♯31 元の世界の食べ物と驚愕
前回で三十話まできました。読んでくださっているみなさん本当にありがとうございます。
今日はいつもとは違い納品クエストというのをやってみた。いろいろな人からクエストを受け、指定された植物や素材を指定された数、達成期日までに納品するというクエストだ。
達成期日は主に次の日までというのが多い。さらに高級な物や近場で見つからない物ほど報酬が高くなるクエストだ。そういう意味では少し特別なクエストと言えるだろう。
普通のクエストは近場のモンスターの討伐クエストばかりだし強いモンスターや討伐数によって報酬が変化するし、達成期日も(例外はあるが)一週間前後と長めにとってある。
ギルドから帰ってくるととてもいい匂いがしていた。匂いをかいだことはあるはずなのにそれが何か思い出せない。甘い匂いについ鼻をクンクンと犬みたいにしてしまった。
いい匂いにつられるように食堂に入るとすぐに目につくのはティーナ達が皆そろいもそろってクレープを食べている光景だった。なるほどあの甘い匂いはクレープの匂いだったのだろう。
「あ、マサトさんお帰りなさい。今、花音さんがこれをくれたので皆で食べてました。マサトさんの分もありますよ」
「どうぞ」といってクレープを差し出してくる。クリームとイチゴだけが入ったシンプルな物だ。俺はあまり料理が得意ではないし、この世界に来てからはレティアさんがご飯を作ってくれたりして元の世界のお菓子とかを食べる機会がなかったのでとても懐かしい気がする。
「これ、じゃなくてクレープだよ。ティーナ」
「あ、そういえばそうでした」
「これ王宮でも食べれないでしょうか? エレナに食べさせてあげたいのですが」
「食べれると思うよ。作るのも意外と楽しいし、皆も作ってみる?」
「本当!」
女子四人は最近すっかり打ち解けてきたようだ。花音は元々打ち解けるのが得意だったのだろうすぐになじんだのだが、シャルは王女様という事があってティーナ達は怒らせたら駄目だと思ったのか少し一線を引いていたが、ある日を境にそれもなくなった。その日は皆欠伸ばかりしていたので大方夜中ずっと起きていて女子トークでも楽しんだのだろう。
「こんにちは、マサトはいるか?」
どうやら俺にお客さんらしい。誰が来たかは一言で分かったが。食堂からでて玄関に行く。
そこには俺の予想通りアルがいた。
「やあ、マサト、君が帰ってきたと知って挨拶にきたよ」
「久しぶり。アル。元気だったか? ついでに上がっていくか? 今ならおいしいお菓子がついてるぞ」
「じゃあ、お言葉に甘えて上がらせてもらうね」
そういうと食堂に入っていくアルに続いて食堂に入ると急にアルがまるで戦国時代の武将に忍者が報告をとるような姿勢で座る。その視線の先にいるのはシャルなので王女がいたから挨拶をと思ったのだろう。
「あら? 誰かと思ったらアルじゃない。どうしたのその恰好?」
「シャルロット王女殿下。アルティネス・デーモンでございます」
アルと初めて会ったときに親しいものはアルと呼ぶって言ってた気がする。という事はアルとシャルは親しい関係という事だろう。
「何言ってるの? お父様もいいって言ってるし、それに公の場でもないのにやめてください」
「わかりました。それでシャルは今何をしているのだ?」
「クレープというものを焼いているのです。楽しいですよ」
恐らくこの世界に来たばかりの俺だったらこの話の中にうまく入って行けただろう。しかしこの世界に慣れてきたというのは身分制度などにも慣れてきたわけで二人が仲良く話すのを見ている以外の選択肢が見つからなかった。
「あのー、お二人はどんな関係なのですか?」
そうだった。この世界に来てまだ一週間しかたってない奴がいたんだった。
「えっと君は? 誰?」
「ああ、俺の仲間で花音っていうんだ」
「僕はアルティネス・デーモン。アルって呼んでくれ。よろしく」
「はあ、よろしくお願いします。じゃなくって。お二人はどんな関係なんですか?」
すると二人は顔を見合わせて、口をそろえて「幼馴染」と答えた。
「なるほど、シャルが手紙で言ってた男の子ってまさかとは思ったけどやっぱりマサトの事だったんだね」
「手紙?」
「ちょ、それは言わないでって言ってたでしょ」
「あれ? そうだったっけ?」
忘れてたんではないのだろうそれに何の話をしているのだろう。今、俺達は食堂の六人テーブルに座っている。それぞれがクレープを食べながら話している。『ピロン』とスマホがメールが来たことを知らせる。この世界でスマホを持っているのは俺と花音だけなので百パーセント花音からだろう。席は目の前なのになぜメールを送ってきたのだろう?
『今晩オロスピア一緒にしない?』
と、いう内容のメールだった。こんな内容のだったらわざわざメールしなくてもいいのにと思うが、聞かれたらいろいろ聞かれそうで怖いので、結果的にはナイスだと思う。
『分かった』
と送りスマホをしまってから顔をある。シャルとアルはどうやら話がひと段落ついたようだ。するとアルが神妙な顔をして俺に言ってきた。
「マサト、お見合いをしてみないか?」
「ええー」
その日一番の大絶叫が響いた瞬間だった。
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次回は九月十九日午後十時頃投稿予定です。




