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月と二人の勇者  作者: あると


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第九章 オルタネーション3


サンは震える声で叫んだ。


「ルナ……お前……なんでだ……!」


怒りとも悲しみともつかない感情が混ざり、

その声は震えていた。


サンの剣が迫る。

だが──

ルナは剣が触れる寸前、自らの剣を霧のように消した。


次の瞬間、

ルナの身体から力が抜け、

静かに地面へ崩れ落ちる。


同時に、

ルナの手の甲の紋章が淡い光を放ち始めた。


その光は形を変え、

粒子となってサンの紋章へ吸い込まれるように重なり──

眩い輝きが二人を包んだ。


「ルナぁぁぁぁーーーっ!!」


ルミナの悲鳴が空気を裂き、

彼女は駆け寄って回復魔法を放つが血が後から溢れて辺りは真っ赤に染まっていた。


淡い光がルナを包むが、

ルナは静かに首を振った。


「……リフレ……お前の予言も……大したことないな……」


かすかな笑みを浮かべ、

ルナはサンを指さす。


「これで……サンが……“完全な勇者”だ……」


しかしリフレは、

その言葉を聞いても余裕の笑みを崩さなかった。


「完全な勇者……?

 ふふ……本当にそう思うのかしら」


ルナは眉をひそめ、サンを見る。


そして息を呑んだ。


サンの首の黒い痣が、

呪印のような紋様へと変化し魔王印が現れ、

全身へ触手のように広がっていく。


サンの手の甲の紋章は、

ルナの光を取り込んだことで

眩いほどに輝き、形を変えていた。


「なんでだよ……サンが勇者なんだろ」

ルナは震える声で呟く。


その時──

サンの紋章から、幼い声が響いた。


『……もう、だめだよ……』


光が弾け、

小さな影が飛び出す。


それは幼い子どものような輪郭をした光の存在で、

ルナとルミナのもとへふわりと近づいた。


『ぼくの……最後の力で……』


光は二人を包み込み、

その姿はゆっくりと薄れていく。


「ルナ! ルナぁぁぁ!!」

ルミナの叫びが響く。


だが、

二人は光に包まれたまま──

ふっと消えた。


まるで、

この世界から切り離されたかのように。


リフレはその光景を見て、

狂気じみた笑みを浮かべた。


「ふふ……ふふふ……

 私の予言……いえ、“あの方”──

 女神様のお告げの通り……!」


両手を天に掲げ、叫ぶ。


「完璧な魔王が誕生なされた……!

 さあ……約束通り……

 私に“不死の力”を……!」


しかし──

何も起きなかった。


風も、光も、声もない。


リフレの笑顔が凍りつく。


「……え?

 なんで……なんでだ……

 まさか……私を裏切るのですか……?」


その瞬間、

空気がひときわ静まり返った。


プツン。


糸が切れるような小さな音がして、

リフレの身体から力が抜け落ちる。


彼は人形のように崩れ落ち、

輪郭が揺らぎ──

煙のように消えていった。


跡形もなく。


ーーー


ルミナを包んだ光は、

温かいのに、どこか胸が締めつけられるような感触を持っていた。


視界が白く溶け、

音が遠ざかり、

世界がゆっくりと反転する。


次の瞬間──

ルミナは 自分ではない誰かの視点 に立っていた。


風が歌い、

大地が呼吸し、

世界樹が天へと伸びる。


その中心に立つ存在──

精霊王。


声はない。

だが、世界そのものが語りかけてくる。


この世界は、精霊王が治めていた

森も海も空も、

すべてが調和し、

争いという概念すら存在しなかった。


精霊たちは歌い、

大地は微笑み、 エルフと獣人は安らかに暮らし、そして世界はひとつの生命として脈動していた。


ルミナは胸が温かくなるのを感じた。

「……こんな世界だったんだ……」


邪神と女神が“外側から侵略”した

空が裂け、

二つの光が降り立つ。


ひとつは黒い影を引きずる“邪神”。

もうひとつは眩い光を纏った“女神”。


だが、その光は慈愛ではなく、

支配の輝き だった。


世界は震え、

精霊王は初めて“敵”という存在を知った。


精霊王を封じるために、魔王と勇者が作られた

邪神は“魔王”を、

女神は“勇者”を創り出した。


どちらも、

精霊王を封じるための“鍵”として造られた存在。


争いは世界を裂き、

精霊たちは散り、

世界樹は弱り始めた。


ルミナは息を呑む。

「……勇者も……魔王も……最初から……」


女神は世界を滅ぼすために“魔王サン”へ勇者の紋章を与えた

光景が変わる。


幼い赤子のサンが、

女神の前に眠っていた。


女神は微笑み、

サンの胸に手をかざす。


勇者の紋章が、魔王の器に刻まれる。


その瞬間、

サンの身体の奥で何かが軋むように震えた。


女神の声が響く。


『この世界は不要。

 魔王と勇者の力が揃えば、滅びは完成する』


ルミナの心臓が強く跳ねた。


「……サン……あなた……最初から……」


光が消え、ルミナは目を覚ます

記憶の残滓が薄れ、

光がゆっくりと消えていく。


ルミナはまぶたを開いた。


そこは──

一面の花畑。


風が優しく吹き、

色とりどりの花が揺れている。


だが、その美しさはどこか“現実ではない”。

音が少なく、

風は一定のリズムで吹き、

花は同じ方向へ揺れていた。


まるで、

世界そのものが誰かの夢の中にあるように。


ルミナは胸に手を当て、

震える声で呟いた。


「……ここは……どこ……?

 サン……ルナ……どこにいるの……?」


すると

「……ここは……どこだ……?

 俺は死んだのか……?」

ルナはむくりと起き上がり寝ぼけたように呟いた。


そして花畑の奥で、

かすかな光が揺れた。


まるで、

誰かがルミナを呼んでいるように。


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