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レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


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31/61

現実の直人――二人の「佐伯直人」

 ――街が静まり返っていた。


 巨大スクリーンに映る少年。


 その顔は――


 直人と同じだった。


 しかし。


 直人は、すぐに違いに気づいた。


「……目が違いますね」


 零が聞く。


「目?」


「はい」


 画面の少年の目には、


 戦いの跡がない。


 怒りもない。


 悲しみもない。


 ただ――


 寂しさだけがあった。


⸻


■現実世界の直人


 少年が話す。


『初めまして』


「……」


『僕も佐伯直人』


「俺も佐伯直人です」


『知ってる』


 少年は笑う。


『だから、ずっと待ってた』


 直人は聞く。


「何を?」


 少年の表情が、


 少しだけ曇る。


『君に会うこと』


⸻


■二人の違い


 少年は続ける。


『君は』


『物語の中で強くなった』


『仲間を作った』


『世界を救った』


『原初体を超えた』


 直人は黙っている。


『でも僕は違う』


 画面が切り替わる。


 少年の人生。


 学校。


 家族。


 友達。


 普通の日常。


 しかし。


 ある日。


 世界が突然、


 黒い塔に覆われた。


『僕の世界では』


『物語なんて存在しなかった』


『ダンジョンも』


『魔法も』


『管理者も』


『全部なかった』


 少年は言う。


『ただ――』


『君だけが存在した』


⸻


■夢に現れる直人


 映像の中。


 少年が眠っている。


 夢の中に、


 直人が現れる。


 戦っている。


 笑っている。


 仲間と歩いている。


 少年は、


 それを毎晩見ていた。


『最初は夢だと思った』


『でも』


『毎日、少しずつ違っていた』


『君は成長していた』


 直人が呟く。


「……」


『そして僕は気づいた』


 少年が画面越しに直人を見る。


『君は僕の中から生まれたんじゃない』


『僕の世界の“外側”から来ていた』


⸻


■呼び出した理由


 直人が聞く。


「じゃあ、俺を呼んだ理由は?」


 少年は答える。


『助けてほしかった』


「誰を?」


 少年が、


 自分の胸を指す。


『僕を』


 沈黙。


『僕の世界は』


『もうすぐ終わる』


⸻


■終わりかけた世界


 画面が切り替わる。


 街が崩れている。


 空が黒い。


 人々が逃げている。


 建物が消えていく。


 零が息を呑む。


「これ……」


 少女が答える。


「世界の崩壊」


「でも」


 天音が言う。


「ここには管理者がいないんじゃ?」


 少女は首を振る。


「いる」


「ただ――」


 少女の顔が青ざめる。


「この世界の管理者は」


「世界を守るために存在しているんじゃない」


⸻


■現実の管理者


 画面に、


 一つの文字が浮かぶ。


【現実管理機構】


 その下に、


 さらに文字。


【目的:物語世界の排除】


 直人が眉をひそめる。


「物語世界?」


 少女が答える。


「私たちの世界」


「あなたたちが生きてきた世界」


「全部――」


 少女が画面を見る。


「この世界から見れば」


「異常なデータなんだよ」


⸻


■世界の掃除


 少年が言う。


『僕の世界は』


『今、物語世界を消している』


『だから』


 直人を見る。


『君たちを呼んだ』


 恒一が剣を握る。


「俺たちを消すためじゃないのか?」


『違う』


 少年は首を振る。


『逆』


『君たちなら』


『この世界を救える』


⸻


■直人の疑問


 直人は考える。


「でも」


「俺は普通の人間ですよ?」


 少女が笑う。


「今はね」


「今は?」


「あなたの力は」


 少女が直人の胸を見る。


「現実世界では眠っている」


「でも」


「適応は止まっていない」


 直人が自分の手を見る。


 何も起きない。


「……」


 その瞬間。


 指先に、


 小さな光が灯る。


【環境変化】


【適応開始】


 直人が笑う。


「やっぱり」


⸻


■現実への適応


 光が少しずつ強くなる。


【現実世界】


【物理法則】


【時間】


【重力】


【生命】


 直人の身体が、


 現実の法則を理解していく。


 少女が驚く。


「速すぎる……」


 零が笑う。


「お兄ちゃんだから」


 直人は拳を握る。


「これで」


「少しは戦えますね」


⸻


■現実管理機構の刺客


 ――その瞬間。


 空から、


 無数の光が落ちてくる。


 人型。


 白い装甲。


 顔はない。


【現実執行体】


【対象:異常存在】


【排除開始】


 恒一が前に出る。


「来たぞ!」


 美月が魔法を構える。


「魔法が使えない!」


 蓮が拳を構える。


「なら、肉弾戦だ」


 天音が直人を見る。


「行ける?」


「はい」


 直人は笑う。


「普通の人間として」


⸻


■初めての現実戦


 執行体が襲いかかる。


 ――ドン!


 直人が拳を入れる。


 しかし。


 敵は吹き飛ばない。


「……硬い」


 反撃。


 直人が避ける。


 拳。


 蹴り。


 防御。


 それでも、


 相手のほうが強い。


 美月が叫ぶ。


「直人さん!」


 直人は笑う。


「大丈夫です」


 そして。


 もう一度、


 拳を握る。


【適応率:23%】


⸻


■少しずつ強くなる


 敵の攻撃を受ける。


【適応率:41%】


 避ける。


【適応率:58%】


 攻撃する。


【適応率:73%】


 そして。


 直人の拳が、


 執行体の胸を捉える。


【適応率:100%】


 ――ドォン!


 初めて。


 執行体が吹き飛んだ。


 恒一が笑う。


「やっぱりお前はお前だな!」


 直人も笑う。


「そうみたいです」


⸻


■現実のルールを書き換える


 倒れた執行体が、


 再び立ち上がる。


【再構築】


 直人が見る。


「何度でも復活するんですか?」


 少年が答える。


『現実管理機構は』


『倒すだけでは止まらない』


「じゃあ?」


『管理機構そのものを壊す必要がある』


 直人は少し考える。


「場所は?」


 少年が答える。


『僕の世界の地下』


『“現実管理機構・中枢”』


⸻


■二人の直人


 少年が画面越しに言う。


『そこに来て』


「俺が?」


『君と僕』


 少年は笑う。


『二人で』


 直人が眉をひそめる。


「何をするんです?」


『決めるんだ』


「何を?」


 少年の表情が変わる。


『どちらの世界を残すか』


 全員が凍る。


⸻


■二つの世界


 少女が叫ぶ。


「待って!」


『どうしたの?』


「そんな選択をする必要はない!」


 少年は悲しそうに笑う。


『あるよ』


『現実世界と物語世界』


『両方を維持するだけの容量はない』


 天音が聞く。


「つまり……」


 少年が答える。


『どちらか一つしか残せない』


⸻


■直人の答え


 直人は黙っている。


 零が不安そうに見る。


「お兄ちゃん……」


「大丈夫です」


 直人は、


 ゆっくり拳を握る。


「また三択ですね」


 少年が聞く。


『三択?』


「世界を選ぶか」


「世界を捨てるか」


「どちらかを犠牲にするか」


 直人は笑う。


「でも」


 拳を前に出す。


「俺は④を作るのが得意なんですよ」


 少年の目が、


 初めて大きく見開かれる。


⸻


■最後の一文


 直人は、


 現実世界の少年を見る。


「二つとも残します」


 少年が呟く。


『……できるの?』


「分かりません」


「でも」


 直人は笑う。


「やってみないと分からないですよね」


 その瞬間。


 世界中のスクリーンに、


 一斉に警告が表示される。


【重大異常】


【現実世界と物語世界の融合を検知】


【原因――】


【佐伯直人】


 そして。


 そのさらに下に、


 新しい文字が浮かぶ。


【世界統合プロジェクト】


【開始】


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