


 直人が驚く。


「一時間?」


 少女が頷く。


「この数字がゼロになったら」


「全部、止まる」


「人も」


「空も」


「記憶も」


「そして――」


 少女は自分の胸に手を当てる。


「私も」


⸻


■救う方法


 直人が聞く。


「時間を動かせばいいんですよね?」


「うん」


「どうやって?」


 少女が答える。


「時計塔」


 遠くに、


 巨大な塔が見える。


「そこに」


「この世界の時間を動かす心臓がある」


 恒一が言う。


「なら、そこへ行こう」


 直人が頷く。


「行きましょう」


⸻


■時計塔


 街を進む。


 しかし。


 数分歩いただけで、


 世界がおかしくなり始めた。


 道路が突然、


 昔の姿に戻る。


 建物が完成したり、


 崩れたりする。


 人々の幻影が、


 現れては消える。


 美月が叫ぶ。


「何これ!?」


 天音が答える。


「時間が混ざってる!」


 直人が少女を見る。


「大丈夫?」


「……うん」


 少女は笑う。


 しかし。


 その笑顔は、


 どこか寂しかった。


⸻


■少女の名前


 直人が聞く。


「名前は?」


「……」


 少女は少し迷ってから、


 答えた。


「ミナ」


「ミナちゃんですね」


「うん」


「俺は直人です」


「知ってる」


「え?」


 ミナは、


 少しだけ笑う。


「ずっと見てたから」


⸻


■予想外の言葉


 直人が止まる。


「ずっと?」


「うん」


「どこから?」


 ミナは、


 空を指差す。


「世界の外」


 全員が沈黙する。


 天音が聞く。


「あなた……」


「私たちを知ってるの?」


「うん」


 ミナは答える。


「この世界に来る前から」


⸻


■救済試験の秘密


 ミナが言う。


「直人」


「はい」


「この試験」


「本当は世界を救う試験じゃないよ」


 直人が眉をひそめる。


「……どういうこと?」


「あなたが」


「どんな世界を救うのかを見る試験」


「……」


 少女の胸の時計が、


 一度だけ鳴る。


 ――カチッ。


「世界には」


「救っても意味がない世界もある」


「滅びることが決まっている世界もある」


「それでも――」


 ミナは直人を見る。


「あなたが助けるのか」


⸻


■直人の答え


 直人は、


 しばらく黙っていた。


 そして。


「助けます」


 即答だった。


「どうして?」


「困ってるから」


「それだけ?」


「はい」


 直人は笑う。


「理由って、それで十分じゃないですか?」


 ミナの目から、


 涙が落ちる。


「……うん」


⸻


■時計塔の門番


 ――ゴォン。


 時計塔の扉が開く。


 その中から、


 巨大な騎士が現れた。


 全身が時計でできている。


【時間守護者】


【侵入者を確認】


【排除開始】


 恒一が前に出る。


「ここは俺が!」


 しかし。


 時間守護者が剣を振るった瞬間――


 恒一の身体が、


 十歳ほど若返る。


「なっ……!?」


 美月が叫ぶ。


「恒一さん!」


 さらに。


 天音の時間も歪む。


「……まずい」


 直人が前へ出る。


「俺がやります」


⸻


■時間を超える拳


 時間守護者が、


 直人を攻撃する。


 ――ドン!


 直人の身体が、


 一瞬だけ消える。


 次の瞬間。


 別の場所に現れる。


【時間干渉】


【適応開始】


「……なるほど」


 直人は、


 自分の動きを見る。


「未来に攻撃して」


「過去に避けてるんですね」


 天音が驚く。


「そんなこと分かるの!?」


「なんとなく」


 直人は笑う。


「慣れてきました」


⸻


■時間そのものを殴る


 直人が、


 時計塔の中央を見る。


 そこにあるのは、


 巨大な時計。


 しかし。


 針が逆方向に回っている。


「これが」


「時間の心臓?」


 ミナが頷く。


「うん」


 直人は拳を握る。


「じゃあ」


 時間守護者が襲ってくる。


 直人は避けない。


「一回だけ」


「普通に殴ります」


 ――ドォン!!


 拳が時計に入る。


 しかし。


 時計は壊れない。


 逆に――


 直人の拳から、


 血が流れた。


「……硬い」


⸻


■世界の記憶


 その瞬間。


 時計から、


 大量の映像が流れ込む。


 この世界の誕生。


 人々の生活。


 少女ミナの誕生。


 そして――


 一人の少年。


 ミナと一緒に笑っている。


「……誰?」


 直人が聞く。


 ミナが答える。


「私のお兄ちゃん」


「……」


「この世界の」


「最後の時間管理者」


⸻


■兄の死


 少年は、


 世界を救うために、


 時間の心臓へ入った。


 そして。


 世界の崩壊を止める代わりに、


 自分自身を時間へ変えた。


 ミナは、


 一人残された。


「お兄ちゃんは」


「私を守るために」


「時間になったの」


 直人は、


 拳を握る。


「……」


「だから」


 ミナは笑う。


「この世界が止まったら」


「お兄ちゃんも消える」


⸻


■直人の決意


 直人は、


 時計を見る。


「なら」


「お兄ちゃんも助けましょう」


 ミナが驚く。


「え?」


「世界だけじゃなくて」


「その人も」


「助けられるなら」


 直人は拳を握る。


「全部助けます」


 ミナは、


 初めて笑った。


⸻


■時間の奥へ


 直人が、


 時計に手を当てる。


【時間領域への侵入】


【危険】


【帰還不能の可能性:99.99%】


 天音が直人の手を掴む。


「一人で行かないで」


「……」


「今度は」


 天音が笑う。


「私も行く」


 零も手を重ねる。


「私も」


 美月。


「私もです」


 恒一。


「当然だ」


 蓮。


「置いていくなよ」


 直人は笑う。


「ありがとうございます」


 そして。


 六人の手が、


 時間の心臓へ触れる。


⸻


■最後の一文


 ――カチッ。


 時計の針が止まる。


 世界が完全な静寂に包まれる。


 そして。


 時計の奥から、


 一人の少年の声が響いた。


『……ミナ?』


 ミナの目が、


 大きく見開かれる。


「……お兄ちゃん?」


 次の瞬間。


 時計の奥から、


 一人の少年が姿を現す。


 しかし――


 その身体には、


 無数の時計が埋め込まれていた。


『やっと……』


 少年が直人を見る。


『来てくれたんだね』


 そして。


 少年は、


 ゆっくり笑った。


『でも、僕を助けるなら――この世界の時間を壊してもらう必要がある』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。