♯42 幻覚と幻聴
最近もとからなかった文章力がさらに低下してきた気がする……。
レティアさんの意志が関係なく俺が本当に家を貰ったら俺の家のメイド長になる。そんな可能性が出てきたのだが、レティアさんは意外にも快く受け入れてくれた。
理由を聞いたところシャルと離れるのがいやらしい。
本当に仲のいい姉妹みたいだ。ゴードンさんも受け入れてくれたし、どうなっているのだろう。もうちょっと反対してもいい気がするが、これで、丸く収まるならそれに越したことはないだろう。それにこの宿、主にレティアさんが切り盛りしているけど、大丈夫なのだろうか? 潰れたりしないだろうか? もしレティアさんが居なくなったせいで宿がつぶれたら罪悪感で夜も眠れない気がする。
そんなことがあってから一週間。
俺はずっとアルの家でアルと共に剣の稽古に励んでいた。
転生前はいつもしていた稽古はこの世界に来ても欠かさずにやっていたのだが相手がいないとできない稽古もあるので、それをアルに手伝ってもらっていたのだ。
この世界には剣道というものはなく、剣術とひとまとめにしてあるだけで、競技としては発展していない。
競技としては発展していないのに稽古用に竹刀があるのが不思議だがこれはなぜなのだろう。
剣道という競技ではないためアルが宿に来てその時に時々やっている俺の剣道の稽古を珍しげに見るので「一緒にやってみないか?」と誘ったところ快く受けてくれた。
今までも対人の練習をしようと思ったこともあるのだが、この世界では前衛は剣より男ならハンマー、女ならガントレットが好まれるため、剣を主体にする人が少ないため稽古相手がおらず、さらにそこまで急ぐ必要はないためやっていなかったのだ。
だが、マナと契約してからマナに「もっと体の反応速度を上げてください」とかいろいろ注文を付けられたため、これは対人の稽古をした方がいいなと思い、アルと稽古していたのだ。
アルはアルで、いつもの稽古と違って新鮮なのか、来たら必ず稽古に付き合うようになっていた。
以前、ティーナになぜ剣よりハンマーなどの方が好まれるかを聞いたら、剣は上達するために稽古を必要とするからだという。ハンマーなら力任せにやってもある程度のモンスターなら倒せるし、ガントレットは威力強化の魔法が付与してあるのだという。
それにより、強い魔法が付与されている武器は前衛ではハンマー、ガントレットが多く、剣はそこまで強い魔法が付与されていないのだそうだ。魔法をつけるというのはあまり詳しくは分からなかったが、それ専用の魔術師がいるらしい。
前衛というのも分からなかったが、言葉通り、モンスターとの戦闘において前で戦い主に打撃戦を得意とする人が多いのだという。
反対に後衛は魔法や、花音やシャルのように召喚獣を出して戦う人の事を言うらしい。
ちなみに俺達だと、俺とリーナは前衛で、ティーナはオールラウンドの中衛、花音とシャルが後衛という事になるらしい。
こう考えると結構バランスがいいように感じる。
「マサトさーん、そろそろ出発しますよ」
荷物を詰め終わり、この一週間のアルとの稽古を振り返っていると下からティーナの声が聞こえる。
荷物と言っても、財布や、ハンカチなどの出かけるためには必要な物だけだ。
以前はここに剣が加わっていたのだが、今の俺の剣は魔王剣なので、必要のないときはマナが仕舞ってくれている。
何処に仕舞っているのかは謎だが、そこは追及しない方がいいだろう。
鞄などは持っていない。
前にデイリックと話していた時に空間に物を仕舞う魔法というのを見つけたのだ。
結構便利なのだが、もう新魔法を開発しなくてもよさそうな気がしてきた。
だってもうほとんど作られてしまっているし。
後使っていないが、紙をお金に換える魔法があった。見つけた途端破いて捨てたが……。
あの魔法を考えた人は絶対ろくでもない人だと思う。
「マサトー、何してるの? 早くいくよ」
下からまた催促の声が聞こえる。どうせゲートで一瞬でワープ出来るんだからいいじゃないかと思うのだが。
これ以上催促されても嫌なのでおとなしく下に降りる。
宿の前にはもうみんな来ている。
それになぜか、アルまでいるように見える。
今日のメンバーは、俺、ティーナ、リーナ、花音、シャルのはずなのだが、俺の目は疲れておかしくなってしまったのだろうか? 目を二回ほどこすってみるがあまり効果はない。
「おはよう、マサト。今日はよろしくね」
いかんいかん、幻聴まで聞こえてきた。
これは宿に戻ってベットで一日中寝ていなきゃダメだな。
完全に風邪だ。
「マサト様? なぜ回れ右をして宿に入ろうとするのでしょう?」
回れ右をした俺の肩をシャルが掴む。
この世界にも回れ右という言葉はあるんだな、というかシャルさん? 肩をつかむのやめてもらえません?
「いや、ちょっと目と、耳がおかしくなったので今日は休みます」
「? 何を言っているんですか? 早くいきますよ。早くゲートを開いてください」
「本当に目と耳がおかしくなったんだって」
「どんなふうにですか?」
「いや、いるはずもないアルがいて、しかもそのアルの声まで聞こえるんだよ」
自分の症状を説明する。
自分で言っていて確信した。
これは風邪だ。
体は怠くないし、熱があるわけでもないけど、これは風邪だ。
一週間ずっとアルと一緒にいたから目と耳がおかしくなったんだ。
きっとそうだ。
やはり今日は王宮にはいかず、一日絶対安静にしておくべきだ。
「ひどいなー、マサト、僕はここにいるよ」
やばいどんどん風邪の症状が悪化している。
幻聴が聞こえる回数が多くなっている。
「そうですよ、マサト様、さすがにそれはアルに失礼だと思います」
え? まさか本物? 目と耳がおかしくなったんじゃなくて、本物のアル!
ていうかいつの間に二人は仲良くなったんだ?
あ、分かった、アルのやつ今日も稽古するつもりで来たな。
昨日、今日は予定あるって言ってなかったかな?
まあ、いいや。
「おはよう。アル、今日の稽古は休みだぞ。予定あるって昨日言わなかったか?」
「うん。知ってるよ。今日はその予定に動向させてもらいに来たんだ」
「は?」
「だから今日は、アルも一緒に王宮に行くんです。知りませんでしたか?」
いや、今初めて知ったよ。
昨日誰もそんなこと言ってないよね?
何俺だけ仲間外れ?
新手の嫌がらせ?
そして、アルの、笑顔が眩しい、眩しすぎる。イケメンだから余計に目立つ。
イケメンは俺の敵だな。うん。
取りあえず今日は一緒に行くという認識でいいのだろう。
アルは王都に何か用事でもあるのだろうか。
「今日一日よろしくね、マサト」
やめろー、その笑顔をするなー。
道行く女性が全て振り返って、しかも目がハートになってるから、俺には眩しすぎる笑顔だから。
目がハートになっていないのはシャル、花音、ティーナ、リーナ、だけだ。
道行く男性は妬みの目でアルを見ている。
アルは剣は強いけど性格に若干、天然が入っているから無意識のうちだから余計に言いづらい。
「よろしくな、アル」
結局いう事は出来ずに俺は挨拶を返してしまった。
道行く男性は今度は俺の方を見て、「おい、お前、何言ってるんだよ。そこはその笑顔やめてもらえよ」とでもいいたそうな顔をしている。
もし本当にそう思っているのなら無茶を言わないでほしい。
俺はこれでも精いっぱい努力したんだ。
結局負けて、普通にあいさつ返しちゃったけど……。
「じゃあ、行きましょうか」
そういって皆が歩き出す。俺のゲートは人目に付くところだと、他の人に「どこどこまで」と頼まれたりするので、極力人目につかないところでやる必要があるのだ。
前に一目のつくところでやろうとしたらそれはもう大変なことになった。
最近では何も言わず、念じるだけで、ゲートを開いたり閉じたりできるようになった。
「ここなら大丈夫でしょう」
いつもゲートを開くお決まりの場所だ。
ここは宿の裏で、人はめったに通らない。
なので安心してゲートを開くことができるのだ。
「そういえば、アルはどこに行くんだ?」
アルの行先を聞いていなかったことを思い出し急いで聞く。
王都に用事があるから俺達と一緒に行くのだろうが、どこに用事があるのだろう。
貴族で名門の剣の家ならどこかで披露するのかもしれない。
「? 何を言っているんだい? 僕の今日の目的地は君たちと同じだよ」
という事は、王宮ですか。
いったい何をしに行くんでしょうか?
そんなことを考えながら俺は王宮へと続くゲートを開くのであった。
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次回は十月十三日に投稿します。
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