4通目 手紙のやり取り1
『親愛なるセドリック様
お忙しい中、お手紙を頂きありがとうございます。
正直、年上の男性と会うことに緊張しておりました。
あまりお声を聴くことが叶わず残念でしたが、傷が治ったらたくさんお話ししましょう。
私のことも聞き及んでいるかと思います。
私の前の婚約者は、いつも別の女性を連れて歩いていました。
学校でも、夜会でも、私はいつも一人でいました。
この三年間、婚約者がいるのにずっと一人でした。
でもこれからは胸を張って素敵な婚約者がいます、と言えます。
夏休みに入ったら、そちらの領地にお伺いさせていただけると嬉しいです。
その前に、テストを頑張りますね。
エイミー』
よし、これでいいでしょう。
……ちょっと重いかしら? でも、前の婚約者のことはちゃんと伝えておかないとなんか、面倒なことになりそうだし。
うん、いいわ。これで送ろう。
さて、書いた通り、テストを頑張らなきゃ!
☆
俺――セドリック――はエイミーからの手紙を読み終えた。テストが終わってからでも良かったのに。
丁寧に整えられた文面から、几帳面なことがうかがえる。
服装からしてもきちんとしていたし、話し方も落ち着いていた。ご両親の教育が良いのだろう。
しかし、元婚約者は男の風上にも置けないな。婚約者がいながら堂々と別の女性を連れて歩くとは。
エイミーが友人と協力して浮気の証拠を実家に叩きつけたくなるのもわかる。
もうエイミーにそんな思いはさせない。
と、言いたいが、如何せん俺のほうが十歳も年上で軍人だ。国の情勢が変われば、また戦地に招集されかねない。
また、彼女を一人にしてしまわないか。それが不安だ。
いや、俺が不安になっていては、エイミーはもっと不安になる。
それを見せてはいけないな。
テストが終われば夏休みがやってくる。大抵の生徒は寮から実家へ帰省するはずだ。
こちらの領地のことを知ってもらうのは大切だ。
ぜひ、来てもらおう。
それに『これからは胸を張って素敵な婚約者がいます、と言えます』か。
なかなか可愛いことを書いてくれる。この辺りは年相応といった感じで安心するな。
さて、俺も返事を書くか。
『親愛なるエイミー
テストは上手くいっただろうか?
俺の時は仲間内で点数を競って、最下位がランチを御馳走する、なんてことをしていたが、今の子たちはしないかもしれないな。
夏休みに入ったら、ぜひ家に遊びに来てくれ。
案内したいところがたくさんある。
良かったら、ご両親も一緒に来てもらうよう誘ってみてほしい。
ブライアント領は標高がやや高く、冷涼な土地柄だから過ごしやすいかもしれない。
半面、冬の対策は毎年欠かせないがな。
傷もだいぶ良くなってきた。もうすぐ抜糸できるそうだ。
今度会う時は、しっかり話せると思う。
セドリック』
こんな感じでいいか。
うちの領地はやや標高の高いところにあり、平地よりは涼しい。半面、冬は厳しい寒さがやって来る。
何も知らずに嫁いできては大変な土地だと思う。母上がそうだったらしい。
事前に知っておいてもらわねば。
俺も両親にエイミーたちのことを話しておかなければならないな。
☆
テスト後、セドリック様からの返事が届いた。
今、まさに目の前で、勝敗が決しております。
「やった! 俺、チーズケーキ!」
「僕はフルーツタルト!」
「ロールケーキでよろしく」
今時の殿方はランチではなく、スイーツなのね。
負けた方が露骨に肩を落としているわ。お気の毒に。
殿方はいつの時代も賭け事は好き、ということかしら。
楽しそうだけれど、やりたいとは思わないわね。
何はともあれ、テストが終わってホッとした。
あとは夏休みになるのを待つだけだ。
ブライアント領に行くことは、まあ、帰ってから両親と相談しよう。
ひょこっと視界にウェンディの茶髪が入り込んだ。
「で、その後のセドリック様とのやり取りはどうなの?」
ニシシ、と興味津々な笑みを浮かべている。
「順調よ。お手紙を書くのも慣れてきたわ」
「それは良かった。良い人なんだね」
私の答えに、ウェンディは嬉しそうな笑みに変わった。隣にランスロット様もやって来た。
「困ったらまた相談するんだぞ」
ランスロット様の言葉に、ウェンディも頷いている。心強い味方がいて、私は本当に幸せ者だ。
二人がいなかったら、ビクター様やオズボーン家にやり返せなかっただろう。
「はい、ありがとうございます」
感謝を込めて、私は満面の笑みを浮かべた。
お読みいただきありがとうございます。
持つべきものは困ったときに助け合える友、です。




