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レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


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34/61

無限の可能性――もう一人の「直人」たち

 ――巨大な目が、


 世界の外側から直人を見つめていた。


『可能性とは』


『まだ存在していない未来のことだ』


 直人は拳を構える。


「未来?」


『そう』


『お前が勝つ未来』


『お前が負ける未来』


『仲間を守る未来』


『仲間を失う未来』


『そして――』


 巨大な目が開く。


『お前が存在しない未来』


「……」


 直人の表情が変わった。


⸻


■無数の直人


 ――パチン。


 巨大な目が瞬きをした瞬間。


 空間に、


 無数の世界が出現する。


 一つ。


 二つ。


 十。


 百。


 千。


 そして――


 数え切れないほどの世界。


 そのすべてに、


 一人の少年がいた。


 佐伯直人。


 零が息を呑む。


「……全部、お兄ちゃん?」


 少女が答える。


「違う」


「全部、“可能性”」


 それぞれの直人が、


 違う人生を歩んでいる。


 剣を持つ直人。


 魔法を使う直人。


 何も持たない直人。


 王になった直人。


 悪になった直人。


 仲間を失った直人。


 そして――


 一人で世界を滅ぼした直人。


⸻


■「もしも」の世界


 巨大な目が言う。


『どの世界にも』


『お前と同じ存在がいる』


『ただし』


『選択が違う』


 直人は、


 無数の自分を見る。


「……」


 その中の一人が、


 こちらを見た。


 黒い服。


 冷たい目。


 そして――


 血に染まった拳。


「……あいつ」


 天音が呟く。


「直人……?」


 少女が首を振る。


「違う」


「彼は――」


『可能性番号:000000』


『最悪の未来』


 巨大な目が告げる。


『“孤独な直人”だ』


⸻


■孤独な直人


 映像が映る。


 その世界では、


 零がいない。


 天音も。


 美月も。


 恒一も。


 蓮も。


 誰もいない。


 ただ一人。


 直人だけが立っている。


 世界は崩壊している。


 彼は、


 すべてを一人で倒してきた。


 そして。


 最後に残ったのは――


 自分だけ。


『……』


 孤独な直人が、


 こちらを見つめる。


「お前は」


「誰だ?」


 直人が答える。


「俺です」


 孤独な直人が笑う。


「……そうか」


「俺も、お前も」


「同じなんだな」


⸻


■最大の敵


 巨大な目が言う。


『彼こそ』


『お前が最も恐れる可能性』


 直人が聞く。


「俺が?」


『そう』


『仲間を失い』


『何も信じなくなり』


『自分だけを信じる存在』


 孤独な直人が拳を握る。


「俺は」


「お前より強い」


 直人は答える。


「そうかもしれません」


「なら」


 孤独な直人が構える。


「殺す」


⸻


■同じ拳


 ――消えた。


 孤独な直人が、


 一瞬で距離を詰める。


 拳。


 直人は受ける。


 ――ドン!!


 衝撃。


 床が砕ける。


 直人が後退する。


「……!」


 次の攻撃。


 避ける。


 反撃。


 ――ドン!


 互いの拳がぶつかる。


 完全に互角。


 零が叫ぶ。


「お兄ちゃん!」


 天音が叫ぶ。


「直人!」


 しかし。


 直人は笑っていた。


⸻


■分かってしまった


「……なるほど」


 孤独な直人が眉をひそめる。


「何が可笑しい」


 直人は答える。


「あなた」


「俺と同じですね」


「何?」


「強くなる方法も」


「戦い方も」


「考え方も」


「全部、同じ」


 直人は拳を握る。


「でも」


 一歩踏み込む。


「一つだけ違います」


⸻


■仲間


 直人の背後に、


 零たちが立つ。


「俺には」


 零が笑う。


「仲間がいる」


 天音が続く。


「私もいるよ」


 美月。


「私たちも」


 恒一。


「当然だ」


 蓮。


「忘れるなよ」


 孤独な直人は、


 その光景を見つめる。


「……」


 そして。


 拳が震えた。


「そんなもの」


「必要ない」


⸻


■孤独の理由


 直人は聞く。


「本当に?」


「……」


「必要ないなら」


「どうして」


 直人は孤独な自分を見る。


「そんな顔をしてるんですか?」


 孤独な直人の表情が、


 わずかに歪む。


「……うるさい」


「寂しいんじゃないですか?」


「黙れ!」


 拳が振られる。


 直人は避ける。


「仲間が欲しかったんじゃないですか?」


「黙れ!」


「誰かに――」


「黙れ!!」


 孤独な直人が、


 初めて叫んだ。


⸻


■壊れた未来


 孤独な直人の世界が、


 背後に映し出される。


 誰もいない街。


 崩れた学校。


 消えた家。


 そして――


 小さな墓。


 そこには、


 一つの名前が刻まれていた。


【佐伯零】


 直人が息を呑む。


「……零」


 零本人も、


 その墓を見る。


「……私?」


 孤独な直人が呟く。


「守れなかった」


「……」


「何度やっても」


「何度世界をやり直しても」


「救えなかった」


⸻


■だから強くなった


「だから」


 孤独な直人は、


 涙を流しながら笑う。


「全部、一人でやることにした」


「誰も失わないように」


「誰にも頼らないように」


「誰も俺のせいで死なないように」


 直人は黙って聞いていた。


 そして。


「……それ」


 拳を下ろす。


「俺も分かります」


「何?」


「怖いですよね」


 孤独な直人の目が揺れる。


⸻


■直人が手を差し出す


 直人は、


 拳ではなく。


 手を差し出した。


「一人で全部背負う必要ないですよ」


「……」


「あなたも」


「俺ですから」


 孤独な直人は、


 その手を見る。


「俺は……」


「はい」


「もう戻れない」


「なら」


 直人は笑う。


「一緒に新しい未来を作りましょう」


⸻


■可能性の変化


 ――その瞬間。


 巨大な目が、


 初めて揺れた。


『……何?』


 孤独な直人の世界に、


 小さな光が生まれる。


【可能性変動】


【未来:変更】


【孤独な直人】


【別名:未確定】


 巨大な目が叫ぶ。


『あり得ない!』


『可能性は固定されている!』


 直人が答える。


「固定されてるなら」


「変えればいい」


⸻


■可能性を殴る


 直人の拳に、


 これまでとは違う光が集まる。


【無限適応】


【世界干渉】


【物語干渉】


【自己存在権】


 そして最後に――


【可能性干渉】


 少女が息を呑む。


「直人……」


「はい」


「それは」


「まだ存在していない力だよ」


 直人は笑う。


「じゃあ」


「ちょうどいいですね」


⸻


■未来そのものへの一撃


 直人が拳を振るう。


 しかし。


 殴ったのは、


 敵ではない。


 「決められた未来」そのもの。


 ――ドン。


 無数の世界が揺れる。


 未来が、


 一本の線ではなくなる。


 分岐する。


 増える。


 そして――


 孤独な直人の世界にも、


 新しい未来が生まれる。


 零が生きている未来。


 仲間がいる未来。


 笑っている未来。


「……」


 孤独な直人が、


 涙を流す。


「こんな未来……」


 直人が答える。


「ありますよ」


⸻


■巨大な目の正体


 巨大な目が、


 初めて後退した。


『……お前は』


『可能性を増やした』


「はい」


『可能性が増えれば』


『世界は無限に増える』


「そうですね」


『ならば』


 巨大な目が、


 さらに巨大になる。


『すべての可能性を』


『お前一人で背負えるのか?』


 直人は答えない。


 その問いは――


 今までで初めて、


 直人を黙らせた。


⸻


■無限世界


 目の前に、


 無数の未来が広がる。


 一億。


 一兆。


 それ以上。


 それぞれの世界で、


 誰かが生きている。


 誰かが泣いている。


 誰かが助けを求めている。


 直人が全部救おうとすれば――


 永遠に終わらない。


 天音が、


 直人の隣に立つ。


「直人」


「はい」


「全部を一人で救わなくていい」


 零も言う。


「みんなでやろう」


 美月。


「一人じゃないです」


 恒一。


「仲間がいる」


 蓮。


「だから無茶しろ」


「……」


 直人が笑う。


「それ、無茶していいって意味ですよね?」


「そうだ」


⸻


■新しい決意


 直人は、


 無数の世界を見る。


「全部救えるかは」


「分かりません」


 拳を握る。


「でも」


「助けられる世界があるなら」


 一歩進む。


「助けます」


 巨大な目が、


 静かに笑う。


『……それがお前の答えか』


「はい」


『ならば――』


 巨大な目が、


 完全に開く。


『次の試験を開始する』


 無数の世界が、


 一斉に光り始める。


⸻


■新たな試験


【試験名称】


【無限世界救済試験】


【制限時間:なし】


【対象世界:∞】


【救済可能数:不明】


【失敗条件:存在しない】


 直人が首をかしげる。


「失敗条件、ないんですか?」


 少女が答える。


「……ない」


「じゃあ」


 直人は笑う。


「楽勝ですね」


 全員が呆れる。


「「「どこが!?」」」


 直人は笑った。


⸻


■最後の一文


 無限に広がる世界の中。


 その一つで――


 小さな少女が、


 空を見上げていた。


「……誰か」


「助けて」


 その声を、


 直人は聞いた。


 遥か彼方の世界から。


 そして。


 直人は一歩、


 その世界へ向かって歩き出す。


「行きましょう」


 零が隣に並ぶ。


「うん」


 天音も。


「今度は、どんな世界かな」


 直人は笑う。


「分かりません」


「でも――」


 無数の世界へ続く扉が、


 一斉に開く。


「困ってるなら、助けに行きましょう」


 その瞬間。


 無限の世界のどこかで、


 新たな物語が始まった。


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