8通目 手紙のやり取り3
『親愛なるエイミー
先日は王太子の誕生日パーティで止めてくれてありがとう。
キミを愚弄されて、つい熱くなってしまった。
王太子にキミを紹介したくて同伴を頼んだが、パーティでは色々と言われて気を悪くしていないだろうか?
聞いての通り、女性の大半はキミのことを悪く思っていないから安心してほしい。
何か言っているのは男性がほとんどだ。気にしないでくれ。
キミの冷静さを見習わなければと、改めて思ったよ。
婚約者がキミで、本当に良かった。
夏休み明けのテスト、頑張ってくれ。
セドリック』
『親愛なるセドリック様
パーティの件は、特に気にしていません。
事実が大きくねじ曲がったり、尾ひれがついているわけでもなかったので安心したくらいです。
ミランダ様の件も気にしていません。
言いたいことはセドリック様が仰ってくださいました。
私はただ、会話を終わらせただけです。
私は冷静すぎて、逆に冷淡と言われることすらあります。
何かを考えると表情が動かなくなるようで、無感情に見えてしまうそうです。
素直に怒ることが出来るセドリック様が羨ましいです。
夏休み明けテストは、何とか全教科平均点以上を取れました!
エイミー』
『親愛なるエイミー
夏休み明けテスト、お疲れ様。
俺は平均点行くか行かないかだったから、エイミーのほうが優秀だな。
こちらでは毛刈りを終えた羊たちがほっそりした身体になって牧場を駆けまわっている。
工房は羊毛の加工で大忙しだ。俺も力仕事は手伝っているが、毎年のことながら職人たちの手際はいい。
俺の倍以上の速さで何もかも終わらせてしまう。
冬に入る前には、ひざ掛けを送れそうだ。ぜひ使ってくれ。
教室の隙間風は寒いからな。
今はもう改善されているだろうか?
秋の初めは冷える。風邪には気を付けるように。
セドリック』
『親愛なるセドリック様
ほっそりした羊さんも見たかったです。
羊毛の加工のお手伝い、お疲れさまです。きっと重労働なんでしょうね。
職人さんたちには本当に頭が下がります。
ひざ掛け、楽しみにしていますね。
学校では学園祭の準備に追われています。
私たちのクラスでは、各自が用意したものを売るフリーマーケットをすることになりました。
私が用意できるのは刺繍をしたハンカチくらいで、今、刺繍を施しているところです。
セドリック様の分も作りましたので、お気に召すと嬉しいです。
エイミー』
『親愛なるエイミー
ハンカチありがとう。とてもよくできた刺繍だ。
エイミーは器用で羨ましい。
学園祭はぜひ楽しんでくれ。学生の時にしか出来ないことがたくさんある。
友人たちと思い出を作ることも忘れずにな。
俺たちはホーンテッドハウスをしたら、泣き出す女子生徒が出てしまって、先生にこっぴどく叱られてしまった。
やっているクラスがあったら気を付けてくれ。
たぶん、容赦ないから。
ちょうどひざ掛けができたから一緒に送ろう。
使い心地の感想を貰えると助かる。
セドリック』
届いたひざ掛けはふわふわだった。グレーに白色で模様が描かれている。
膝に掛けるだけでなく、肩に羽織ることもできる。
これで今年の冬は暖かく過ごせそうね。
しかし、ホーンテッドハウスで女子を泣かせるなんて、いったいどんな演出をしたのかしら。
そんなに広くない教室の中で。
今年はやるクラスがなかったから行くことはなくて良かったわ。
怖いのは、嫌いだし……。
私が刺繍したハンカチの評価は上々で、用意した四枚すべて購入いただいた。
長く使ってもらえたら嬉しい限りである。
セドリック様には四つ葉のクローバーと縁に模様を施した、ちょっと手の込んだ刺繍をしたハンカチを送った。
気に入ってくれていたらいいな。
「あら、素敵なひざ掛けね」
ウェンディが声をかけてきた。
教室には何人もの女子生徒がひざ掛けを持ち込んでいる。
彼女もその一人だが、質が違うと見抜いたのかもしれない。その目聡さはいつも感心する。
「セドリック様に頂いたの。ブライアント領で採れた羊毛を使っているんですって」
「へえ、ちょっと借りてもいい?」
私たちはひざ掛けを交換した。
ウェンディは椅子に腰掛けてひざ掛けをふわりとかける。数秒後、カッと目を見開いた。
「ナニコレ、温かい。すごく温かい。」
語彙力が死んでるわよ。落ち着いて。
「これが羊毛の力? いくら? どこで手に入る?」
ウェンディがズイッと詰め寄って来た。私は産地直送だったから、値段もどこで売られているかも知らない。
「わ、わからないから手紙で聞いておくわ」
「エイミーさん、わかったら私にも教えてくださいな」
「私も!」
近くにいた女子たちから声が上がる。
みんな、寒いのは一緒なのね。そうよね。教室、寒いもの。
『親愛なるセドリック様
ひざ掛けありがとうございました。
手触りが非常によく、とても暖かいです。おかげで寒さに気を取られず、授業を受けられます。
友人たちもとても気に入ってくれたようで、どこで手に入るか聞かれてしまいました。
友人のウェンディは私の隣にくっついて、頂いたひざ掛けを共有しながら授業を受けているくらいです。
取り扱っているお店を教えていただけると助かります。
場合によっては販路の拡大もできそうですね。
そちらはきっとこちらより寒いと思います。
どうぞご自愛くださいませ。
エイミー』
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