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レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


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27/61

原型の男――直人のすべてを知る存在

 ――静寂。


 目の前に立つ男。


 その顔は直人と同じだった。


 だが。


 雰囲気はまるで違う。


 直人が「今」を生きる人間なら――


 この男は、


 すべてを知っている。


「……」


 直人は男を見つめる。


「俺の力を、全部持ってるんですか?」


「そうだ」


 男は即答した。


「お前が覚えた力」


「お前が超えた限界」


「お前が書き換えた世界」


 男が一歩進む。


「すべて、私の中にある」


⸻


■零の恐怖


 零が震えている。


「……お兄ちゃん」


「はい」


「この人には勝てない」


「どうして?」


「私たちの能力は――」


 零は男を見る。


「全部、この人が最初に作ったものだから」


 直人は少し考える。


「じゃあ」


 拳を握る。


「また新しいのを作ればいいですね」


「……」


 男の表情が初めて変わった。


「お前は本当に、そればかりだな」


「何がです?」


「理解できないものを、すぐに自分のものにする」


 男が笑う。


「だから失敗作なのだ」


⸻


■原型の名前


 天城が震えながら言う。


「……まさか」


 男が振り返る。


「久しいな、天城」


「あなたは……」


 天城が膝をつく。


「“原初体”……」


 美月が聞く。


「原初体?」


 天城は答える。


「世界管理局が存在する前」


「創造主が存在する前」


「すべての実験の始まりに作られた存在だ」


 蓮が目を細める。


「じゃあ、こいつが本当の始まり?」


「そうだ」


⸻


■最初の一人


 原初体が空を見る。


「最初に世界が生まれたとき」


「そこには一人の存在しかいなかった」


「それが私だ」


 映像が広がる。


 何もない。


 完全な無。


 そこに、


 一人の男が立っている。


「私は世界を観測した」


「そして理解した」


「世界は不完全だ」


 男の手から、


 光が生まれる。


「だから修正した」


 星が生まれる。


 惑星が生まれる。


 生命が生まれる。


 そして――


 人間が生まれた。


⸻


■しかし


「だが」


 原初体の声が低くなる。


「世界は必ず変化した」


「生命は予測不能だった」


「感情も」


「進化も」


「すべてが計算から外れた」


 直人が聞く。


「だから管理した?」


「そうだ」


「でも、それでも失敗した」


「……」


 原初体は直人を見る。


「だから」


「お前を作った」


⸻


■直人の誕生


 映像が変わる。


 二つの培養槽。


 零。


 直人。


 原初体が二人を見る。


「一人は完全な安定体」


「零」


「もう一人は――」


 直人を見る。


「無限適応体」


 天音が呟く。


「直人……」


「私は二つの可能性を作った」


「完全にするか」


「変化させ続けるか」


 原初体は言う。


「結果は――」


 零を見る。


「私の予想通りだった」


 そして。


 直人を見る。


「予想を超えた」


⸻


■予測不能


 原初体が直人を見る。


「お前は」


「私の設計を超えた」


「だから私はお前を失敗作と呼んだ」


 直人が首をかしげる。


「でも」


「あなたは俺を消そうとしなかった」


 原初体が黙る。


「……」


「どうして?」


 長い沈黙。


「恐れていたからだ」


「何を?」


「お前が――」


 原初体の目が細くなる。


「私を超えることを」


⸻


■直人の力


 直人の周囲に、


 無数の文字が浮かぶ。


【概念干渉】


【因果干渉】


【世界改変】


【無限適応】


 原初体が手を上げる。


 すべての文字が、


 一瞬で消える。


「……!」


 直人の力が、


 完全に消滅した。


 美月が叫ぶ。


「直人さん!」


 天音が駆け寄る。


「直人!」


 直人は自分の手を見る。


「……力がない」


 原初体が言う。


「当然だ」


「お前の力は私が与えたものだ」


⸻


■完全な無力


 原初体が歩く。


「これで、お前は普通の人間だ」


 直人は手を握る。


 何も起こらない。


「……」


 零が叫ぶ。


「逃げて、お兄ちゃん!」


「零」


「この人には勝てない!」


 直人は零を見る。


 そして。


 笑った。


「大丈夫です」


「何が?」


「力がなくても」


 一歩進む。


「俺は俺なので」


⸻


■ただの拳


 原初体が笑う。


「愚かな」


 直人が走る。


 拳を握る。


 何の力もない。


 ただの人間の拳。


 ――ドン!


 原初体の頬に、


 拳が入った。


 全員が凍りつく。


「……」


 原初体の顔が、


 わずかに横を向く。


「……なぜだ」


 直人は拳を振り抜いたまま言う。


「殴れましたね」


⸻


■原初体の動揺


「能力は消した」


「はい」


「概念も」


「はい」


「因果も」


「はい」


「世界との接続も断った」


「そうですか」


 直人は拳を見る。


「でも」


「拳は残ってます」


 原初体が沈黙する。


 そして。


「……理解不能」


 その声に、


 初めて恐怖が混じった。


⸻


■本当の「無限適応」


 天城が呟く。


「そういうことか……」


 蓮が振り返る。


「何が?」


「直人の無限適応は」


 天城は直人を見る。


「能力じゃない」


「存在そのものだ」


 零が目を見開く。


「だから……」


「能力を奪われても」


 天城が続ける。


「新しい自分に適応できる」


⸻


■直人の再起動


 直人の身体に、


 小さな光が灯る。


【環境変化を確認】


【能力:なし】


【外部干渉:遮断】


【適応開始】


 原初体が叫ぶ。


「やめろ!」


 直人が首をかしげる。


「何を?」


「それ以上、適応するな!」


「……」


 直人は笑う。


「無理ですよ」


 文字が一つ浮かぶ。


【自己定義】


 続いて。


【俺は俺】


 さらに。


【能力――不要】


⸻


■新しい力


 直人の拳に、


 これまでとは違う光が宿る。


【自己存在権】


 原初体の表情が崩れる。


「そんなものは――」


 直人が拳を握る。


「今、作りました」


 ――ドン!


 衝撃が世界を走る。


 原初体が後退する。


「……!」


 直人は笑う。


「やっぱり」


「新しい力のほうが楽しいですね」


⸻


■零の選択


 零が立ち上がる。


「お兄ちゃん」


「はい」


「私も戦う」


「危ないですよ」


「妹だから」


 零が拳を握る。


「兄だけに戦わせるわけないでしょ」


 直人は笑う。


「そうですね」


 二人が並ぶ。


「兄妹で」


「一緒に」


 原初体を見る。


⸻


■天音の覚悟


 天音も一歩前へ。


「私も行く」


 直人が驚く。


「天音?」


「私はずっと」


 天音は涙を拭く。


「あなたを観測していた」


「でも今は違う」


 直人を見る。


「あなたの隣にいたい」


 直人は笑う。


「お願いします」


⸻


■仲間が集まる


 美月が前に出る。


「私も!」


 恒一が剣を構える。


「当然だ」


 蓮が肩をすくめる。


「最初からそのつもりだ」


 直人は全員を見る。


「……」


 そして。


「ありがとうございます」


 原初体は、


 その光景を見つめている。


「……理解できない」


「一人で十分なはずだ」


 直人が答える。


「違います」


「みんながいるから」


「俺はもっと強くなれる」


⸻


■原初体の決断


 原初体の身体から、


 巨大な力が溢れ出す。


「ならば」


 世界が崩れ始める。


「お前たち全員を消す」


 零が構える。


 天音が魔力を解放する。


 美月が詠唱する。


 恒一が剣を構える。


 蓮が笑う。


 直人は拳を握る。


「来てください」


 原初体の姿が、


 巨大な光へ変わる。


「これが――」


 世界のすべてが、


 一つの拳へ集まっていく。


「私の最後の力だ」


⸻


■最後の一文


 世界が消える。


 音も。


 光も。


 時間も。


 すべてが無くなる。


 ただ、


 直人たちだけが残っている。


 直人が前を見る。


「……」


 そして。


 暗闇の向こうから、


 原初体が現れる。


 その姿は――


 直人でも、


 人間でもなかった。


 世界そのものを超えた、


 巨大な存在。


『佐伯直人』


『これが――』


『お前が生まれる前から存在していた』


『“本当の私”だ』


 直人は拳を構える。


「じゃあ――」


 笑う。


「初めて会った記念に」


 拳に光が集まる。


「一発、お願いします」


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