第四章 迷いの森6
「獣人の村に……あなたをお待ちしている方がいます」
里長の少女は静かにそう告げると、
懐から一枚の古びた地図を取り出し、ルミナへ差し出した。
ルミナは地図を見つめ、首をかしげる。
「獣人の村……?」
すると横からルナが胸を張った。
「獣人の村ならよく知ってる!
地図なんかいらん、マブダチがいるんだよ」
ルミナは半眼になった。
「本当に? ここに来る時、迷ってたよね……?」
「うっ……あれは……その……」
ルナは言葉に詰まり、
気まずそうにラクマの方へ歩いていき、
誤魔化すように酒をぐいっと飲み始めた。
ルミナはため息をつき、地図を受け取る。
その時──
里長の少女が、ふっと寂しげに微笑んだ。
「……あの方の役目をいただき、
私は……この時を、何万年も生きて待っていました」
ルミナは驚いて顔を上げる。
里長は世界樹の方へ視線を向け、
静かに続けた。
「世界樹から離れることができなくなっても……
この役目は、呪いなんかではありません。
誇るべきものなのです」
その声は強くあろうとしていた。
けれど──
どこか、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
ルミナの胸が、きゅっと締めつけられる。
(……この人も、ずっと……一人で……)
焚き火の音が遠くで弾ける。
ルミナは言葉を失ったまま、
ただ静かに里長を見つめた。
その横で、ルナは酒を飲む手を止め、
珍しく真剣な顔で二人を見ていた。




