表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月と二人の勇者  作者: あると


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/68

第六章 獣人の村8

森の奥へと続く血の跡を追い、

ルナとルミナは息を切らしながら開けた場所へ飛び込んだ。

そこで目にした光景に、二人は息を呑む。

血まみれのリフレが立ち尽くし、

その足元には──

シンハが横たわっていた。

「……シンハ……」

ルナは呟き、

胸の奥がきしむように痛んだ。

次の瞬間、

その痛みは怒りへと変わり、

ルナの瞳は鋭くリフレを射抜いた。

リフレは口元を歪め、

一つ目を細めて笑う。

「ずいぶん遅かったわね……

こいつはもう手遅れよ」

その声は、

死を愉しむ者のそれだった。

「それに──

三人でも勝てなかったのに、

二人でどうにかなるとでも?」

挑発するような声。

だがルナは即座に叫んだ。

「三人だ!!」

リフレの笑みが一瞬だけ止まる。

「何をバカなことを。こいつはも──」

言い終わる前に、

ルナが低く言い放った。

「お前の傷を見ろ」

リフレは一つ目を下へ向けた。

自分の身体──

肩、胸、腹、腕。

そこには深々と刻まれた爪痕と斬撃。

黒い血が止まらず流れ落ちている。

ルナは一歩、前へ踏み出した。

「その傷は……

シンハが命がけでつけたものだ」

剣を構え、

怒りと覚悟を宿した瞳でリフレを睨む。

「だから──

あとは二人でトドメを刺すだけだ」

リフレは鼻で笑った。

「戯言を……!」

次の瞬間、

リフレの身体から衝撃波が放たれた。

空気が裂け、

地面がえぐれ、

木々が悲鳴をあげる。

ルナは瞬時に身を翻し、

衝撃波を紙一重で避けながら、

リフレへ斬りかかった。

剣が風を切り、

リフレの血の匂いがさらに濃くなる。

リフレは血まみれの身体で、それでも余裕の笑みを浮かべながら、

迫りくるルナの斬撃を左の爪一本で受け止めた。

ギィンッ──!

金属が軋むような音が森に響く。

「お前など……片手で充分よ」

リフレは嗤い、左腕に力を込めてルナを押し返した。

「こいつ……強い!」

ルナは歯を食いしばりながら叫ぶ。

その声を聞きながら、ルミナは必死にリフレの動きを観察していた。

血まみれの右腕──一度も動かしていない。

(……右手が……使えない?)

「ルナ! 右側が弱点よ!」

ルミナは叫ぶと同時に、

氷の矢を生成し、風魔法で加速させて撃ち出した。

ヒュッ──!

氷の矢は一直線にリフレの右腕へ飛び、

深々と突き刺さった。

「ぐっ……!」

リフレの身体が大きく揺れ、

一つ目が怒りに震える。

「ルナ! 右側から攻めて!!」

ルミナが叫んだ瞬間──

リフレの身体から、

怒りに任せた無数の衝撃波が放たれた。

ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ!

空気が裂け、地面がえぐれ、

木々が悲鳴をあげる。

ルナの身体は吹き飛ばされ、

ルミナの方へ弾き飛ばされ──

崖の縁へ叩きつけられた。

足元の地面が崩れ、

崖の下には激流の川が渦を巻いている。

リフレは嗤った。

「右爪が使えなくても……お前らなどどうにでもなるわ」

そして、

ルナを見下ろしながら言葉を続けた。

「闇の勇者……

お前は人間から嫌われているのに、

なぜ味方する?」

「……うるせえ」

ルナは低く唸るように言った。

リフレは口角を吊り上げる。

「私はお前の紋章のこと……

知りたいことは何でも教えてやる。

それと──

お前を“完璧な勇者”にしてやることもね」

一つ目が妖しく光る。

「さあ……こっちに来い」

リフレは血まみれの右手を差し出した。

その瞬間、

ルナはルミナを振り返り、短く言った。

「……ルミナ。逃げろ」

「え……?」

ほんの一瞬だけ、

ルナの手が震えた。

だが次の瞬間──

ルナは剣を振り下ろし、

自分とルミナの間にある崖の地面を切り裂いた。

バキィッ──!

地面が崩れ、

ルミナの足元が消える。

「やだ……やだよ……ルナ……行かないで……!」

ルミナは激流へ落ち、

白い手が空を掴むように伸び──

激流に呑まれ、姿が消えた。

世界が一瞬、静まり返った。

ルナはその姿を見つめ、

静かに呟いた。

「……生きろ」

そして、

シンハの亡骸へ一瞬だけ視線を落とし、

自分の“腕”に刻まれた紋章へ目をやる。

黒い紋章が、

まるで呼応するように脈打った。

ルナは剣を構え直し──

ゆっくりと、

リフレのもとへ歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ