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魔王の俺が召喚されたのは異世界でした  作者: 三剣 シン
第四章 異世界の秘密
40/52

♯40 朝と王宮魔術師

台風が多いですね。


昨日、あれから、マナの言ってたことに対して深く考えすぎてしまった。

自分では納得したつもりになっていたが、やはり、ごまかせないもので、いざ寝ようとするとどうしても深く考えすぎてしまい、全然眠れなかった。

納得したつもりだったが、詩の意味などが気になって仕方がない。意識がその方向へばかり行くので、昨日寝つけたのは午前二時くらいだった。

一昨日もあまり寝ていなかったので、寝不足になってしまった。

もっと寝たい。後四時間は寝たい。

ベットの中で猫みたいに丸まっていたい。


「マサトさん。起きてください。もう八時ですよ」


そんな俺の心情を知るはずもないティーナは容赦なく布団を剝がしにかかる。かれこれ一時間布団を剝がそうとするティーナとまだ寝たい俺の攻防は続いていた。およそ三十分前ティーナが朝食を取りに行ったので、この布団剝がし攻撃も終わるかと思ったのだが、どうやら終わらせるつもりは全くないらしい。今日くらい休ませてくれてもいいと思う。なにか特別な予定があるわけでもないし、ギルドに行ってクエストを受ける約束をしているわけでもない。

「何もないから俺はまだ寝ていたいのだ」そう何度もティーナに訴えかけているのだがそんな事が聞き入れられるはずもなく……。そんなふうに俺とティーナが攻防すること十分。

急に部屋がノックされる。今俺は返事ができる状況じゃないのだがどうしたらいいだろう?


「失礼します」


そんな状況を知っているのか返事がなくてもためらいもなく誰かが部屋に入ってくる。それによって永遠に続くか錯覚するほど続いた俺達の攻防だが、意外に早くそして、意外な人物の手によって終わりを迎えた。布団をかぶっている俺からは顔は見えないが声からして恐らくシャルだろう。


「どうしました? マサトさんならまだ寝てますよ?」


ティーナがシャルに言っている。その言葉はシャルに対してではなく俺に対して言われたような気がするのは俺の気のせいだろうか?


「いえ、今用事があるのはマサト様ではなくティーナ様の方なのですが」


珍しい。シャルは王女ということを感じさせないほど皆と仲が良いが、誰かが何かしているときや他の人と話しているときには自分から話しかけるようなことはめったにせず、話しかけられたら答えることが多いのだ。そんなシャルが誰かが何かをしているときに話しかけるような理由は何だろう? 少し興味が……。


「分かりました」


ティーナはシャルにそういうとシャルに続いて出ていくつもりなのだろう徐々に二つの足音が遠ざかっている。そしてドアが閉められた音がしたのだがまたあく音がして


「マサトさんは早く起きてくださいね」


と、言うティーナの声が聞こえたのだった。ティーナには「早く起きてくださいね」なんて言われたがその指示に従うつもりは全くない。

別にティーナが嫌いで嫌がらせをしたい、とか、困った顔を見たい、というわけではなく、俺は眠たいのだ。

元の世界にいた時はよく夜更かしもしたが、ゲームもなければ、学校の宿題もないこの世界で俺が夜屋やることと言えばスマホでゲームしたり、インターネットでニュースを見たりするぐらいだ。そうすると必然的に夜に寝るのは十時、遅くても十一時には寝るようになったのだ。朝が七時起きでも一日八時間から九時間ほど寝ている。それが今日は五時間だ。もう眠たくて眠たくてしょうがない。ティーナが出ていった今がチャンスだ。

お休み。


「マサト様、失礼します」


あれ? シャルの声? なんで? 今さっきティーナと一緒に出て行かなかったか? 話はもう終わったのか。と、言う事はティーナも今からくる可能性が十分、いや確実に来るだろう。


「マサトー、起きてる?」

「リーナ、うるさいよ」

「マサトさん、起きてますか?」


あ、やばい。ティーナだけでなくリーナと、花音までいる。そうとなれば話は別だ。今すぐに起きた方がいいな。それからの俺の行動は自分で言うのも可笑しいが物凄く素早かった。ベッドから出て掛布団をたたんだのだ。行動というほど行動していないが……。



「おはようございます」

「えっと、すいません。どなたですか? 以前お会いしましたか?」


ティーナ達に起こされた(自主的に起きたのだが)俺はティーナ、リーナ、花音、シャルの四人に話があると言われて宿の食堂まで来た。

すると、いつも俺達が使っている席にはすでに先約がいた。俺のいつも使っている席の前の席に椅子に座らず立っている。この人がいることをシャル達は知っていたみたいだ。

そうなると話があるのはこの人なのだろう。

三十代位で、身長は百八十センチぐらいだろうか。顔立ちは整っていて恐らく女子に聞くと十人中十人がイケメンと答えるだろう。凛とした雰囲気を放っていて落ち着いている人というのが見ただけで分かる。白いローブを身にまとい長い長い杖を持っている。大体長さは百三十センチくらいだろうか。杖の上の部分にはこぶし位の大きさの木の固まりとでもいうべきか。そんな物がついている。

異世界で魔法があることを考えると魔術師という職業のような感じだ。

俺の知り合いにこんな人はいないので、初対面だろう。


「初めまして、王宮魔術師団所属、王宮魔術師長をしております、グレンと申します。今日は突然の訪問、無礼をお許し願いたい」


そういうとグレンさんは片膝をついて頭を下げる。


「あ、宇都宮 正人です」


王宮魔術師団とはなんなのだろうか。名前通りなら王宮に使えている魔術師の組織なのだろう。

でも、魔術師長というくらいだから結構なお偉いさんなのだろう。そんな人に頭下げられてる俺って何? それにそんなに偉い人が俺を訪ねてくる理由が見つからない。まだ一言も俺を訪ねてきたとは言っていないけど誰よりも先に俺に挨拶をしてきたってことは恐らくその解釈であっているだろう。


「ああ、お座りになってください。と、言っても僕の家じゃありませんけど」


そういうとグレンさんは笑顔で笑った。落ち着いた人かと思っていたがそうでもないらしい。

俺の後ろでは花音がティーナに「王宮魔術師って何?」と質問攻めをしていた。花音はこの人が話がアルって事しか知らずに話があるって言っていたのかな? でもティーナ。怒らないでやってくれ。常識がない訳じゃなくて、本当に知らないだけだから。俺もこの状況に戸惑っているので。許してやって。まあ、そんなことを口にできる雰囲気でもないので口には出さないが。

グレンさんが示してきたのは俺がいつも座っている席だった。

示された椅子に座らないのは失礼だと思ったので素直に座っておく。

俺が座ったのを確認したグレンさんは自分も席に座る。俺なんかを待ってから座らなくてもいいと思うが。

後ろにいたシャルとリーナも自分がいつも座る席に座る。


「花音さん。後で説明しますからとりあえず座りましょう」


ティーナに質問攻めをしていた花音もティーナに言われてしぶしぶながらもおとなしく席に着く。席順としては左から花音、シャル、俺、リーナ、ティーナ、そして反対側の俺の前の席にグレンさんが座るという感じだ。

シャルとリーナはいいつもの席だが、ティーナと花音は椅子をこっちに持ってきている。皆が座ったのを確認してからグレンさんが口を開く。


「初めまして。僕はグレン。グレン・ラダフィ。さっきも言ったように王宮魔術師団魔術師長を務めています。よろしくお願いします。皆さんは左から花音様、シャルロッテ王女殿下、マサト様、リーナ様、ティーナ様でよろしいでしょうか?」

「あ、はい。よろしくお願いします」


確認されたので返事をしておく。しかし、俺はさっき名乗ったし、王女のシャルを知ってるのはおかしくないとして、花音、リーナ、ティーナまであてるなんて、写真でもあったのかな? でもそんなものとられたことないけどな?


「なんで名前を当てられたか不思議なようですね。私は名前と顔は覚えたら忘れない性質ですので、この前王宮にいらした時に偶然お見かけしたものですから。ダンさんに案内されていたのと会話からあなた方の顔と名前を想像しただけです。その様子じゃ、名前を間違えたなんてことはなさそうですね」

「は、はぁ」


なんというか不思議な人だ。顔は笑っているのに目が笑っていない。相手を信用しても大丈夫か見定めているそんな目をしている。


「では、本題に入りましょうか。マサト様は王女殿下の婚約者。そうですね」

「はい、そうですが?」


何が言いたいのだろうこの人は、というか俺とシャルが婚約しているという事を知っている。確かまだ公表されていないはず。それどころか王女に婚約者がいること自体まだ知られていないはずだ。


「では、王宮魔術師団に入りませんか?」

「は?」


俺達五人の声が見事にかぶった。なんでそんな話になった? さっきの会話からなぜそこまで話が飛ぶかが分からない。王女の婚約者の話から急に王宮魔術師団に入らないか? という話になった。横にいるシャルも意味が分かっていないようだ。


「マサト様は精霊二人と契約を結んでいるそうですね。精霊の名前は、治癒の精霊と魔術の精霊だったかな? そんな人めったにいないからですね、王宮魔術師団に入っていただけないかと?」


この人なんで知っているんだ? 俺が精霊と契約してるっていうのはここにいるティーナ、リーナ、花音、シャル、以外に知っている人はいないはずなのに。そんな疑問を持ってグレンさんを見ると、笑いながらまるで俺が聞きたいことが全て分かっているかのように答えてきた。


「いや、知り合いにちょっとした情報通がいましてね。少し教えてもらったんですよ。」


そして薄気味悪い笑みを浮かべながら話す。するとシャルが俺の隣から「グレン、いい加減にしなさい」と、命令口調で言う。正直言って結構怖い。こういう時だと本当に王女なんだなと実感する。シャルに言われるとグレンさんはさっとさっきまでの顔に戻って


「と、まあ、冗談はこの位にいたしましょうか。本当はですね、王女殿下が国王陛下に伝えて、それを僕が国王陛下から聞いたんですよ。どうです? 怖かったですか?」


はい、まじで怖かったです。何を考えているか分からない顔をしていたので、余計に怖さ倍増でしたよ。悪役の才能あるなこの人。シャルが教えたんだったら知っていてもおかしくないな。納得だわ。


「すいません。マサト様。お父様に聞かれましたのでそのままお答えしてしまって」


シャルは結構、罪悪感が押し寄せているみたいだ。本気で落ち込んでしまっている。

俺は別にシャルを攻めるつもりはないのでとりあえずフォローを入れておく。するとシャルは顔が明るくなって少し元気を取り戻したみたいだ。


「で、本当の本題に入りましょう」


前置きが長い上に怖かったのでもう終わった気になってましたよ。そうでしたね。まだ本題にすら入ってなかったんだね。


「マサト様、王宮に来ていただけませんか?」

「は?」


今日は何度俺達の「は?」がかぶればいいのだろう


感想、評価、ブックマーク、していただけると嬉しいです。

次回は十月九日に投稿します。

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