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レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


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28/61

原初の世界――直人が知らなかった「最初の日」

 ――何もない。


 音もない。


 光もない。


 時間さえ存在しない。


 ただ、二つの存在だけが向かい合っていた。


 一つは――原初体。


 もう一つは――直人。


 その背後には零、天音、美月、恒一、蓮。


 全員が息を殺している。


 原初体が言う。


『ここから先は、私の領域だ』


 直人は首をかしげる。


「領域?」


『世界が生まれる前の場所』


『お前たちの力が存在するより前』


『すべての始まり』


 直人が拳を握る。


「じゃあ」


「ここで決着ですね」


『そうだ』


⸻


■第一撃


 原初体が指を動かす。


 ――瞬間。


 直人の存在が、


 一瞬だけ消えた。


「直人!」


 天音が叫ぶ。


 しかし。


「……?」


 直人は何事もなかったように立っている。


「今、何かしました?」


 原初体が沈黙する。


『……』


「消そうとしました?」


『そうだ』


「でも、消えませんでしたね」


『なぜだ』


 直人は笑う。


「分かりません」


「でも」


 一歩進む。


「消されるのに慣れたんじゃないですかね」


⸻


■消滅への適応


 直人の身体に、


 新しい文字が浮かぶ。


【消滅干渉】


【適応開始】


 原初体の目が見開かれる。


『またか』


【適応率:31%】


【57%】


【82%】


【100%】


 直人の存在が、


 完全に固定される。


【消滅不能】


 直人が笑う。


「これで大丈夫です」


『……』


 原初体が初めて、


 一歩後退した。


⸻


■原初体の怒り


『ならば』


 世界が震える。


『お前の存在そのものを否定する』


 直人の周囲から、


 無数の文字が現れる。


【人間】


【生命】


【佐伯直人】


【存在】


 それらが一つずつ消えていく。


 直人の身体も、


 少しずつ薄くなる。


「……!」


 零が叫ぶ。


「お兄ちゃん!」


 直人は振り返る。


「零」


「何?」


「大丈夫です」


「でも!」


「まだ俺の名前は残ってます」


 零が目を凝らす。


 確かに。


 ただ一つ。


【佐伯直人】


 だけが残っている。


⸻


■名前


 原初体が問う。


『なぜ名前だけが残る』


 直人は考える。


「名前って」


「誰かが呼んでくれるものですよね」


 天音が涙を浮かべる。


「……直人」


 美月も。


「直人さん」


 恒一も。


「直人!」


 蓮も。


「佐伯」


 そして零。


「お兄ちゃん」


 その瞬間。


 消えかけていた直人の存在が、


 一気に戻る。


【存在安定】


【因果接続】


【仲間との関係】


【維持】


 原初体が震える。


『他者との繋がりで』


『存在を維持しただと……』


 直人は笑う。


「一人じゃないので」


⸻


■原初体の記憶


 突然。


 原初体の背後に、


 一つの映像が浮かぶ。


 何もない世界。


 そこに、


 一人の男がいる。


 原初体自身。


 ただ一人。


 誰もいない。


 話す相手もいない。


 笑う相手もいない。


 原初体は、


 長い時間を一人で過ごした。


 そして――


 世界を作った。


 星を。


 生命を。


 人間を。


 それでも。


 孤独は消えなかった。


⸻


■原初体の本当の目的


 直人が聞く。


「もしかして」


「あなたも寂しかったんですか?」


『……』


「だから世界を作った?」


『違う』


「本当に?」


『違う!』


 原初体が怒鳴る。


 空間が崩れる。


『私は世界を完成させたかった!』


『完璧な世界を!』


『争いも』


『死も』


『別れもない世界を!』


 直人は黙る。


『だが』


 原初体の声が震える。


『世界は私の言うことを聞かなかった』


『だから管理した』


『それでも壊れた』


『だから――』


 零を見る。


 直人を見る。


『器を作った』


⸻


■零の涙


 零が言う。


「……私たちは」


「あなたの寂しさを埋めるために作られたの?」


 原初体は答えない。


 零の目から、


 涙が落ちる。


「私も」


「直人も」


「ずっと実験だった?」


『……』


「道具だった?」


『……』


 直人が零の肩に手を置く。


「零」


「うん」


「俺たちはもう違います」


 零が顔を上げる。


「……うん」


⸻


■原初体の最後の提案


 原初体が、


 静かに言う。


『ならば、提案しよう』


 直人を見る。


『私と一つになれ』


「……」


『お前の無限適応』


『私の完全性』


『二つが一つになれば――』


 世界に巨大な光が生まれる。


『完全な存在になれる』


『世界を永遠に維持できる』


 直人は少し考える。


「それって」


「俺が俺じゃなくなるんですよね?」


『そうだ』


「じゃあ」


 即答。


「嫌です」


⸻


■直人の拒絶


『なぜだ』


「俺は」


 直人は胸に手を当てる。


「失敗することもある」


「負けることもある」


「痛いこともある」


「でも」


 仲間を見る。


「その全部が俺なので」


 零が微笑む。


 天音も。


 美月も。


 恒一も。


 蓮も。


 直人は原初体を見る。


「完璧になる必要なんてないですよ」


⸻


■原初体、崩壊


 原初体の身体に、


 亀裂が走る。


『……完璧でなくていい?』


「はい」


『失敗しても?』


「はい」


『壊れても?』


「直せばいいです」


『失うこともある』


「そのときは」


 直人は拳を握る。


「悲しめばいい」


『……』


「それでも」


「また前に進めばいい」


 原初体は、


 長い間沈黙した。


⸻


■原初体の涙


 そして。


 一滴。


 原初体の頬から、


 光が落ちた。


『……これが』


『悲しみか』


 零が驚く。


「泣いてる……」


『私は』


『感情など必要ないと思っていた』


 原初体は直人を見る。


『だが』


『今、初めて』


『世界を失うのが怖い』


 直人が静かに答える。


「それなら」


「守ればいいじゃないですか」


⸻


■最後の戦い


 原初体が、


 ゆっくり拳を握る。


『……そうか』


 世界が再構築され始める。


 星。


 大地。


 海。


 生命。


 そして――


 人間。


『ならば最後に』


 原初体が構える。


『私自身を超えてみろ』


 直人も構える。


「はい」


 零が隣に立つ。


「一緒に」


 天音たちも続く。


「私たちも」


 直人は笑う。


「行きましょう」


⸻


■兄妹、共闘


 原初体が放った光が、


 世界を飲み込む。


 零が両手を広げる。


【完全安定】


 直人が拳を握る。


【無限適応】


 二つの力が重なる。


【完全】


【未完成】


 そして。


【共存】


 新しい力が生まれる。


【共鳴】


 原初体が目を見開く。


『……そんな力は存在しない』


 直人が答える。


「今、作りました」


⸻


■世界を超える一撃


 直人と零が、


 同時に踏み込む。


 天音が叫ぶ。


「今!」


 美月が魔力を放つ。


 恒一が剣を振るう。


 蓮が力を重ねる。


 五人の力が、


 二人の兄妹へ集まる。


 そして――


 直人が拳を振るう。


 零も拳を振るう。


 ――――ドォォォォォン!!


 世界そのものが、


 一瞬だけ白く染まった。


⸻


■勝敗


 光が消える。


 静寂。


 原初体は、


 立っていた。


 しかし。


 その身体には、


 無数の亀裂。


『……負けた』


 直人が驚く。


「え?」


『私は』


『初めて負けた』


 原初体が笑う。


『……悪くない』


 そして。


 その身体が、


 光へ変わっていく。


『直人』


「はい」


『お前に世界を託す』


 直人が目を見開く。


『だが――』


 原初体の声が、


 最後に低くなる。


『世界の外には』


『まだ“誰か”がいる』


⸻


■本当の黒幕


 原初体が消えたあと。


 暗闇の奥に、


 一つの扉が現れる。


 誰も触れていないのに、


 ゆっくり開いていく。


 その向こうには――


 無数の世界。


 無数の宇宙。


 そして。


 それらを眺めている、


 一人の少女。


 長い銀髪。


 白い服。


 そして――


 直人と同じ顔。


 零が青ざめる。


「……嘘」


 直人が聞く。


「どうした?」


 零は震えながら答える。


「私たちより……」


「さらに上がいる」


 少女が振り返る。


 そして笑った。


『原初体が負けたか』


 天音が叫ぶ。


「誰!?」


 少女は答える。


『私は』


『この物語を最初から見ていた者』


 直人が眉をひそめる。


『そして――』


 少女が、


 直人を指差す。


『あなたを“主人公”にした者』


⸻


■最後の一文


 直人は、


 初めて言葉を失った。


 少女が微笑む。


『さあ、佐伯直人』


『次は――』


 無数の世界が、


 一斉に動き始める。


『“物語”そのものと戦いましょう』


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