第八章 リメインズ
サンたちは城門を抜け、
荒野へと続く乾いた道を進んでいた。
空気は重く、
風はどこか焦げた匂いを運んでくる。
アリスがサンの横に並び、眉をひそめた。
「ねぇサン、本当に場所わかるの?」
サンは前を向いたまま、淡々と答えた。
「未来視で調べた。もう把握してる」
アリスはサンの顔を覗き込み、息を呑んだ。
「ちょっ……片目、また白く濁ってるじゃん!
本当に大丈夫なの?」
「すぐ戻る」
サンは軽く言い放つが、
その声には疲労が滲んでいた。
アリスはさらに問い詰める。
「でさ、あいつ――ヘイズに攻撃効かなかったけど、対策あるの?」
サンは短く息を吐いた。
「……なんとかなる。
勇者だから、やらなきゃいけないんだ」
アリスは呆れたように肩をすくめた。
「またそれ……」
その時、ルミナがそっと口を開いた。
「そういえば……勇者って、何なの?」
サンの足が一瞬だけ止まる。
そして、ゆっくりと答えた。
「勇者とは……
仲間を、人々を守るために……
女神がくれた“希望の力”だ」
その声はどこか遠く、弱々しかった。
「なのに……俺は守れなかった。
ルビーを……
……俺が代わりに死ぬべきだったんだ」
顔が歪み、拳が震える。
ルミナは慌てて首を振った。
「そんなことない!
ルナだったら、自分の信念のために――」
「違う!!」
サンの叫びが荒野に響いた。
「アイツは裏切ったんだ!
勇者のくせに魔族と組んで……
お前を……ルミナを殺そうとした!!」
怒りで声が震えていた。
その奥には、裏切られた痛みが滲んでいた。
ルミナは唇を噛みしめ、静かに言う。
「何か訳があるんだよ....きっと...」
サンは乾いた笑いを漏らした。
「もうアイツは勇者じゃない」
それ以上は何も言わず、黙り込んだ。
ルミナの脳裏に、
ルナが言った言葉が蘇る。
――勇者は、女神の呪いだ。
胸の奥がざわついた。
その時だった。
アリスが突然、前方を指差した。
「ねぇ……あれ、何?」
三人は足を止めた。
荒野の先――
地面一面に、何百もの“溶けた鎧”が散らばっていた。
鉄が焼け、歪み、
まるで人がそのまま溶け落ちたような形。
風が吹き抜けるたび、
金属片がカラカラと乾いた音を立てる。
そしてその奥に――
ひとり、黒い影が立っていた。
動かない。
ただ、こちらを見ている。
サンの喉がひくりと動いた。
「……ヘイズだ」
空気が凍りついた。
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