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レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


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32/61

二つの世界――直人が選ぶ「第三の答え」

 ――警告音が鳴り響く。


【世界統合プロジェクト】


【開始】


 街中のスクリーンが、


 一斉に赤く染まった。


 人々が空を見上げる。


「何だ……?」


「空がおかしい!」


「建物が……透けてる!」


 直人も空を見る。


 そこには――


 もう一つの世界が重なっていた。


⸻


■重なり始める世界


 現実世界のビルの向こうに、


 ダンジョンが見える。


 道路の上に、


 魔法陣が浮かぶ。


 空を、


 巨大なモンスターが横切る。


 しかし次の瞬間。


 それらはまた消える。


 現実と物語。


 二つの世界が、


 交互に入れ替わっている。


 少女が叫ぶ。


「直人!」


「はい」


「これは統合じゃない!」


「え?」


「衝突してる!」


⸻


■世界同士の拒絶


 空間に、


 無数の文字が浮かぶ。


【現実世界】


【物語世界】


【互換性:0%】


【統合不能】


【衝突開始】


 美月が青ざめる。


「統合できないなら……」


 天音が続ける。


「二つの世界が、お互いを消し始める」


 直人が空を見る。


「じゃあ」


「早く止めないと」


 少年が画面の向こうで言う。


『もう始まってる』


⸻


■最初の消失


 遠くで、


 一人の男性が突然消えた。


「……え?」


 その隣にいた女性が叫ぶ。


「あなた!?」


 男性の身体が、


 光の粒になっていく。


 そして――


 完全に消えた。


 直人の顔から笑みが消える。


「……」


 零が呟く。


「今の人……」


「はい」


 直人は拳を握る。


「助けます」


⸻


■世界の中枢へ


 少年が指示する。


『この先に地下施設がある』


『そこが現実管理機構の中枢』


 直人たちは走り出す。


 街を抜ける。


 しかし。


 途中で、


 巨大な壁が立ちはだかった。


【侵入禁止】


【異常存在:佐伯直人】


 恒一が剣を抜く。


「俺が壊す」


「待ってください」


 直人が前へ出る。


「これは俺の問題です」


 壁に手を触れる。


【現実構造】


【解析開始】


 直人の指先が、


 淡く光る。


【適応率:12%】


「……」


 数字が上がる。


【36%】


【61%】


【89%】


 そして。


【100%】


 直人が壁を軽く押す。


 ――パリン。


 壁が、


 砂のように崩れた。


 恒一が呆れる。


「もう現実の壁まで壊せるのか……」


 直人は苦笑する。


「まだ殴ってないですよ」


⸻


■現実管理機構・中枢


 地下深く。


 巨大な空間が広がっていた。


 無数のモニター。


 無数の機械。


 そして。


 中央に浮かぶ巨大な球体。


 少女が息を呑む。


「……あれが」


「現実管理機構」


 少年が答える。


『そう』


 直人が見る。


「これを壊せばいいんですね?」


『違う』


「え?」


『壊したら』


『現実世界そのものが崩れる』


 直人が止まる。


「……じゃあ、どうするんです?」


 少年が答える。


『管理機構を止める』


『でも――』


 少年の声が震える。


『それには、誰か一人が中枢になる必要がある』


⸻


■一人だけの器


 零が顔を上げる。


「それって……」


 少女が答える。


「世界を支える“器”」


「誰か一人が」


「永遠に中枢として存在する」


 美月が叫ぶ。


「そんなの……!」


 恒一が拳を握る。


「ふざけるな!」


 蓮も言う。


「誰かを犠牲にして世界を救うなんて」


 直人は、


 静かに球体を見る。


「……」


⸻


■少年の告白


 画面の少年が言う。


『だから僕は』


『ずっと待ってた』


 直人が見る。


『君なら』


『僕の代わりになってくれると思った』


「……」


『僕にはもう』


『時間がない』


 少年の身体が、


 少しずつ透明になる。


 零が叫ぶ。


「あなた……!」


『僕は』


 少年は笑う。


『この世界を維持するための存在だから』


⸻


■もう一人の直人の正体


 直人が聞く。


「あなたは」


「普通の人間じゃないんですね」


『うん』


 少年は頷く。


『僕は、この世界が作った“器”』


『君と同じ顔なのは』


『君を基準に作られたから』


 直人が目を伏せる。


「……俺のコピー?」


『違う』


 少年は首を振る。


『僕は』


『君が選ばなかった可能性』


⸻


■もしも


 少年の背後に、


 無数の映像が浮かぶ。


 力を持たなかった直人。


 仲間を作らなかった直人。


 戦わなかった直人。


 普通の生活を送った直人。


 そして。


 誰にも出会わず、


 一人で世界を支え続ける直人。


『僕は』


『君がもし』


『何も選ばなかったら』


『存在していたかもしれない』


 直人は、


 少年を見つめる。


「……」


⸻


■直人の答え


 直人が歩く。


 少年へ近づく。


「じゃあ」


「一つだけ聞いていいですか?」


『何?』


「あなたは」


「本当に死にたいんですか?」


『……』


「それとも」


「誰かに代わってほしいだけですか?」


 少年は、


 初めて泣いた。


『……分からない』


 直人は笑う。


「じゃあ」


「決めるのはまだ早いですね」


⸻


■第三の答え


 直人が中枢へ向かう。


 球体に手を伸ばす。


【接続開始】


【警告】


【現実世界との同化が発生します】


【続行しますか?】


 直人は答える。


「はい」


 少女が叫ぶ。


「直人!」


 天音が駆け寄る。


「何をするの?」


「調べます」


「何を?」


「二つの世界を」


 直人の目が光る。


「一つにするんじゃなくて」


「二つとも独立して存在できる方法を探します」


⸻


■直人、世界の構造を見る


 直人の意識が、


 中枢の内部へ入っていく。


 そこには――


 無数の世界。


 無数の時間。


 無数の可能性。


 そのすべてを、


 一つの構造が支えていた。


 直人は呟く。


「……なるほど」


 世界は、


 二つしかないわけではなかった。


 無数にある。


 ただ。


 それぞれが、


 互いに干渉できないようになっている。


「だったら」


 直人が笑う。


「壁を作ればいい」


⸻


■世界の境界


 直人の周囲に、


 新しい文字が浮かぶ。


【世界境界】


【設計開始】


【現実世界】


【物語世界】


【独立維持】


 そして。


【相互干渉:任意】


 少女が目を見開く。


「直人……」


「はい」


「あなた」


「世界の間に――」


「新しい境界を作ってる」


 直人は笑う。


「壁がなければ」


「作ればいいんですよね?」


⸻


■しかし


 その瞬間。


 中枢が激しく揺れる。


【警告】


【外部干渉を検知】


【現実管理機構】


【上位管理者を呼び出します】


 全員が振り返る。


 巨大な扉が開く。


 そこから、


 一人の男が歩いてくる。


 黒いコート。


 白い髪。


 そして――


 直人と同じ顔。


 しかし。


 その男は、


 これまでの誰とも違った。


⸻


■第三の佐伯直人


 男が言う。


「やはり来たか」


 直人が聞く。


「あなたも佐伯直人?」


「ああ」


 零が驚く。


「また……?」


 男は笑う。


「私は」


「この世界の“管理者”だ」


 直人が首をかしげる。


「管理者なら」


「世界を守ってくれるんですよね?」


「違う」


 男は答える。


「私は――」


 ゆっくり手を上げる。


『世界を選別するために存在する』


⸻


■選別開始


 中枢全体に、


 巨大な文字が浮かぶ。


【世界選別】


【候補】


【現実世界】


【物語世界】


【生存可能数:1】


 天音が息を呑む。


「一つしか残せない……」


 男が言う。


「そうだ」


 直人を見る。


「だから選べ」


「どちらを残す?」


 直人は、


 しばらく黙っていた。


 そして。


「……嫌です」


 男が眉をひそめる。


「何?」


 直人は拳を握る。


「さっきも言いましたよね」


「俺は――」


 笑う。


「第三の答えを作ります」


⸻


■最後の一文


 男の表情が、


 初めて変わった。


「……そうか」


 男の身体から、


 巨大な力が溢れ出す。


「ならば」


 中枢全体が震える。


「お前が作った第三の答えが」


「本当に世界を救えるのか――」


 男の目が、


 赤く光る。


「私が直接、確かめてやろう」


 直人は静かに拳を構える。


「お願いします」


 そして。


 現実世界で初めて――


 佐伯直人同士の戦いが始まった。


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