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第3話 4/12(金)、13(土) 正記の異能力 前編

 来戸町民会館を中心に発生した『ナイトメア』が消失してから3日、植物化事件の被害者はゼロ、意識不明だった千賀も翌日には目を覚まし、HNBの救護班の懸命な治療を受けている。


 そして今日、正記は千賀や赤城、他のHNBの隊員たちに見守られ、正式にHNBの一員となった。歓迎会も行われ、他のHNBの隊員たちは、正記を熱く歓迎してくれた。

 千賀は足の治療中のため、車椅子に乗った状態ではあったが、正記の晴れ舞台だからと、救護班の手を借りて来てくれたらしい。

 千賀がHNBのリーダーたる所以が、よくわかる気がする。


 そして、正記がHNBに正式入隊した翌日、今日も正記はHNBの施設内に来ていた。

 今日は正記の異能力について、いろいろ調べるそうだ。千賀は1人じゃ不安だろうということで、赤城を同行させてくれた。赤城も正記の力に興味を示しているそうだ。……本人はそんなこと、口には出さないが。

 赤城に案内された訓練所に入ると、青年が1人、電子パネルをいろいろ操作していた。先日の歓迎会にはいなかった人だ。青年は操作を終え、正記たちの方へ振り向いた。


「ナイスタイミングー。今『擬似ナイトメア』の調整終わったとこ。君が正記だねー? 俺、名取総悟(なとりそうご)。一応情報収集とデータ分析担当。よろしくー」


 正記も名取に挨拶をした。正記は名取が言っていた『擬似ナイトメア』という単語が気になった。それについては、赤城が説明してくれた。


「まず前提として、『ナイトメア』の中じゃないと、俺たちは異能力を使えない。この訓練所では、『ナイトメア』の空間にできるだけ似せた『擬似ナイトメア』で、異能力の技術を伸ばしていくんだ」


 なるほど……! しかし、異能力を除いても、HNBが持つ技術はすごいな……! 正記はただただ感心した。

 名取が『擬似ナイトメア』空間に通じる扉の前に立つ。


「んじゃ、早速調べていこうかー。明はここにいて。機材はオートになってるから大丈夫ー」


 名取に先導され、正記は『擬似ナイトメア』空間に入った。擬似とはいえ、本当の『ナイトメア』のような重々しさがある。

 すると、名取の目が金色に変わった。そして、名取は部屋の奥にある人形を指差した。


「さっ、あの人形に異能力適当に使ってみてー。俺の異能力『分析』で、ばっちり調べるからー」


 名取に言われた通り、正記は異能力を発動した。自分の異能力の使い方をあまり理解していないが、とにかく、前使った時と同じ感じでやってみよう。

 正記の周りの不思議な文字が均等に並んだ時、前と同じように叫んだ。


「『書換』防御力、低下!」


 相手が人形のため、正記は何も手ごたえを感じなかった。しかし、名取は『分析』の異能力で、何かデータを得られたようだった。


「正記、もういっかーい。次で分析完了しそー」


 名取の指示を受け、正記は再び防御力低下の詠唱をした。名取の目の色が元に戻った。


「おっけー、何となくわかったー。会議室行っててー。『擬似ナイトメア』の調整とデータ整理したら、すぐ向かうからー」


 しばらくして、HNBの施設内にある会議室で待っていた正記と赤城の元に、ノートPCを抱えた名取がやってきた。

 名取が2人に、PCにまとめられたデータを見せながら説明した。


「正記の異能力は、『書換』ってところだねー。能力とか性質とかを書き換えられる、使い方次第ではめっちゃ強いやつだよー」


 『書換』……そういえば、この力を使う時に、そんなこと言ったっけ。

 名取はデータを切り替え、更に説明する


「でも、やっぱり制約はあってー、人や物の形を変えたり、無から有を作り出すのは無理だねー。例えばー、敵から手や足を無くしたりとか、いきなりシールドを作ったりとか。……っていうのが、俺の『分析』の結果だねー」


 あの短時間でそこまで……! 名取さん、ちょっと気だるげだけど、異能力も使いこなしてるし、やり手だ……!

 すると、PCの画面に『メールが1件届きました』と通知がきた。名取が通知音を聞き、メールを見る。千賀からのようだ。


「リーダー、2人に話があるから、自分のいる救護室に来てくれってー。まー、俺からの話も終わりだし、行っておいでよー」


 正記と赤城は、名取にお礼を言った後、千賀のいる救護室へ向かった。その途中、赤城がこんなことを言った。


「1つ聞く。阿久津、お前は何のために戦う? 何のためにその力を使う?」


 え? 急にそんなこと言われても……正記はその質問の答えがすぐに出てこなかった。赤城が足を止めた。


「覚えておけ。理由なき力は他人を、そして自分を傷つける。HNBで戦っていくなら、その意味を考えろ」


 赤城はそのまま、救護室の方へ歩き出した。僕の異能力の詳細がわかったから、かな? 正記は質問の意図が分からないまま、赤城についていく。


 そして、2人はHNBの救護室に到着した。

 救護班の人に千賀のベッドまで案内してもらうと、ベッドに備えつけられたテーブルに資料と思われる紙が積み上げられており、千賀自身も、ノートPCで作業をしていた。

 正記は目を丸くし、赤城は「またか」と頭を抱えた。

 千賀が正記たちに気付き、ノートPCを閉じた。


「待ってたよ、明、正記」


 明が千賀に詰め寄る。


「療養中の時くらい仕事は控えてください! どうせいつもみたいに、自分がやらなくていい仕事まで引き受けてますよね?」


「そう怒るなって。1日気を失ってただけで、すでに書類の山だったんだから」


 なんか、ケンカになりそうな予感……! なんとか話題を変えないと……! 正記は勇気を出して、千賀の仕事から話題を逸らした。


「せ、千賀さん! なんで僕たちを呼び出したんですかッ!」


 千賀が「そうだった!」と、正記と赤城に見舞客用の椅子に座るよう言った。なんとか、ケンカは未然に防げたようだ……! 正記は安堵した。

 千賀の話というのは、とある提案だった。


「明、正記、2人には、これからバディを組んで、一緒に『ナイトメア』で戦っていってほしいんだ!」


「……ええっ⁉︎」

「……はあっ⁉︎」


 正記と赤城は驚いた。ば、バディ⁉︎ 正記は同時に、嬉しくも思った。赤城くんと組めるなんて、心強い! 正記はそのままの気持ちを、赤城と千賀に伝えた。

 赤城はしばらく黙っていたが、やっと口を開いた。しかし、返ってきたのは冷たい言葉だった。


「断る。俺に、バディなんて必要ない」

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