第六章 獣人の村
森を抜けた瞬間、視界が一気に開けた。
鏡のように澄んだ巨大な湖が、夕陽を受けて金色に輝いている。
「わぁぁぁ……!」
ルミナは思わず声を漏らした。
湖の広さと美しさに、胸が高鳴る。
地図を広げ、小さな島を指さす。
「ここ……あそこかな。でも、どうやって行くの? あんなところ……」
ルナが前に出る。
「こっからは俺の出番だな」
「まさか泳いで行くんじゃないでしょうね」
「バーカ。泳いだら湖の主に食われるぞ」
「じゃあ、どーすんのよ」
「言ったろ? マブダチがいるって」
そう言って、湖とは逆方向の藪へずかずか入っていく。
「もー……ほんとにここで合ってるの?」
「任せろ」
「あなたは信用できないのよ……」
ルミナの小さな呟きは、藪をかき分ける音にかき消された。
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藪を抜ける頃には、二人とも小さな傷だらけになっていた。
その先に、ぽっかりと口を開けた小さな洞窟がある。
ルナは慣れた手つきで松明を作り、火を起こそうとする。
「はい」
ルミナが指先で火を灯すと、松明が一瞬で明るく燃え上がった。
「……便利だなぁ、お前の魔法」
ルナは素直に感心したように呟く。
洞窟の中はひんやりとしていて、松明の光が壁に揺れる。
歩きながら、ルナがぽつりと言った。
「お前、変わったな」
「なにが?」
「雰囲気。最初に会ったときは、しょぼくれてたのに」
「へ、変かな……?」
「……こっちのほうがいい」
その小さな声に、ルミナの顔は一瞬で真っ赤になった。
視線を落とし、二人の間に気まずい沈黙が落ちる。
耐えきれなくなったルミナが話題を変える。
「ねぇ、マブダチってどんな人なの?」
「虎の獣人だ。強いぞ。まだ決着ついてねぇんだ」
ルナは楽しそうに笑った。
「お前の魔法、ほんと便利だな。師匠とかいるのか?」
ルミナはルビーのことを話す。
サンのパーティのことも。
ルナの表情が少しだけ変わる。
「……光の勇者か。いいやつか?」
「強くて優しいよ。でも、めっちゃ無口」
ルミナが笑うと、ルナは黙ってその声を聞いていた。
「ねぇ、聞いてるの?」
「出口だ」
松明の光が薄れ、洞窟の先に明るい森が広がっていた。




