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レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


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17/61

運命が、敵になる

 ――世界が、止まった。


 風が止まる。


 雲が止まる。


 美月の髪も。


 恒一の剣も。


 そして――


 直人の呼吸さえも。


「……え?」


 美月だけが声を漏らす。


 しかし。


 その声すら途中で止まった。


 世界から、


 “時間”という概念だけが消えていた。


⸻


■静止した世界


 直人は動いていた。


 ゆっくりと拳を握る。


「……またですか」


 周囲を見回す。


 誰も動かない。


 恒一も。


 美月も。


 天音も。


 そして――


 黒瀬蓮だけが動いていた。


「気づいたか」


 蓮が言う。


「はい」


「なら話が早い」


 蓮は空を見上げる。


「始まった」


「何が?」


「第二試験だ」


⸻


■運命の宣告


 空に文字が浮かぶ。


【第二試験】


【対象:佐伯直人】


【対抗条件:運命干渉】


【勝利条件】


【対象が定められた結末を回避すること】


 直人が首をかしげる。


「定められた結末?」


 蓮が答える。


「つまり――」


 空に新しい文字が浮かぶ。


【佐伯直人】


【死亡】


 直人はそれを見て、


「……俺、死ぬんですか?」


 蓮は静かに答えた。


「そういうことだ」


⸻


■未来


 直人の目の前に、


 一つの映像が現れる。


 そこには――


 血まみれの直人がいた。


 胸を貫かれている。


 その後ろには、


 泣き崩れる天音。


 叫ぶ美月。


 剣を折られた恒一。


 そして――


 蓮が立っている。


 直人は映像を見る。


「これが未来?」


「ああ」


「俺が死んだ後?」


「ああ」


「……みんな泣いてますね」


 直人は少し困ったように笑う。


「それは嫌だな」


⸻


■最初の攻撃


 ――ズドン!


 突然。


 空から巨大な槍が落ちてくる。


 直人は横へ飛ぶ。


 地面が爆発する。


「うわっ!」


 蓮が叫ぶ。


「避けろ!」


 次の瞬間。


 無数の槍。


 炎。


 雷。


 巨大な斬撃。


 あらゆる攻撃が、


 “未来から現在へ”流れ込んでくる。


「何なんですかこれ!」


「運命だ!」


「運命ってこんな物理的なんですか!?」


「違う!」


 蓮が叫ぶ。


「これは、お前が死ぬために世界が選んだ手段だ!」


 直人は攻撃を避けながら笑う。


「なるほど!」


「笑ってる場合か!」


「いや!」


 直人は拳を構える。


「分かりやすくて助かります!」


⸻


■運命を殴る


 直人が拳を振るう。


 ――ドン!


 空間が震える。


 しかし。


 何も壊れない。


「……あれ?」


 直人が拳を見る。


 蓮が言う。


「運命には形がない」


「じゃあ殴れない?」


「そういうことだ」


 直人は少し考える。


「……」


「どうした?」


「だったら」


 直人は拳を握り直す。


「形を作ればいい」


 蓮の表情が変わる。


「お前……」


 直人の拳に、


 黒い亀裂が走る。


【概念干渉】


【対象:運命】


【接触不能】


【再定義を試行】


「運命って――」


 直人が笑う。


「要するに、“こうなる”って決めてるだけですよね?」


 蓮が答える。


「そうだ」


「じゃあ」


 直人が拳を振り抜く。


「“こうならない”って決めればいい」


 ――ドンッ!


 世界が揺れた。


⸻


■未来が変わる


 直人の目の前にあった映像。


 血まみれの自分。


 泣いている天音。


 叫ぶ美月。


 折れた恒一の剣。


 その映像が――


 突然、崩れた。


「……!」


 蓮が目を見開く。


「未来が……消えた?」


 直人は笑う。


「はい」


「お前……」


「何です?」


「運命を殴ったのか?」


「たぶん」


 蓮は黙る。


 そして小さく呟く。


「……本当に化け物だな」


⸻


■しかし


 ――静寂。


 攻撃が止まった。


 世界が元に戻る。


 時間が動き始める。


「……?」


 美月が瞬きをする。


「何……今の?」


 恒一も周囲を見る。


「何かあったのか?」


 天音だけが直人を見る。


「直人」


「はい?」


「あなた……」


 天音の顔が青ざめる。


「今、運命を変えた?」


「そうみたいです」


「……」


 天音は何も言えない。


⸻


■新しい未来


 そのとき。


 空に新しい文字が浮かんだ。


【未来改変を確認】


【予定結末:消失】


【代替結末を生成】


 直人が空を見る。


「……まだ終わってない?」


 蓮が答える。


「当然だ」


 文字が変わる。


【新規結末】


【佐伯直人――】


 全員が息を呑む。


【世界の敵になる】


 美月が叫ぶ。


「どういう意味!?」


 恒一が剣を構える。


 天音が直人を見る。


 そして。


 直人の身体に、


 黒い紋様が浮かび始めた。


「……これ、何です?」


 蓮が後退する。


「近づくな」


「蓮?」


「それは――」


 蓮の顔に初めて恐怖が浮かぶ。


「“世界敵性認定”だ」


⸻


■世界が敵になる


 空。


 大地。


 ダンジョン。


 街。


 海。


 すべてに同じ文字が浮かぶ。


【敵性個体:佐伯直人】


【排除対象】


【優先度:最上位】


 美月が叫ぶ。


「直人さんは何もしてない!」


 恒一も叫ぶ。


「こんなの間違ってる!」


 しかし。


 世界は答えない。


 代わりに――


 遠くから無数の魔物が現れた。


 空には巨大な竜。


 地上には軍勢。


 そして。


 人間まで武器を構え始める。


「……世界中が」


 天音が呟く。


「直人を敵として認識した」


⸻


■蓮の選択


 蓮が直人の前に立つ。


 直人が言う。


「蓮?」


「動くな」


「どうして?」


「俺が決める」


 蓮は右目を赤く光らせる。


「お前を殺すか」


「……」


「お前と一緒に戦うか」


 直人は笑う。


「どっちにするんです?」


 蓮は少し黙った。


 そして――


 剣を抜いた。


「決まってる」


 直人の隣に立つ。


「俺も世界の敵になる」


⸻


■第二試験・後半


 空から声が響く。


『対抗個体、反逆を確認』


『黒瀬蓮――敵性認定』


『第二試験条件変更』


 直人と蓮の前に、


 無数の敵が現れる。


『対象二名を排除せよ』


 直人は拳を握る。


「蓮」


「何だ」


「これって」


「……ああ」


 二人が並んで前を見る。


 美月が杖を構える。


 恒一が剣を構える。


 天音が静かに前へ出る。


「全員でやろう」


 直人が笑う。


「はい!」


 その瞬間。


 世界中から、


 無数の敵が押し寄せた。


⸻


■最後の一文


 遥か上空。


 誰にも見えない場所で。


 “運命”そのものが、


 初めて表情を持った。


『……面白い』


『ならば』


『次は、“仲間”を奪おう』

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