第2話 4/9(火) HNB 後編
来戸町民会館を中心に発生した『ナイトメア』の中で、赤城と千賀は怪物たちとの戦いを繰り広げていた。
赤城は炎で怪物たちを焼き尽くし、千賀は手に持った特殊な剣で怪物たちを切り裂いていく。
「数が多い……千賀さん、無理しないでくださいよ」
「年寄り扱いされる覚えはないよ、明」
2人は次々と出現する怪物たちに苦戦しながらも、着実に数を減らしていく。
一方、HNBの建物内、会議室で正記は、震える手を見つめていた。
後悔の念が押し寄せてくる。なぜあの時、「自分も行く」と言えなかったんだろう?
赤城と千賀は、あんなにも恐ろしい怪物たちと、命をかけて戦う覚悟がある。僕は戦う理由も覚悟もない、ただの弱虫だ。
すると、会議室の外から、HNBの人たちの会話が聞こえてきた。
「リーダーと赤城くん、『ヌシ』に遭遇したみたいです! しかも、かなり強力な反応です!」
「増援は⁉︎」
「対ナイトメア武器や攻撃系の異能力持ちは、すぐには向かわせられない! この状況、2人だけでは厳しい……最悪、死ぬぞ!」
それを聞いた正記は、会議室から飛び出し、建物の外に出て駆け出した。向かう先は、赤城と千賀が戦っている『ナイトメア』。
2人が死ぬかもしれないと聞いて、体が勝手に動いた。いつも頭で考えてから動くのに、今、自分としてはあり得ない行動をしている。
どうか死なないで、千賀さん、赤城くん……!
『ナイトメア』の中では、巨大なガイコツ騎士のような怪物と戦う赤城と千賀の姿があった。
怪物は盾を有効に扱い、赤城と千賀の攻撃を見事に弾いていた。
赤城と千賀は、かなり消耗していた。
「参ったな。あの盾さえなんとかできれば……」
「……千賀さん、俺があいつを引きつけたら、盾壊すくらいの一撃、いけます?」
「いける、と言ったら、また無茶な戦い方をするだろう? 悪いけど、許可できないよ」
じゃあどうしろっていうんだよ! 赤城の中で鬱憤が溜まっていく。
だったら、そうならざるを得ない状況に持っていく! 赤城は怪物の側面に回り込み、火炎放射を放つ。
しかし、当然のように赤城の攻撃は盾で防がれ、同時に怪物は赤城に剣を振り下ろそうとした。
「明!」
怪物の剣が振り下ろされた。その剣は、赤城を庇った千賀の左足首に命中した。
「千賀さん!」
千賀の傷は深かった。これじゃあ戦うことはもちろん、歩くことも……!
自分のせいで……! 赤城は千賀の指示を聞かなかったことを大きく後悔した。いつもこうだ……感情任せに体が動いて、誰かを巻き込んで、後悔しての繰り返し。何も成長できてないな……
阿久津、お前、ついてこなくて正解だったよ。死なずに帰ってくるって、有言実行、できなかった……
その時だった、『ナイトメア』の中に、1人の少年が現れた。正記だ。
「赤城くん! 千賀さん!」
「阿久、津……? 何で……?」
何で、か……上手く言葉にできないから、単純になってしまうけれど……
「助けに来た! 3人で、生きてHNBに帰ろう!」
正記は再び異能力を発動した。不思議な文字が正記の周りに浮かぶ。
赤城が正記に向かって叫ぶ。
「阿久津! あいつの盾は硬い! 並の攻撃じゃ効かないぞ!」
なるほど。だったら、その防御を崩す。この力なら、きっとできる!
正記は怪物に視線を向け、意識を自分の異能力に集中させた。
一方、何とか意識を保っている千賀が、自分の剣を赤城の手に握らせた。
「使え……正記くんが、きっと道を切り開いてくれる……そうしたら、明の出番だよ……」
正記の周りに浮かぶ文字が均等に並んだ。いける! 正記は精一杯叫んだ。
「『書換』防御力、低下!」
怪物は違和感を感じた様子だったが、逆にその感覚で何かされたとわかり、激昂したようだ。
怪物は正記に向かって突撃していく。しかし、怪物の側面から赤城が炎で壁を作り、怪物の行手を阻んだ。
明は千賀から託された剣を構えた。
「お前の相手は、俺だ!」
赤城は怪物の盾を剣で突いた。正記が施した防御力低下の効果もあり、赤城が更に力を込めた時、盾は砕け散った。
怪物はよろめき、動揺を見せた。チャンスだ!
「赤城くん! いけぇー!」
赤城は炎の威力を高め、一気に怪物に向かって解き放った。怪物は焼かれ、灰となって散った。
僕たちの、勝利だ!
『ナイトメア』が消え去り、正記たちは来戸町民会館の前に戻った。
千賀は2人のコンビネーションに感動していた。
「素晴らしいな……あの2人なら、きっと……」
千賀はそこで意識を失った。倒れた音を聞き、正記と赤城が慌てて駆け寄り、HNBに救援を要請する。
今日も今日とて、忙しく奇妙な1日が終わった。しかし、まだ全てが終わったわけではない。
『ナイトメア』の脅威は、正記たちの戦いは、まだ終わりを告げていない。




