第八章 リメインズ2
ヘイズはサンたちに気づくと、
ゆっくりと目を細めた。
「……これはこれは、勇者様。
あの時、死んだはずでは?」
乾いた声が荒野に響く。
そして、誰もいない横へ視線を向けた。
「そうでしょう?」
その瞬間、空気が歪んだ。
黒い靄が地面から立ち上がり、
ゆっくりと“人の形”を成していく。
サンたちは息を呑んだ。
靄が晴れた時、そこに立っていたのは──
「……ルビー……?」
アリスの声が震えた。
だが、それは“ルビー”ではなかった。
赤かった髪は漆黒に染まり、
瞳は魔獣のように赤黒く輝き、
肌は雪のように白く、血の気がない。
まるで“死体”そのものが歩いているようだった。
三人とも言葉を失い、
荒野に沈黙が落ちる。
アリスが震える声で呟いた。
「ルビー……会いたかったよ……」
涙が頬を伝う。
黒いルビーは、ゆっくりと笑った。
「ねぇ、サン……
あなた、私を見捨てて逃げたのよね……?
勇者なのに」
その笑みは、かつての彼女のものではなかった。
サンは顔を歪め、叫んだ。
「違う!!
俺だって……俺だって……!」
言葉が続かず、下を向く。
ルビーは楽しげに喉を鳴らした。
「ふふ……いいこと思いついたわ」
手のひらに炎が集まり、
槍の形を成す。
「あなたも……私と同じ苦しみを味わえばいいのよ」
アリスが叫んだ。
「やめて!!」
ルビーはアリスに視線を向け、
冷たく笑った。
「あぁ……あなたもいたわね」
その瞬間、ヘイズが動いた。
「では、あとは任せましたよ」
煙のように姿を消し──
次の瞬間、サンの背後に現れた。
そして王都の方向へ、
ゆっくりと歩き出す。
「待て!!」
サンが追おうとした瞬間──
「まずはあなた」
ルビーがアリスへ向けて炎の槍を放った。
アリスは目を固く閉じる。
──当たった。
そう思った瞬間、
槍は砕け散り、光の粒となって消えた。
ルビーの視線が横へ滑る。
「そういえば……あなたもいたわね」
ルミナが世界樹の杖を構えていた。
その瞳は揺れていない。
ルビーは目を細めた。
「中級魔法も使えるようになったの?」
ルミナは静かに答えた。
「初級よ……
でも、特別製だから」
杖の先に二つの属性が重なり、
光が弾ける。
放たれた魔法はルビーの頬をかすめ、
白い肌に赤い線を刻んだ。
血が一滴、地面に落ちる。
ルビーはその血を指で拭い、
ゆっくりと舐めた。
そして──
狂気じみた笑みを浮かべた。
「……いいわ。
遊んであげる」
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