第5話 4/16(火)〜4/20(土) それぞれの覚悟 中編
武器を持つ覚悟と、形……⁉︎ 急にそんなこと言われても……正記は即答することができなかった。
その様子を見て、風見はこう言った。
「さっきも言った通り、タダで武器はやれん。そこまで俺は優しくない。武器ってのはな、敵を倒す道具に見られがちだが、場合によっちゃあ、味方も自分も傷つける。俺が問う覚悟ってのは、その部分だ」
正記はその言葉に驚きながらも共感した。風見の言葉が、まるでそのような光景を見てきたものだと感じたからだ。
風見は正記に背を向け、こう告げた。
「1週間、考える時間をやる。それまでに、俺も坊主も納得する答えを見つけてこい。俺は基本この工房にこもってるから、答えを示せる時に、また来い」
風見にそう言われ、正記と明は工房を後にした。
正記はすぐに考え込んだ。覚悟……正直、武器について、風見さんが言ったように考えたことはなかった。この前の剣も、敵を倒すという意識で使っていた。
風見の言葉の真意が、正記にはわからなかった。
すると、明があることを口にした。
「前に言ったこと、覚えてるか?」
前って、いつだろう? 再び考え込む正記に、明が痺れを切らした。
「お前の異能力が判明して、千賀さんのところに向かってた時だ!」
そういえば……! あの時は、訳が分からなかったけど……
『お前は何のために戦う? 何のためにその力を使う?』
『理由なき力は他人を、そして自分を傷つける』
あの時、明が言っていたことは、風見の問いに似ていたのだ。
明は話を続ける。
「お前はあの時も、すぐに答えられなかった。お前は自分をヒーローと言うけど、まだそれは上辺だけなんだよ」
明の言う通りだと、正記は思った。まだ威勢がいいのは言葉だけだ。でも、明を、千賀を、そして自分を傷つける覚悟なんて、簡単に持てない……
明がそんな正記の様子を見て、今日は正記に帰るよう言った。
夜、正記はベッドの中でもずっと考えていた。しかし、答えがまとまらないまま、時間だけが過ぎていく。
そして翌朝、校門のあたりで、明は後ろから正記に呼ばれた。
「おはよう……明くん……」
正記は明らかに元気がない様子だった。おそらく、あまり眠れなかったのだろう。明はそれを察したが、正記のためを思い、厳しく接する。
「俺が手助けできることはない。お前だけで答えを見つけろ。あと、授業中寝ても知らないからな」
明の言葉は、寝不足な正記には大きなダメージだったようで、さらに元気がなくなってしまった。
すると、明の足元にサッカーボールが転がってきた。明が気づき、ボールを拾い上げる。
「ごめん、今日はわざとだよ」
声のした方を見ると、そこには昨日明をサッカー部に勧誘した男子生徒がいた。
「自己紹介させて。俺、3年の磯部秀斗。サッカー部のキャプテンをしてるんだ。君のこと、どうしても諦めきれなくて。よかったら、放課後、時間ないかな?」
明は磯部と目を合わせることなく、また冷たい声で答える。
「昨日も言いましたけど、サッカーはもうやらないんです。それと、兄の名前目当てだったら、やめてください。不愉快です」
明はそのまま、校舎の方へ行ってしまった。
「ちょっ、明くん!」
正記は磯部に一礼すると、明の名前を呼びながら、その後を追いかけた。
正記は昇降口で明に追いつき、手首を掴んだ。
「明くん、サッカーやってたんだよね? やっぱり、お兄さんのことで……でもね、僕……!」
明は正記の話を最後まで聞かず、乱暴に手を振り払った。正記が反動で尻もちをつく。
「何だよ? バディになったから、俺のこと全部知ったつもりかよ? 俺がどんな気持ちでサッカーやってたか、知らないくせに……! 優しいフリして、人の傷えぐってるんじゃねぇよ!」
正記はその言葉を聞き、心に穴が開くような感覚がした。そして、涙を流しそうになるのをぐっとこらえて、その場から走り去った。
明は、自分が放った言葉がまた感情任せになったことへの後悔と、自分を正当化しようとする感情の葛藤で、正記を追いかけることができなかった。
バディとして、お互いを認め合った2人に、亀裂が入り始めた。
その日は、2人共何も話すことなく、お互い別行動していた。
そして、お互いに言葉を交わすことがないまま、3日が過ぎた。正記は今日こそ明に謝らなければと思っていたが、何と言えばいいか分からなかった。そして何も言えないまま、今日も下校時間になってしまった。
今日は金曜日だから、HNBの施設に行かない限り、月曜日まで明に会うことはない。でも、バディ宣言をした手前、この険悪な空気を、HNBには持っていけない。
正記の周囲も、正記自身も、空っぽになってしまった。
しかし、その夜、正記の異変を感じ取ることのできる人物が1人だけいた。
「正記ー! ただいまー!」
ここは正記の家。仕事で帰宅が遅くなった正記の母が玄関に入ると、居間が暗く、息子がいないことに気づいた。
「正記?」
すると、正記の部屋の扉から光が漏れているのを見つけ、母が扉を開ける。
そこにあったのは、ベッドに横たわり、どこか虚ろな目をしている、自分の息子の姿だった。




