第3話 4/12(金)、13(土) 正記の異能力 中編
バディを断るって、赤城くん、なんで……? 正記はショックのあまり固まってしまった。
赤城が見舞客用の椅子から立ち上がる。
「話は終わりですか? 失礼します」
赤城はそのまま、救護室を出ていってしまった。
しかし、千賀は落ち込むどころか、少し笑っていた。
「明は素直に受け入れないとは思ってたけど、ここまで清々しく断られるとはな」
それって、断られるのは予想通りだったってこと⁉︎
千賀は、正記と赤城のバディについての想いを語った。
「先日の『ナイトメア』での戦いで、正記と明のコンビネーションを見て思ったんだ。2人は力の相性としても、人としても、互いに補い合える最高の関係だってね。凸と凹がピッタリはまるような、そんな感じの」
僕と赤城くん、そんな風に見えてたんだ……! 正記は少し希望が湧いてきた。赤城くんとのバディ、組んでみたい! いや、組みたい!
でも、あの様子じゃ、頼んでも断られるよな……
千賀が話を続ける。
「明は素直じゃないけれど、自分なりの正義感を持って、『ナイトメア』と戦う真っ直ぐな子だ。正記、明とどんな関係を築いていくかは君次第だ。1つ言葉を送るなら、後悔しないように、ね」
正記は千賀の言葉をよく噛み締めた。そして、赤城を探しに行こうと見舞客用の椅子から立ち上がった。
しかし、その時だった。HNBの施設内に警報が鳴り響いた。この警報、確か……!
スピーカーから女性の声が聞こえる。
「緊急連絡! 八重岳神社を中心に『ナイトメア』発生! 戦えるヒーローは、至急現場に急行を求めます!」
『ナイトメア』……! 正記は意を決して『ナイトメア』に向かおうとした。すると、千賀に呼び止められ、片耳のイヤホンと手のひらサイズの剣の模型のようなものを渡された。
「無線と、前の『ナイトメア』の中で、わたしが使っていた剣だ。正記の異能力は身を守りにくいと思うから、護身用に持っていきなさい。『オープン』と言えば大きくなり、『クローズ』と言えばそのサイズに戻る」
正記は千賀に礼を言い、八重岳神社に向かった。
そして、正記は八重岳神社に到着した。しかし、1つ問題があった。
『ナイトメア』って、どうやって入るんだっけ?
今まで自然と入っていたから、よくよく考えると、ちゃんとした入り方を知らない。どうしよう……
すると、無線から声が聞こえてきた。
「正記、聞こえるかい? 千賀だ。『ナイトメア』の入り方について、ちゃんと説明してないと思ってね」
千賀さん、ナイスタイミングです! ちょうどそれで困ってました!
千賀が説明を続ける。
「『ナイトメア』の光景を思い浮かべて、何か強い欲望を抱くんだ。『ナイトメア』の怪物たちを倒す、とかで大丈夫だから。欲望があの怪物たちの餌だから、っていうのが、わたしたちの推論なんだけどね」
本当によくわからないけど、欲望……今僕が欲するものは……正記は目を閉じ、とあることを思い浮かべた。
すると、正記は周りの空気が一変したのを感じた。目を開けると、赤い空、空虚な平原が広がっていた。『ナイトメア』の中だ。
その時、地面が盛り上がり、その中から銃型の手を持つ怪物が2体出現した。正記を見つけ、標的に定めたようだ。
あの銃のような手、もしかして弾丸が出たりとか? 正記は早速、『書換』の異能力を発動した。イメージが固まるのが早かったからか、すぐに不思議な文字が均等に並ぶ
「『書換』攻撃力、低下!」
怪物たちは違和感に気づいたのか、少し動揺したようだ。2体共の書換に成功したようだ。これで弾丸が出てきても、致命傷にはならないはず!
あとは、千賀にもらったこの剣で!
「オープン!」
その言葉と共に、剣は従来の大きさに変化した。相変わらずだが、正記はHNBの技術に驚いていた。
もちろん現実で剣を扱うことはないため、正記は剣術に関しては全くの素人だ。しかし、そうも言ってられないため、ゲームの見よう見まねでやってみることにした。
「はあーっ!」
正記は剣で、怪物の腕を片方切り飛ばした。切り飛ばした腕が灰のように散って消えていく。
よし! うまくいった!
しかし、怪物はもう片方の銃型の腕を正記の方に向けた。まずい! 正記は直感でそう思い、剣で防御の姿勢をとった。
怪物の手から弾丸が発射された。何とか剣で防御した位置に当たり、ダメージはなかったものの、衝撃で後ろに飛ばされた。
そして、正記と怪物たちの距離が空いたのを好機と思ったのか、怪物たちが連続で弾丸を発射する。正記は弾丸に当たらないよう、横方向に逃げるしかなかった。これじゃ接近も異能力を使うこともできない!
その時だった。正記の後ろから矢が飛んできて、怪物の銃口に命中した。さらにもう2本飛んできて、もう1体の怪物の銃口も仕留めた。
後ろを振り返ると、弓矢を携えた名取と、手に炎を纏わせた赤城の姿があった。
「またまたナイスタイミングみたいだねー。明ー、あとよろしくー」
「言われなくても!」
赤城は火炎弾を放ち、たちまち怪物たちを灰にしてしまった。
た、助かった……名取と赤城が正記に近寄る。
「無事みたいだねー、よかったー」
「バカかお前は! 素人のくせに1人であいつら相手にするか普通⁉︎」
2人の対応の温度差! 赤城の言うことは最もだけど、でも……
「『ナイトメア』の怪物たちと戦うって決めた時から、僕だってヒーローだ。実力はまだまだだけど、気持ちは2人と一緒だよ」
名取は笑みを浮かべた。正記の心の強さを感じたようだ。赤城は正記に呆れながらも、その目の輝きに魅せられたようだ。
「……行くぞ。『ヌシ』を探す」
3人は『ナイトメア』の奥へと進む。その途中、名取が『ヌシ』について説明してくれた。
「ヌシは発生した『ナイトメア』で一番大物の怪物だよー。他の怪物よりも強力だけど、『ナイトメア』の大元なのか、倒すと『ナイトメア』が消滅するんだー」
なるほど。確かに、『ナイトメア』が消滅する前に戦った怪物たちは、赤城や千賀を追い詰めるくらい強かったな。
そしてもう1つ、正記は疑問に思っていることを名取に聞いた。
「名取さんの異能力、『分析』でしたよね? 『ナイトメア』が何で発生するのか、って分析できないんですか?」
名取はそれを聞き、ため息をついた。
「できるならとっくにやってるよー。俺の異能力の発動条件は、対象の全てを目に収めること。こんなだだっ広い世界、全部目に収まると思う?」
思いません! ため息をつくところを見ると、この質問、初めてじゃないな……正記は少し反省した。
すると、名取が急に何かに反応した。
「2人共伏せて! オープン!」
名取が矢を放ち、何かに迎撃した。矢が飛んだ先で、何かが爆発した。
すると、3人の目線の先に、大きな影が見えた。そこにはバズーカのような物を2つ携えた、腕が4本ある巨大な怪物が立っていた。
赤城が手から炎を出現させる。
「ヌシのお出まし、だな」




