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レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


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18/61

仲間が、敵になる

 ――戦場になった。


 空から無数の魔物が降り注ぐ。


 地面から黒い腕が伸びる。


 遠くでは巨大な竜が咆哮していた。


「来ます!」


 美月が叫ぶ。


 恒一が剣を振るう。


 ――ザンッ!


 一体。


 二体。


 三体。


 魔物が次々と消えていく。


「数が多すぎる!」


 恒一が叫ぶ。


 蓮が黒い光を放つ。


「なら、数を減らす」


 ――ドォン!


 大地が吹き飛ぶ。


 直人は拳を握る。


「俺も行きます」


「待て」


 蓮が止める。


「何です?」


「お前は動くな」


「どうして?」


「……嫌な予感がする」


⸻


■違和感


 直人が周囲を見る。


 魔物。


 敵。


 そして――


 仲間。


「……あれ?」


 直人が呟く。


 美月が振り返る。


「どうしました?」


「天音は?」


「え?」


 全員が周囲を見る。


 ――いない。


 さっきまでいたはずの天音が、


 消えている。


「天音!」


 美月が叫ぶ。


 返事はない。


 恒一が走り出す。


「探すぞ!」


 直人も続こうとする。


 しかし。


 蓮が腕を掴んだ。


「待て」


「でも天音が!」


「違う」


「何が?」


 蓮は険しい顔をしている。


「これは――」


 空を見上げる。


「運命が動いた」


⸻


■天音


 暗闇。


 天音は一人で立っていた。


「……ここは?」


 目の前に巨大な扉がある。


 扉には、


 一つの文字。


【選択】


 天音が触れる。


 扉が開く。


 その先にいたのは――


 直人だった。


「直人……?」


 しかし。


 直人は血まみれだった。


「天音」


「どうしたの!?」


「俺を殺して」


「……え?」


「俺を殺せば、みんな助かる」


 天音は首を振る。


「そんなの……」


 直人が笑う。


「本当だよ」


 天音の目に涙が浮かぶ。


「嘘……」


「嘘じゃない」


 その瞬間。


 別の映像が現れる。


 美月。


 恒一。


 蓮。


 全員が死んでいる。


「……!」


 天音が息を呑む。


 そして声が響く。


『選べ』


『佐伯直人を殺す』


『それとも――』


『全員を失う』


⸻


■運命の罠


 天音は震えている。


「……そんなの」


 拳を握る。


「選べるわけない」


『選択を要求する』


「嫌」


『選択しろ』


「嫌!」


『ならば――』


 世界が赤く染まる。


『お前自身が敵になる』


 天音の身体に黒い紋様が浮かぶ。


「……っ!」


 目が赤く染まる。


「私は……」


 天音は自分の胸を押さえる。


「私は……直人を……」


 その瞬間。


 ――ドン!


 扉が吹き飛んだ。


⸻


■直人、登場


「天音!」


 直人が走り込んでくる。


「直人……!」


 天音が振り返る。


 その手には――


 黒い剣。


「来ないで!」


 直人が止まる。


「どうして?」


「私は……あなたを殺さなきゃいけない」


「そうなんですか?」


「そうしないと、みんなが死ぬ」


 直人は少し考える。


「……じゃあ」


 拳を下ろす。


「殺していいですよ」


「……え?」


 天音が目を見開く。


「直人……?」


「でも」


 直人は笑う。


「俺も抵抗します」


⸻


■戦い


 天音が消える。


 ――シュン!


 直人の目の前に現れる。


 黒い剣が振り下ろされる。


 ――ガキン!


 直人が拳で受け止める。


「速いですね」


「……っ!」


 天音が連続で斬り込む。


 直人は避けない。


 受ける。


 防ぐ。


 しかし――


 攻撃しない。


「どうして反撃しないの!?」


「天音だから」


「関係ない!」


 剣が直人の肩を切り裂く。


 血が落ちる。


「直人!」


「大丈夫です」


「どうして……」


 天音の手が震える。


「どうして殴らないの……!」


 直人は答える。


「だって」


「天音は俺を殺したいんじゃなくて」


「みんなを助けたいんですよね?」


 天音の目から涙が落ちる。


「……そう」


「なら」


 直人は一歩近づく。


「俺が勝てばいい」


⸻


■信じる


 直人は拳を握る。


 しかし。


 拳に能力は集まらない。


 概念干渉も。


 再構築も。


 世界改変も。


 何も起こらない。


「……?」


 直人が驚く。


 声が響く。


『選択不能』


『対象は仲間への攻撃を拒否』


『能力制限を開始』


 直人は笑う。


「なるほど」


 天音が叫ぶ。


「直人、逃げて!」


「嫌です」


「死ぬよ!」


「それでも」


 直人は天音を見る。


「俺は天音を信じます」


⸻


■天音の涙


「……っ」


 天音の剣が止まる。


「私は……」


「はい」


「あなたを殺すかもしれない」


「大丈夫です」


「みんなを殺すかもしれない」


「大丈夫です」


「私が……私じゃなくなるかもしれない」


 直人は静かに言う。


「それでも天音です」


 天音の瞳が揺れる。


「……どうして」


「一緒にいたから」


「……」


「だから分かります」


 直人は笑う。


「天音は、俺を殺せない」


⸻


■運命の敗北


 ――ピシッ。


 天音の黒い剣に亀裂が入る。


『……選択結果に異常』


『対象、選択を拒否』


『未来予測――失敗』


『再計算』


『再計算』


『再計算――』


 直人が空を見る。


「また計算してます?」


『……』


「無駄ですよ」


 拳を握る。


「俺たちは」


 天音の肩に手を置く。


「決められた通りには動かないので」


 ――パリン。


 世界が割れた。


⸻


■戻ってきた天音


 暗闇が消える。


 天音が地面に倒れる。


「天音!」


 直人が受け止める。


 美月が駆け寄る。


「天音!」


 恒一も息を切らしている。


「無事か!?」


 蓮が空を見る。


「……やったな」


「何が?」


「運命の強制選択を破った」


 直人は首をかしげる。


「そんな大げさなことしました?」


 美月が叫ぶ。


「十分大げさです!」


⸻


■しかし


 そのとき。


 天音の胸に、


 小さな黒い紋様が残っていることに気づく。


「……これ」


 天音が胸元を見る。


 蓮の表情が変わる。


「触るな」


「え?」


「それは消えていない」


 直人が聞く。


「何なんです?」


 蓮は答える。


「運命の種だ」


「種?」


「ああ」


 天音の紋様が一瞬だけ光る。


『対象:天音』


『次期試験対象として登録』


 直人の表情が変わる。


「……何?」


 声が続く。


『次の試験――』


『対象を一名追加』


 美月が震える。


「まさか……」


『対象:天音』


⸻


■第三試験


 世界の外側。


 巨大な存在が笑う。


『一人を殺すだけでは足りない』


『一人を敵にするだけでも足りない』


『ならば――』


 巨大な目が開く。


『仲間そのものを試験にする』


 そして。


【第三試験】


【対象:佐伯直人】


【追加対象:天音】


【試験内容――】


 一文字ずつ浮かび上がる。


【どちらか一方を選べ】


 直人が空を見上げる。


「……また選択ですか」


 蓮が剣を抜く。


「違う」


「え?」


 蓮は静かに言った。


「今度は――」


「世界がお前に、天音を殺せと言っている」


 直人の拳が、


 ゆっくりと握られる。


⸻


■最後の一文


 天音が直人を見る。


「直人」


「はい」


「もし私が敵になったら――」


 直人は即答する。


「その時は」


 拳を握る。


「俺が迎えに行きます」


 天音の目から、


 涙が一粒落ちた。


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