第2話 4/9(火) HNB 前編
放課後、校門前で誰かを待つ赤城の姿があった。待っているのはもちろん……
「赤城くん! ごめん、遅くなって!」
正記が赤城に駆け寄り、待たせたことを謝る。明は表情ひとつ変えず歩き出した。
「いくぞ。はぐれるなよ」
今日は赤城の案内で、正記はとある場所に行くことになってる。なぜこうなったかというと、話は昨日に遡る……
「お前も『ヒーロー』なのか?」
へ? ヒー、ロー? ただでさえ混乱している正記は、さらに混乱した。
「その様子だと、何が何だかわかってないな。あの力も、目覚めたてってことか……」
力……そういえば、僕が何かしたから、赤城くんはあの怪物を倒せたんだよね……?
赤城が話を進める。
「この後時間あるか? 来てもらいたい場所がある。あの世界のこととか、いろいろ説明しておきたい」
「う、うん! 大丈……夫……」
その瞬間、正記は少しふらついた。あれ? なんか、全身の力が抜けていくような……
「力が目覚めた反動で、かなり消耗したんだな。説明は明日にしてやるから、明日の放課後、校門前に来い。それと……」
赤城は消耗した正記に肩を貸し、少し照れくさそうに尋ねた。
「家、どっちだ? このまま支えてってやるから」
赤城くん、やっぱり優しい人だ……! 正記はそのまま赤城に支えられ、家まで送ってもらった。
……ということがあり、今に至る。
赤城に案内された先は、町の外れにある研究所のような建物だった。確かここ、少し前まで廃墟だったような……?
正記は少し緊張しながら、赤城と一緒に建物の中に入っていく。
建物に入ると、中は近未来のようだった。壁にはモニターが複数あり、プロジェクターからホログラムの球体のようなものが映し出されている。テーブルやイスは、浮いてる……のか?
「千賀さん、連れてきました」
赤城に千賀と呼ばれた中年の男性が振り返り、正記たちの元へ歩いてきた。
「おかえり、明。そしてようこそ、正記くん。話は明からだいたい聞いてるよ。『ナイトメア』に巻き込まれるなんて、災難だったね」
ナイトメア? また訳の分からない言葉が……千賀は優しい笑顔を浮かべながら、建物の奥に進んでいく。
「正記くんが疑問に思ってることは、会議室で説明するよ。明もついてきてくれ」
正記は戸惑いながら、千賀と赤城に会議室まで案内される。
会議室にて、まずは自己紹介から始まった。
「挨拶が遅れたね。わたしは千賀幸弘この『HNB』のリーダーを務めさせてもらってる。『HNB』についても、軽く説明するよ」
千賀はプロジェクターを起動し、画像を交えて説明を始めた。
「『Hero of Nightmare Breakers』、略して『HNB』。わたしたちの組織の名前さ。この名前にある『ナイトメア』っていうのが、昨日君が迷い込んだ異世界の名前なんだ」
HNBにナイトメア……そんなものが存在するなんて、昨日のことがなかったら、絶対に信じなかっただろうな……
千賀が画像を変えながら説明を続ける。
「なぜ『ナイトメア』なんて異世界が生まれたのか、長年研究を続けているが、未だわからない。でも、『ナイトメア』の中では、一部の人間が超常の力『異能力』に目覚めることがあるんだ。明の炎みたいにね。わたしたちは、異能力に目覚めた人間を『ヒーロー』と呼んでいる」
なるほど、それが組織の名前にも直結するのか。正記はもう、全てを受け入れ始めている。
「じゃあ、HNBは、『ナイトメア』に迷い込んだ人を助けながら、謎を解明する組織ってことですか?」
正記のその質問に答えたのは、赤城だった。
「半分は正解だ。でも、研究する内に『ナイトメア』には恐ろしい側面があることがわかったんだ」
恐ろしい側面……聞きたいような、聞きたくないような……でも、選択肢は聞くしかないよな……
「昨日お前を襲った怪物たち、あいつらは『ナイトメア』の発生源を中心に生活する奴らの欲望を根こそぎ奪っていく。……他人の助けがないと生活ができない植物状態、廃人になるまでな」
植物状態……! それって、今ニュースとかでやってる、『植物化事件』⁉︎
赤城は解説を続ける
「ああ、今起きてる植物化事件は、全部『ナイトメア』が原因だ。だから『ナイトメア』の怪物たちを殲滅する、ってのも俺たちの使命だ」
僕の知らないところで、そんなことが起きてたんだ……正記は千賀と赤城の説明を受けて、自分が巻き込まれた事の恐ろしさを痛感した。
そういえば、僕って『ナイトメア』で異能力を使えるようになったんだよね? よく分からない力だったけど……
「正記くん、君が目覚めた異能力についてだけど、明の話を聞く限り、とても強力なものだと思うんだ。それを見込んでお願いがある。HNBに入って、力を貸してほしいんだ!」
僕が、HNBに……⁉︎ 頼られるのは嬉しいけど、それって、あの怪物たちと戦うってことだよね? 赤城くんみたいに……
僕に、そんなことができるのだろうか?
すると、HNBの建物内で警報が鳴り響いた。若い女性の声がスピーカーから聞こえてくる。
「緊急連絡! 来戸町民会館を中心に『ナイトメア』発生! 戦えるヒーローは、至急現場に急行を求めます!」
『ナイトメア』……! 異世界が、また……!
震える正記の肩に、千賀が手を置いた。
「正記くん、君はここにいなさい。協力してほしいとは言ったが、いきなり実戦で戦うのに、恐怖を感じているだろう。今回はわたしと明で、『ナイトメア』の問題を解決してくる」
赤城はやる気満々だ。
「怪物を倒したらすぐに戻る。お前には借りがある。だから、死なずに帰ってくる」
そう言って、千賀と赤城は会議室を飛び出した。
会議室は正記1人になった。警報も止み、沈黙が流れる。
僕は、待つしかできないのか……?




