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レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


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24/61

最初の失敗作――もう一人の佐伯直人

 ――黒い塔。


 世界の外側に存在する、


 巨大な建造物。


 その頂上に、


 一人の少女が立っていた。


 長い黒髪。


 白い服。


 そして――


 直人と同じ瞳。


『お兄ちゃん』


 その声が響く。


「……俺に妹?」


 直人は呆然としている。


 天音も。


 美月も。


 恒一も。


 蓮も。


 誰も言葉を出せない。


⸻


■少女の名前


 少女が微笑む。


『私の名前は――』


 少しだけ間を置く。


『佐伯零』


 直人が目を見開く。


「佐伯……」


『そう』


「俺と同じ?」


『当然だよ』


 少女は笑う。


『だって私は』


 胸に手を当てる。


『あなたより先に作られたから』


⸻


■最初の実験


 天城が険しい顔をする。


「……話すつもりか」


 零は天城を見る。


『もう隠す必要はないでしょう?』


「まだ試験は終わっていない」


『違うよ』


 零が笑う。


『終わらせるために話すんだよ』


 直人が聞く。


「俺は何なんです?」


 零は答える。


『実験体』


「……」


『世界を維持するための“器”』


『それが、私たち』


⸻


■二人の器


 空中に映像が現れる。


 巨大な研究施設。


 無数の装置。


 その中央に――


 二つの培養槽。


 中には、


 二人の子供。


 一人目。


 少女。


 佐伯零。


 二人目。


 少年。


 佐伯直人。


 美月が息を呑む。


「二人とも……」


 零が続ける。


『世界は一つの器を必要としていた』


『だから最初に私が作られた』


 映像の少女が成長していく。


『でも――』


 画面に赤い文字。


【安定性:低】


【成長性:低】


【適応率:限界】


『私は失敗した』


⸻


■失敗作


 直人が聞く。


「だから失敗作?」


『そう』


「何が駄目だったんです?」


 零は少し笑う。


『私は完成しすぎていた』


「……?」


『成長しない』


『変化しない』


『壊れない』


『完璧に安定していた』


 零の声が少し寂しくなる。


『でも』


『世界は変化する』


『だから私は、世界についていけなかった』


⸻


■二人目


 映像が切り替わる。


 幼い直人。


 泣いている。


 笑っている。


 転んでいる。


 立ち上がる。


 何度も。


 何度も。


 成長していく。


【適応率:上昇】


【成長率:異常】


【限界値:測定不能】


【存在安定度:変動】


 零が言う。


『あなたは私と正反対だった』


『安定しない』


『完成しない』


『でも――』


 直人の映像が、


 笑う。


『止まらなかった』


⸻


■無限適応


 直人が拳を見る。


「だから俺は……」


『そう』


 零が答える。


『あなたは“未完成”だった』


『だから世界に合わせて変化できた』


『そして――』


 零が笑う。


『世界そのものを超えられるようになった』


 天音が呟く。


「未完成だから……最強になった」


 零が答える。


『そういうこと』


⸻


■直人の違和感


 直人はしばらく黙っている。


 そして。


「じゃあ」


「俺たちを作ったのは誰です?」


 零の表情が消える。


『……』


「世界管理局?」


『違う』


「天城?」


『違う』


 零が空を見る。


『もっと上』


 空のさらに上。


 そこに巨大な影が現れる。


『世界を作った存在』


⸻


■創造主


 美月が震える。


「世界を……作った?」


 零が頷く。


『世界管理局は、世界を管理するだけ』


『私たちを作った存在は――』


 黒い塔の奥。


 巨大な扉が開く。


『“創造主”』


 恒一が剣を握る。


「神ってことか?」


『神とは違う』


「じゃあ何だ?」


『世界の外にいる存在』


『世界を作り』


『世界を消し』


『新しい世界を作る』


 直人が聞く。


「じゃあ、その人が全部の黒幕?」


 零は笑う。


『違う』


「……え?」


『創造主ですら』


『誰かに作られた』


⸻


■さらに上


 全員が絶句する。


 天城が初めて声を荒げる。


「やめろ、零!」


『どうして?』


「これ以上話せば――」


『何?』


 零が笑う。


『“上”に気づかれる?』


 その瞬間。


 空が裂けた。


 巨大な目が現れる。


『――警告』


 声が響く。


『情報階層違反』


 零が笑う。


『ほら』


『来た』


⸻


■創造主の使者


 空から、


 一人の男が降りてくる。


 黒い服。


 白い髪。


 無表情。


 その存在だけで、


 世界が静かになる。


 天城が膝をつく。


「……執行官より上」


 蓮が聞く。


「何者だ?」


 天城は答える。


「創造主直属――」


「“終端執行者”」


 男が直人を見る。


「対象、佐伯直人」


 直人が聞く。


「はい」


「命令を伝える」


 男の目が赤く光る。


「第七試験を開始する」


⸻


■第七試験


 空に文字が浮かぶ。


【第七試験】


【対象:佐伯直人】


【対戦対象:佐伯零】


【勝利条件】


【どちらか一方の消滅】


 直人が固まる。


「……」


 零は笑っている。


『私を殺せばいい』


「嫌です」


『どうして?』


「妹だから」


 零の笑顔が止まる。


「会ったばかりですけど」


「俺の妹なんですよね?」


 直人は拳を握る。


「だったら」


「殺す理由がない」


⸻


■零の涙


 零は初めて、


 悲しそうな顔をした。


『……やっぱり』


「?」


『あなたは優しいね』


「普通だと思いますけど」


『それが私にはなかった』


 零の身体から、


 黒い光が溢れる。


『だから私は』


『あなたを殺す』


 直人が構える。


「……分かりました」


 天音が叫ぶ。


「直人!」


「大丈夫です」


 直人は零を見る。


「助けますから」


⸻


■兄妹対決


 ――ドンッ!


 零の姿が消える。


 直人の目の前に現れる。


 拳。


 直人が受け止める。


 ――バァン!


 衝撃で空間が割れる。


「強い……」


 直人が呟く。


 零が笑う。


『当然だよ』


『私はお兄ちゃんより先に完成してるから』


 連続攻撃。


 直人が防ぐ。


 避ける。


 反撃する。


 しかし――


 零はすべて読んでいる。


「……」


 直人が距離を取る。


『どうしたの?』


「いや」


「妹って、強いんですね」


『妹だからって甘く見ないで』


「分かりました」


 直人が笑う。


「じゃあ本気で行きます」


⸻


■覚醒する零


 零の身体から、


 白い光が噴き出す。


【完全安定】


【全能力固定】


【存在崩壊率:0%】


 直人が目を見開く。


「……」


 蓮が呟く。


「零は“完全”なのか」


 天城が答える。


「そうだ」


「だから直人には勝てない」


 蓮が振り返る。


「なぜ?」


 天城は言う。


「完全な存在は――」


 直人を見る。


「成長できない」


⸻


■未完成 vs 完全


 零が突進する。


 直人は避ける。


 一度。


 二度。


 三度。


 そして――


 直人の動きが変わる。


「……!」


 零が驚く。


『さっきより速い』


「そうですか?」


『また適応した……』


 直人が拳を振る。


 零が防ぐ。


 ――ドン!


 零が吹き飛ぶ。


『……!』


 直人が追う。


「さっきの攻撃」


「もう覚えました」


『……』


「だから」


 拳を握る。


「次は効かないです」


⸻


■零の本音


 零が立ち上がる。


 口元から血。


『……ずるい』


「え?」


『私はずっと』


『完璧になるために頑張った』


『失敗しないように』


『壊れないように』


『変わらないように』


 涙が落ちる。


『でも』


『あなたは――』


 零が笑う。


『失敗するたびに強くなった』


 直人は黙る。


『ずるいよ、お兄ちゃん』


⸻


■最後の一文


 零が、


 ゆっくりと両手を広げる。


『だから――』


 世界が白く染まる。


『今度は私も』


『失敗してみる』


 零の身体に、


 初めて亀裂が入った。


 直人が目を見開く。


「零……?」


 零は笑う。


『お兄ちゃん』


『私を――』


 白い光が爆発する。


『ちゃんと“妹”にして』

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