#50 魔王剣と存在感
主要人物にしようと思っていた人を作者が忘れてしまう謎
「おかしいですね。先ほどまであそこに見えていたはずですが」
戸惑っている俺と同じように商人も戸惑っているような声を上げる。
商人と二人であたりを見渡すがそれらしき物は見当たらない。
「結構遠くからでも見えていたので見えないなんてことはないはずなんですがね。どうしましょうか? 見つからないものは仕方ありませんし、このまま進んでみますか? 大体の場所は分かるので近くまで行くことは可能だと思いますが?」
「お願いします」
商人は馬を走らせ始める。
俺は馬車が走っている間、あたりを探し続けていたがそれらしき物は見つからなかった。
もう何分走り続けただろう。
二十分ほど前まで俺はあたりを探し続けていたのだがいくら探しても見つからなかったので遺跡を探すことを早々に諦め馬車の中で本を読むことに集中することにした。
この世界に時計なんてものはないので正確な時間は分からないが大体それぐらいだったと思う。
あまり本を読むことに集中することが出来ず一度休憩でも挟もうかと思ったとき、御者台に座っている商人が「あっ」と声を上げる。
「どうかしましたか?」
「す、すぐ傍に。い、遺跡が」
商人が指さした先を見ると確かにさっき見た遺跡が見えている。
その距離はもう数百メートルほどしかないだろう。
さっき遺跡を見た時はあまり大きくないような感じがしたが今見るとそれは間違いだったと分かる。
馬車を降りて遺跡に近づいてみると高さが十メートルほどある入口がある。
遺跡はピラミッドのように積みあがったレンガでできておりところどころに苔が生えている。
触ったら崩れてしまいそうな場所がいくつもありかなり古いものだと分かる。
俺の依頼は遺跡の調査だが遺跡の中に入ったら足元が崩れないかとても心配だ。
「どうしますか? 俺はこのまま調査のために入りますけど」
「では、私はここで待っていることにしましょう」
「分かりました、時間がかかるかもしれないですが大丈夫ですか」
「分かっております。この近くに村がありますのでそこに宿でもとって待っていることにします」
商人はそういうと馬車に乗り込む準備を始める。
商人が馬車に乗り込み出発するのを見届けた後、俺は真っ暗な洞窟へ足を踏み出したのだった。
遺跡に入ってから俺は黙々と歩き続けていた。
当たり前だが人の気配などするはずもなく俺の足音だけが暗い遺跡に木霊している。
ところどころに水たまりができており転びそうになったこともあるが何とかここまでこれた。
俺の背中には剣の状態になっているマナがいる。
最初のころは寝床に忍び込んだりして着ていたが最近はこの状態でいることが多い。
俺も最近の討伐依頼を受けるときはずっと魔王剣を使っているのだがしゃべりかけてこない。
そのこともありあまりマナの存在を認識しておらずただの剣という感覚の方が大きい。
最近色々あって、マナの存在を忘れていたわけではない。
『そういえばマスター』
マナが頭の中で語りかけてくる。
『最近、私に話しかけてくださいませんよね。まさか私を忘れていたとか? そんなことはありませんよね。マスターですもの』
ギクリ。
そんな効果音が思わず口から出てしまいそうになる。
まるで心の中を見透かされたような感覚だ。
『そ、そんなわけないだろ。ほ、ほら、あれだ、最近人の姿になってたなかったからな。普通の剣のような気がしてただけだ』
『マスター。声が震えております。それに普通の剣のような気がしていたという事は私のことを忘れていたのですね』
どうやら墓穴を掘ってしまったらしい。
『は、はい。すいません』
『いえ、私が人の姿になっていなかったことも原因の一つなのでしょう。これからはずっと人の姿になりおそばでお仕えいたします』
そういうとマナが急に目の前に現れる。
「では、改めて、これからよろしくお願いしますね。マスター」
「ああ、よろしく」
マナの笑顔が一瞬だが怖く見えたのはなぜだろう。
取りあえずこれからはマナのことを忘れないようにしよう。
というか人の姿になれるんだったらずっとこの姿でいればいいのにと思う。
俺とマナの二人になった遺跡探索はまだまだ始まったばかりだ。
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