第四章 迷いの森
翌日ーーー
「よし、そろそろ行くぞ」
ルナが立ち上がり、背伸びをした。
「え? どこに?」
ルミナが首をかしげると、
ルナはニヤッと笑った。
「着いてからのお楽しみだ」
そう言って、さっさと歩き出す。
「ちょ、待ってよ!」
ルミナは慌てて後を追った。
森の奥へ進むにつれ、
光はどんどん薄れ、
やがて昼間とは思えないほどの闇が広がった。
木々はねじれ、
風すら通らない。
まるで森そのものが“拒絶”しているような空気。
ルミナは不安になり、
ルナの背中に声をかけた。
「ねぇ……どこに行くのよ……?」
だがルナは無視して、
どんどん奥へ進んでいく。
やがて、ルナが立ち止まった。
「……おかしいな。
ギルド長の話だと、この辺に“抜け道”があるはずなんだが……」
ぶつぶつと呟きながら周囲を見回す。
ルミナはため息をついた。
「……迷ったの?」
「迷ってねぇよ!」
ルナがむきになった瞬間──
ルミナの視界の端で、
“何か”が光った。
「……あれ?」
正面の石が、
ほんのりと淡い光を放っている。
「ルナ、ねぇ……あそこ」
ルミナが指をさすが、
ルナは首をかしげる。
「どこだよ? 何も見えねぇぞ?」
(……見えてない?)
ルミナはその石に近づき、そっと拾い上げた。
すると──
ザザザザッ……!!
正面の林が、
まるで“意思を持った生き物”のように左右へ割れ、
一本の道を作り出した。
「……っ!」
「……は?」
二人は声を殺して固まった。
森が、道を開けた。
ルナは一瞬だけ目を見開いたが、
すぐに口元を吊り上げた。
「……行くぞ」
そう言って、
迷いなくその道へ踏み込んだ。
ルミナも慌てて後を追う。
しばらく歩くと、
森の闇がふっと薄れ──
視界が一気に開けた。
そこには、
巨大な木々に守られるようにして建つ
“森に包まれた街”が広がっていた。
まるで森と一体化したような、
静かで美しい街。
ルナは迷わず門へ向かう。
だが──
「止まれッ!!
卑しい人間ども!!」
四方八方から怒号が響いた。
ルミナはびくっと肩を震わせる。
木の上、枝の影、
あらゆる場所から数十人の影が現れ、
ルナに向けて矢を構えていた。
ルナは舌打ちした。
「ちっ……歓迎されてねぇな」
その時──
ルナの背後から、
ルミナがひょこっと顔を出した。
「え……?」
矢を構えていた者たちが、
一斉に目を見開いた。
そして──
ザッ!!
全員が矢を下ろし、
木から飛び降り、
ルミナの前に片膝をついた。
「まさか……伝承の……」
「里長がお待ちです……!」
ルミナは戸惑い、
自分と同じ姿をした者たちを見つめた。
「……私と……同じ姿……」
ルナは腕を組み、
当然のように言った。
「ここはエルフの里だ。
お前の“故郷”かもしれねぇぞ、ルミナ」




