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レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


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22/61

直人の過去――すべての始まり

 ――映像。


 そこに映っていたのは、


 幼い直人だった。


 まだ小さな子供。


 そして。


 その隣には、


 一人の少女が立っている。


 白い服。


 長い髪。


 顔は見えない。


「……誰です?」


 直人が呟く。


 少女は、


 幼い直人の手を握っている。


 そして――


 笑っていた。


⸻


■記憶ではない


 天音が映像を見る。


「これ……」


 美月も息を呑む。


「直人さんの過去?」


 蓮は首を横に振る。


「違う」


「え?」


「これは記憶じゃない」


 蓮は空を睨む。


「記録だ」


 天城零が頷く。


「その通り」


 直人が振り返る。


「どういう意味です?」


「お前自身が知らない過去だ」


「……」


「つまり――」


 天城が言う。


「お前が生まれる前から存在していた記録だ」


⸻


■幼い直人


 映像が進む。


 幼い直人が、


 森の中を走っている。


「待ってよ!」


 少女が後ろから追いかける。


「直人、危ないよ」


「大丈夫!」


 幼い直人が笑う。


 その笑顔は――


 今の直人と同じだった。


「……」


 天音が小さく呟く。


「昔から変わらないんだ」


 美月が笑う。


「本当ですね」


 恒一も頷く。


「馬鹿みたいに真っ直ぐだ」


 直人が苦笑する。


「褒めてます?」


「褒めてない」


⸻


■少女の名前


 映像の中で、


 幼い直人が少女に聞く。


「ねえ」


「なに?」


「君の名前は?」


 少女が笑う。


「まだ教えられない」


「なんで?」


「いつか会うから」


「誰と?」


 少女は直人の胸に手を当てる。


「未来のあなたと」


 映像が止まる。


「……」


 直人は黙る。


「未来の俺?」


 天城が答える。


「そうだ」


「この少女は誰なんです?」


 天城は言わない。


 代わりに――


 映像の少女がこちらを振り向いた。


 そして。


 直人を見る。


「……!」


 直人が息を呑む。


 少女の顔が、


 初めて見える。


⸻


■少女の正体


「……天音?」


 直人の声が震える。


 そこに映っていたのは――


 幼い天音だった。


「え……?」


 天音自身が驚く。


「私……?」


 美月も混乱する。


「どういうこと?」


 恒一が天城を見る。


「説明しろ!」


 天城は静かに言う。


「当然だ」


「彼女は――」


 天城が天音を見る。


「お前と同じ世界の出身ではない」


 天音が凍る。


「……え?」


⸻


■別の世界


 天城が続ける。


「天音は、この世界に生まれた人間ではない」


「そんな……」


「正確には」


 天城が空を指す。


「別世界から送られた“観測者”だ」


 天音は何も言えない。


「私が……観測者?」


「そう」


「何を観測するの?」


 天城は直人を見る。


「佐伯直人」


⸻


■最初の試験


 直人が目を見開く。


「俺を?」


「お前が生まれる前から」


 天城は言う。


「世界管理局は、お前を観測していた」


「なぜ?」


「異常だったからだ」


 空に文字が浮かぶ。


【対象:佐伯直人】


【誕生時点】


【適応率:異常】


【存在安定度:測定不能】


【成長限界:存在せず】


 美月が息を呑む。


「生まれた時から……?」


「そう」


 天城が答える。


「お前には最初から、“限界”がなかった」


⸻


■無限適応の秘密


 直人は自分の手を見る。


「じゃあ」


「俺の力って――」


 天城が答える。


「能力ではない」


「……え?」


「お前の本質だ」


 空に文字が浮かぶ。


【無限適応】


【外部情報を吸収】


【環境に適応】


【能力を獲得】


【概念を理解】


【概念を超越】


 直人が黙る。


 天城は続ける。


「普通の人間は、世界に合わせて生きる」


「だが、お前は違う」


「世界のほうが、お前に合わせて変わる」


⸻


■天音の役割


 天音が震える。


「じゃあ私は……」


「お前は監視役だった」


 天城が言う。


「直人の成長を観測するために、この世界へ送られた」


「……」


「そして」


 天城が続ける。


「お前は観測者として、直人の最も近くにいた」


 天音が直人を見る。


「私……」


「はい」


「最初から……あなたを見てたんだ」


 直人は少し考える。


「そうだったんですね」


「怒らないの?」


「何でですか?」


「騙してたんだよ」


 直人は笑う。


「でも」


「今、一緒にいるじゃないですか」


 天音の目から涙が落ちる。


⸻


■観測者の失敗


 天城の表情が変わる。


「しかし」


「観測は失敗した」


 直人が聞く。


「どうして?」


「観測者が対象に感情を持ったからだ」


 天音が俯く。


「……」


「本来、観測者は対象と接触してはいけない」


「だが」


 天城が天音を見る。


「お前は直人を守るようになった」


 直人が言う。


「それって――」


「規則違反だ」


⸻


■消された記憶


 天城が手を上げる。


 映像が変わる。


 幼い天音が泣いている。


 幼い直人が、


 その手を握っている。


「大丈夫」


「俺がいるから」


 天音が目を見開く。


「……」


 映像の中で、


 何かが起こる。


 白い光。


 そして――


 天音の記憶が、


 消されていく。


「嫌……!」


 天音が頭を抱える。


「私……」


「この記憶を……」


 天城が言う。


「消した」


⸻


■直人の約束


 映像の最後。


 幼い直人が、


 泣いている天音に言う。


「また会おうね」


「……うん」


「絶対だよ」


「絶対?」


「うん」


 幼い直人は笑う。


「俺、忘れないから」


 映像が消える。


 天音は涙を流している。


「……覚えてなかった」


 直人が言う。


「俺もです」


「でも……」


 直人は天音を見る。


「約束は覚えてたのかもしれませんね」


⸻


■第五試験の本当の意味


 天城が静かに言う。


「だから第五試験を行う」


 直人が振り返る。


「何を?」


「お前に選ばせる」


 空に文字が浮かぶ。


【第五試験】


【対象:佐伯直人】


【最重要選択】


【観測者・天音】


【世界】


 直人が見る。


「……」


 天城が言う。


「天音を選べば、世界が崩壊する」


「世界を選べば、天音は消える」


 美月が叫ぶ。


「そんなの卑怯です!」


 恒一も怒る。


「直人に選ばせるな!」


 蓮が剣を構える。


「天城……」


「何だ?」


「お前たちは何を恐れている?」


 天城は黙る。


 そして。


「直人だ」


⸻


■恐怖


 天城が初めて、


 感情を見せる。


「世界を壊す存在なら、まだ対処できる」


「だが――」


 直人を見る。


「世界よりも大切なものを選べる存在は」


「管理できない」


 直人が聞く。


「それが怖い?」


「そうだ」


 天城は答える。


「だからお前を試す」


⸻


■直人の答え


 直人は、


 天音を見る。


 天音は首を横に振る。


「直人」


「はい」


「私を選ばないで」


「……」


「世界を選んで」


 直人は黙っている。


「私一人が消えれば」


「みんなが助かる」


「だから――」


 直人が天音の手を握る。


「嫌です」


「直人……」


「俺は」


 直人は笑う。


「天音も」


「みんなも」


「世界も」


「全部選びます」


 天城が目を見開く。


「……不可能だ」


 直人は拳を握る。


「だったら」


 世界が震える。


「可能にします」


⸻


■新たな力


【概念干渉】


【運命干渉】


【世界改変】


 さらに――


【因果干渉】


 新しい文字が浮かぶ。


【獲得】


 蓮が驚く。


「因果まで……」


 直人は拳を見る。


「これで」


 天音を見る。


「全部助けられますか?」


 天城は答えない。


 ただ。


 初めて後退した。


⸻


■最後の一文


 世界の外側。


 さらにその奥。


 誰も存在を知らない場所で――


 一つの目が開く。


『……因果干渉まで到達したか』


 別の声が響く。


『予測値を超えています』


『ならば』


 巨大な存在が立ち上がる。


『最後の試験を開始する』


 そして。


【第六試験】


【対象:佐伯直人】


【試験内容――】


【“自分自身”を倒せ】


 直人の目の前に、


 もう一人の「佐伯直人」が現れた。

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