第三章 光と闇
──ルミナが街を去ってから、一週間が経とうとしていた。
森の奥で、荒い息遣いと土を蹴る音が響く。
「ルミナ……どこ……!」
先頭を走るのはルビー。
その後ろを、サンとアリスが必死に追いかける。
「おいルビー! 後衛が前を走ってどうするんだよ!」
サンの叫びにも、ルビーは振り返らない。
「急がなきゃ……! 今もルミナは──」
言い終わる前に、サンがルビーの肩を横から押し飛ばした。
「きゃっ──ちょっと何す──」
ルビーがいた場所を、鋭い矢が風を裂いて通り抜けた。
「……っ!」
前方には、二本目の矢をつがえるゴブリン。
サンは一瞬で距離を詰め、
剣を振り抜いた。
ゴブリンは悲鳴を上げる間もなく倒れた。
サンはルビーの元へ戻り、
呆れたように、しかし優しい声で言う。
「そんなに飯も食わずに突っ走って……
倒れたら何にもならねぇだろ」
後ろでアリスが息絶え絶えに叫ぶ。
「お腹すいたー! もう走れなーい!」
ルビーは唇を噛みしめた。
「……あの子は……ルミナは……
今も街で苦しんでるかもしれないのよ……!」
声が震え、次第に大きくなる。
サンはルビーの肩に手を置いた。
「だからって、お前が怪我したら意味ねぇだろ。
……行くんだろ? ルミナのところに」
差し出された手。
ルビーは一瞬だけ迷い、
小さく頷いてその手を取った。
「……ありがとう」
街の門が見えると、
ルビーは再び駆け足になった。
「ルミナ……待っててね……!」
その背中を追いながら、アリスが首を傾げる。
「ところでさ……ルミナってどこにいるの?」
サンとルビーは同時に顔を見合わせ──
「あっ……」
完全に考えていなかった。
ルビーは慌てて言う。
「じゃ、じゃあギルドで情報を──」
「僕はアイス食べに行くー!」
アリスは別方向へ歩き出す。
サンは深いため息をつき、
ルビーのローブの首元と、アリスの修道服の襟を同時に掴んだ。
「まずは、王様からの指名依頼結果の報告だろ。
城に行くぞ」
「ちょっ……! あんた勇者なんだから一人で行けばいいでしょ!」
「そうだそうだー!」
サンは二人をずるずる引きずりながら言った。
「……そういうわけにはいかねぇんだよ。
お前らも来い」
そして三人は、
ルミナの行方を求めて城へ向かった。




