↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/61

物語の外側――主人公にされた男

 ――世界が、止まった。


 いや。


 止まったのではない。


 ページになった。


 空。


 大地。


 海。


 仲間たち。


 そして直人自身。


 すべてが、


 白い紙の上に描かれたように、


 静止していた。


「……何ですか、これ」


 直人だけが動いている。


 天音も。


 零も。


 美月も。


 恒一も。


 蓮も。


 全員が止まっている。


 そして。


 目の前には、


 銀髪の少女。


 彼女だけが、


 直人と同じように動いていた。


『ようこそ』


『物語の外側へ』


⸻


■作者ではない存在


 直人は少女を見る。


「あなたが、全部やったんですか?」


『全部ではないよ』


「じゃあ、どこまで?」


 少女は微笑む。


『あなたが生まれる前から』


『ずっと見ていた』


「……」


『あなたがダンジョンに入った日も』


『初めて仲間を守った日も』


『世界を殴った日も』


『零と出会った日も』


 直人の表情が変わる。


『全部』


「じゃあ」


 直人は拳を握る。


「俺の人生って――」


 少女が答える。


『物語だよ』


⸻


■作られた人生


 直人の周囲に、


 無数の映像が浮かぶ。


 幼い頃。


 学校。


 家族。


 ダンジョン。


 戦い。


 美月。


 恒一。


 蓮。


 天音。


 零。


 すべて。


 すべてが、


 一つの線に繋がっている。


「……」


 直人は映像を見つめる。


「全部、決められてたんですか?」


『最初はね』


「最初は?」


『でも』


 少女が笑う。


『途中から、あなたは私の予想を外し始めた』


⸻


■予定外の主人公


 少女が手を伸ばす。


 空中に、


 一つの文字が浮かぶ。


【主人公:佐伯直人】


 その文字に、


 直人は触れる。


 ――パリン。


 文字が砕けた。


「……」


 少女の笑顔が消える。


『それは――』


「主人公って」


 直人が言う。


「別に必要ないですよね」


『何?』


「俺は俺です」


 直人は自分の胸を指す。


「主人公じゃなくても」


「生きられます」


⸻


■物語のルール


 少女は静かに笑う。


『それは無理』


「どうして?」


『主人公には役割がある』


「どんな?」


『世界を救う』


「嫌です」


『敵を倒す』


「必要なら」


『仲間を守る』


「それはやります」


『最後に勝つ』


 直人は少し考える。


「……それも」


「俺が決めます」


 少女の目が細くなる。


『やっぱり』


『あなたは面白い』


⸻


■天音が動く


 突然。


「直人」


 声がした。


 振り返る。


 止まっていたはずの天音が、


 動いている。


「天音?」


 少女が驚く。


『なぜ?』


 天音は直人の隣に立つ。


「私も」


 自分の胸に手を当てる。


「この物語の中にいるなら」


「私にも選ぶ権利があるでしょう?」


 少女が黙る。


 すると。


 美月が動く。


「……私も」


 恒一も。


「俺もだ」


 蓮も。


「当然だろ」


 最後に――


 零が歩いてくる。


「私も」


 直人の隣に立つ。


「お兄ちゃんと一緒に行く」


⸻


■登場人物ではない


 少女は、


 五人を見つめる。


『あなたたちは』


『自分が何を言っているのか分かってる?』


 美月が答える。


「分かりません」


 恒一も言う。


「でも」


 蓮が笑う。


「直人と一緒にいたい」


 天音が続ける。


「それだけで十分」


 零は、


 直人の手を握った。


「私たちは登場人物じゃない」


「生きてる」


 少女の表情が変わる。


『……』


⸻


■物語の強制終了


 少女が、


 初めて怒った。


『ならば』


 空間に巨大な文字が浮かぶ。


【物語終了】


 世界が崩れ始める。


 大地が消える。


 空が消える。


 仲間たちの身体が、


 少しずつ透明になっていく。


「……!」


 直人が叫ぶ。


「やめろ!」


『物語が終われば』


『あなたたちは存在できない』


 零の身体が、


 さらに薄くなる。


「お兄ちゃん……」


「零!」


 直人が手を伸ばす。


 しかし。


 届かない。


⸻


■直人の怒り


「……」


 直人の目から、


 光が消える。


 代わりに。


 静かな怒りが宿った。


「一つだけ」


 少女を見る。


「聞いていいですか?」


『何?』


「俺たちが消えたら」


「あなたはどうなるんです?」


 少女が答える。


『私は外側にいる』


「じゃあ」


 直人が拳を握る。


「俺が外側に行けばいい」


『……』


「それなら」


「みんなを消せませんよね?」


⸻


■物語の壁


 直人が一歩進む。


 目の前に、


 透明な壁がある。


【物語境界】


【侵入禁止】


 直人が触れる。


「これが外との壁?」


『そう』


「硬そうですね」


『当然』


「壊せますかね」


『不可能』


 直人は笑う。


「じゃあ」


 拳を引く。


「試します」


⸻


■一発目


 ――ドン。


 壁が揺れる。


 少女の顔が変わる。


『……!』


 直人の拳に、


 小さな亀裂が入る。


【物語境界】


【損傷率:0.01%】


 直人が目を丸くする。


「壊れましたね」


『……』


「じゃあ」


 もう一度。


 ――ドン!


【損傷率:0.8%】


 少女が叫ぶ。


『やめて!』


「嫌です」


 ――ドン!


【損傷率:7%】


⸻


■仲間の声


 零が叫ぶ。


「お兄ちゃん!」


 直人が振り返る。


 零の身体は、


 もう半分が消えている。


「早く!」


「はい!」


 天音も叫ぶ。


「直人!」


「大丈夫!」


 美月。


「私たちを置いていかないで!」


「置いていきません!」


 恒一。


「ぶっ壊せ!」


 蓮。


「お前ならできる!」


 直人は笑う。


「分かりました!」


⸻


■物語への適応


 直人の身体に、


 新しい文字が浮かぶ。


【環境:物語】


【適応対象:物語そのもの】


【適応開始】


 少女が凍りつく。


『そんなこと――』


 数字が上昇する。


【1%】


【12%】


【39%】


【67%】


【91%】


 そして――


【100%】


 直人の身体に、


 新しい文字が刻まれる。


【物語干渉権】


 少女が後退する。


『嘘……』


「嘘じゃないですよ」


 直人が笑う。


「適応しただけです」


⸻


■物語を書き換える


 直人が、


 空中の文字に手を伸ばす。


【主人公:佐伯直人】


 その文字を消す。


 そして。


 新しい文字を書く。


【登場人物:全員】


 続いて。


【生存】


 そして。


【自由意思】


 最後に――


【物語継続】


 世界が、


 一気に動き始める。


 空が戻る。


 大地が戻る。


 仲間たちの身体も、


 完全に元へ戻る。


 零が自分の手を見る。


「……戻った」


 天音も息を吐く。


「直人……」


 少女は、


 何も言えない。


⸻


■少女の正体


 直人は少女へ向き直る。


「これでいいですか?」


『……』


「あなたは俺を主人公にした」


「でも」


「俺はみんなを主人公にしました」


 少女の目から、


 一筋の涙が落ちる。


『……ずるい』


「またそれですか」


『私は』


 少女は震える。


『ずっと一人だった』


 直人が黙る。


『物語を見ることしかできなかった』


『誰かと笑うことも』


『誰かに触れることも』


『できなかった』


「……」


『だから』


 少女が顔を上げる。


『主人公を作った』


「俺を?」


『そう』


⸻


■少女の名前


 直人が聞く。


「あなたは誰なんです?」


 少女は少し迷ってから答える。


『名前は――』


 一瞬。


 世界の外側に、


 文字が浮かぶ。


【作者】


 しかし。


 少女はその文字を消す。


「違う」


 そして。


『私は――』


 自分の胸に手を当てる。


『物語から生まれた最初の読者』


「読者?」


『あなたたちの物語を』


『最初から最後まで見ていた』


『だから私は――』


 直人を見る。


『あなたたちに会いたかった』


⸻


■直人の答え


 直人は少し考える。


「じゃあ」


「一緒に来ます?」


 少女が目を見開く。


『……え?』


「一人でいるより」


「みんなでいたほうが楽しいですよ」


 零が笑う。


「私も賛成」


 美月も。


「歓迎します」


 恒一。


「まあ、敵じゃないならな」


 蓮。


「仲間が増えるのは悪くない」


 天音も微笑む。


「一緒に行こう」


 少女は、


 初めて笑った。


『……ありがとう』


⸻


■しかし


 その瞬間。


 世界の外側に、


 巨大な警告が表示される。


【警告】


【物語境界:突破】


【世界階層:逸脱】


【管理不能】


 そして。


 さらに上。


 さらに遠い場所から。


 一つの声が響いた。


『――そこまでだ』


 全員が空を見る。


 少女の顔から、


 笑顔が消える。


「……来た」


 直人が聞く。


「誰が?」


 少女は答える。


『私より上の存在』


「原初体より?」


『うん』


「じゃあ」


 直人が拳を握る。


「また殴ればいいですね」


 少女が首を振る。


『違う』


「?」


『今度の相手は――』


 世界の外側そのものが、


 巨大な影に覆われていく。


『“物語を作る世界”そのもの』


⸻


■最後の一文


 巨大な影が、


 ゆっくりと目を開く。


『佐伯直人』


『お前は物語を超えた』


『世界を超えた』


『原初体さえ超えた』


 直人は拳を構える。


 しかし。


 影は笑う。


『だが――』


 無数の世界が、


 一斉に直人を囲む。


『次は、お前が存在するための』


『“現実”そのものが敵だ』


 直人は、


 静かに笑った。


「……現実ですか」


 そして。


「それなら――」


 拳を握る。


「今までで一番、面白そうですね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。